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があった時も緊急の対応が大変である。
最後に、社会全体の面から見た場合:
1)社会の負担が重くなる:人口の高齢化は、扶養率の上昇を意味する。第1章にも述べたように、現在10人の生産年齢人口が1人の高齢者を負担しているのが、40年後には、3人の生産年齢人口が1人の高齢者を負担する状態に変わる。これは大変な重荷である。
2)医療保健の需要が増える:複数の疾患がある高齢者が増えるため、医療設備や医療人員も大幅に増える。また、慢性病には高額な治療費用がかかり、そのため、高齢者の医療費は、平均してその他の人口の4倍以上だという。また、高齢者の医療は高い割に、効果が低いので、コストが高くつく。
3)産業の生産体制も調整しなければならない:出生率が低いため、労働力の新陳代謝が遅くなる。また、労働力人口の高齢化によって、生産体制が比較的保守的となり、活力が劣るので、適度の調整が必要となる。
4)高齢者の増加に伴って、その活動の場所が必要となる:老人ホームや老人病院、および老人センター等は利用しやすいように、なるべく交通の便利な、市区に近い所に設置するべきであるが、都市の人口密度が高まるにつれ、その用地確保が難しくなる。

2.高齢者福祉の現況

台湾の「老人福祉法」は1980年に発布されたが、1983年に初めて、10年計画が立てられ、具体的に老人の福祉を図るようになった。1990年7月から、中・低所得老人の医療補助を実施し、1993年に「老人福祉法」の修正案を立法院(国会)に提出したが、まだ審議中である。
老人福祉の予算はまだ非常に少ない。中央政府内政部におけるこの予算は、1984年度が1,500万新台湾元(約55万USドル)だけで、1988年度には2,000万元に増加、1989年度には一挙に2億新台湾元(約727万USドル)に増加し、1991年度にはまた12.6億新台湾元(約4,363万USドル)に飛躍して、1995年度に20.6億新台湾元(約7,574万USドル)の最高額に達した。それでも、老人人口で割ると、一人当り1,285新台湾元(約46.7USドル)だけで、先進国に比べて非常に少ない。もちろん、この予算のうちには、医療保険の予算は含まれていないが、

 

 

 

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