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第5章 市町村地震被者想定システムの検証

 

これまでに被害想定システムの開発をおこなったが、ここでは対象地域である岐阜市の近郊で過去に発生した地震の加速度記録と比較することで、本システムで設定した地震動モデルと実際の地震動との整合性の検証をおこなう。

 

5.1 検証方法

 

5.1.1 対集地震の設定

 

岐阜市近郊では、過去に濃尾地震(1891)や東南海地震(1944)など数多くの大地震が発生している。ここでは近代以降に発生した地震の中から、国内最大の内陸性地震である濃尾地震をとりあげ、本システムで同じ震源域に同規模の地震を発生したときの岐阜市内での加速度分布を見る。

 

5.1.2濃尾地震の概要

 

濃尾地震は1891年(明治24年)10月28日の朝(午前6:28分)、岐阜県大野郡根尾村付近を震央として発生したいわゆる直下型の大地震(M・8.0;松村:1962)証であり、岐阜県や愛知県中心に大被害を引き起こした。その地震規模は日本の内陸で生じた最大級のものである。この時にあらわれた地震断層は、延長距離や変異量が大きく、これに随伴した地殻変動域も広域に及んだ。(「1891年濃尾地震の震源地をたずねて」より)

 

5.1.3濃尾地震の加速度分布

 

濃尾地震における加速度分布は図5−1に示すとおりである。これは墓石の転倒状態から推測される加速度の等加速度線をひいたものである。この方法では実際の加速度の値よりは小さくなる場合が多いので実際の加速度の値はここに示したものより若千大きいものと考えられる。(「明治24年(1891年)10月28日濃尾地震の被害と震度分布」より抜粋)
図より岐阜市内の加速度分布は概ね300ガル程度であることが推測される。また加速度分布で400ガルを越える地域は岐阜県南部地域があげられる。この地域は軟弱地盤の三角州性低地が広がる地域であり、地盤による地震動の増幅率が大きいためである。また図中に示されていないが、根尾村から本巣村、伊自良村、高富町にかけても加速度は高いことがわかる。これは根尾谷断層がこの地域を走っており、震源からの距離が近いためである。

 

 

 

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