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5.1.3 誤出発防止装置
5.1.1項の双方向通信機能を活用し、出発許可が出ていない時、車両の主幹制御器のノッチ回路を遮断して、走行できないようにする誤出発防止装置を開発した。
現地試験に際しては、西武鉄道株式会社のご協力を得て、同社の401系電車の主幹制御器回路を一部改修し、現車試験を実施した。その結果、所要の性能を満足することを確認した。また、主幹制御器回路の改修は容易で、誤出発防止装置の有効性と廉価で十分実用化が可能であることを確認した。

 

5.2 今後の課題

本開発事業における今後の課題として、つぎの項目が挙げられる。

 

5.2.1 単線閉そく装置
(1) 本事業で開発した試作装置の基本概念および制御論理は、軌道回路や地上信号機によらない廉価な新しい単線閉そくシステムの実現の可能性を示したが、実用化に際しては、場内信号機の必要性の有無、同時進入の有無、過走防護等、必要な運転情報の車上伝達内容を含めて、線区のニーズに応じた様々な形態があり、これらの実状に合わせたシステムレベルの構築が必要である。
(2) 本事業で開発した試作装置は、概念的には、従来の通票閉そく装置のタブレットを車内に表示したものである。従来の通票閉そくの場合の閉そく区間は、「場内から場内まで」の単線区間を示しており、両駅の構内は、駅長の権限下において運転されている。
しかるに、本開発の装置は、線区全体を集中化した権限下で扱う制御概念のため、新たな概念として整理し、その可能性と有用性を検討する必要がある。
(3) 本開発では、極小ゾーン通信のIDプレートを用いた関係で、閉そく装置と車両との双方向通信は点で行われている。この情報伝達が、無線媒体を利用すれば、例えば、携帯電話のような移動体通信を併用することで連続に伝送が行えれば、過走の列車防護、同時進入等の伝達が容易になる。この方面からの検討も考慮する必要がある。

 

5.2.2 IDプレートによる極小ゾーン双方向通信
(1) IDプレートの室内での環境検査(衝撃・振動・温度・密閉性)を実施し、西武鉄道の401系電車で現地試験を実施し、良好な結果が得られたが、実用化に際しては、車両の形式によるIDプレートの取付位置と地上アンテナの影響や鉄道設備として現地に設置した場合の雪・雨の影響については、今後さらに長期のフィールドテストが必要と考える。
(2) 極小ゾーン通信のIDプレートは、電波法の構内無線局移動体識別装置に基づいたマイクロ波2.45GHzを採用しているが、この周波数帯は産業・科学・医療(ISM)でも広く使用されている。今後、鉄道事業でIDプレートを使用する分野は多々あるので、この

 

 

 

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