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でも家の鍵などしていない。」「近所や友達とは開けっ広げなつきあい。」「客も家の者と同じつきあいをしている。」という回答もみられた。また、水が貴重な港町ということで、水道が完備する以前は、近所からのもらい水や、隣家と共同井戸を使っていた話なども聴かれた。

 

(5)住宅で好きなところ・困っているところ
住宅の中で、好きなところおよび困っているところを調べると、表17・表18のようにまとめられる。好きところでは、最も多い回答は、「風通し」や「涼しさ」で、厳しい夏の暑さに対処する住まいの知恵と工夫の結実とも考えられる。土間の広さや天井の高さなど、伝統的な住宅の開放性への評価も高い。また、自分の部屋をあげる人が妻に多く、「私の部屋が好き。ゆっくりできる。年をとると自由がいいです。」「本当に2階(の自分の部屋)が好き。嫁に来て、1階ではゆっくりできないが、2階の隠れ場があると、手も足もうんと延ばせるような気がした。」といった意見が返ってきた。妻は嫁の立場として、独立した部屋を得ることによって、安らぎや開放感が得られたようである。さらに、「先祖伝来の家であり、何より自由」ということや、「古い家の雰囲気や情緒」など、精神面での利点の意見も多い。また、「人がよく集まる茶の間が好き。」「ウチの家族が仲がいいのは、皆が集まるここ(『ご飯のとこ』と呼ばれる茶の間)があるから……。」、「夫婦2人でいるところがいいところ、ということで…。」といった、いい話も伺えた。
困るところとしては、台風や崖崩れの問題が最も大きい。「ここの台風は宮崎市よりずっとすごい。風当たりが全然違う。台風の度に増改築したところが傷む。」「台風の時の風当たりが強い。よく家が揺れる」、また、「山崩れが心配。裏の山が怖い」「崖崩れが心配。道路の向こうの倉庫に何回か逃げました。体がよく動いた頃は逃げてなかったが…。」など、真に迫った回答もあった。さらに、掃除や維持管理がたんへんで…。」という回答のように、高齢単身世帯や高齢夫婦世帯に厳しい問題となっている。また、伝統的住宅によくみられる問題点として、収納の問題、プライバシーの問題、使い勝手の問題などがあがっている。加えて、「膝が痛いので、階段が急でたいへん」「炊事場の段差が大きい」など、高齢化に応じて、段階や段差の問題もあがった。

 

(6)住生活・住文化への思い
住まいや住生活への意識としては、「建物にはそれぞれに歴史があり、運命があるように思う。」「100年程前、同じ家で羽織袴の人が全く違う生活をしていたと思うと不思議な気がします。柱とかはそれを皆知っている。そんないろいろな気配を感じます。」「便利さを重視すれば家の趣がなくなる。合理的にすればどこかを犠牲にしなければならない。」「昔の家には遊びがあった。迷路みたいか…。」「代々の家で、子供に先祖の話を受け継いでいくのもいい。」「若い人は古い家には興味がないようですが、ウチの子供たちはこの家が自慢のようです。」「家のことは考えない、いつも舟のことばかり考えてきた。」といったように、種々の話が伺えた。住まい方調査を通して、住まいやそこで共に過ごした家族生活の思い出を紡いでいただいた。いずれも、住宅や家族への思いが伝わってくるものであった。

 

表17 住宅で好きなところ

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表18 住宅で困っているところ

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