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結章 青鬼の村並み保存構想

 

1 青鬼をどうするか

青鬼の未来はどうなるか、いや、これから青鬼をどうするか。
この課題を考え、一つの構想を提案することが、今回の調査のおもな目的であった。提案する先は、地元青鬼の人々へであり、白馬村、同教育委員会当局、白馬村文化財保護審議会である。その基礎資料を得るために、集落環境の調査、各家の図面をとり資料をつくる調査、そして集落での生活の実態を知る調査を実施した。余所者が来て調査をしたからどうこうなるような事柄ではないが、余所者は余所者として、地元の人は地元の人として、行政にたずさわる人はその人として、また、専門家は専門家として、みなそれぞれに相応しい役割分担がある。
青鬼は、現在15軒の小さな集落である。過疎がすすみここから小中学校に通う子供たちは今や一人もいない。このままの状況が続けば、今すぐではないにしても、集落はいつかは滅びてしまう。実際に近くで滅びた集落がいくつかある。調査を通じてわたくしは、この村の人びとの心に、何とかしなければならない、何とかしたい、という気持ちあることを感じた。だが、どうすればいいのか、その具体的な案がすぐには出てこないでいるのが現実である。

 

2 みんなで残すものを掘り起こし、その背景を考える

青鬼集落は、長い歴史のなかで、多くのさまざまな遺産を蓄積している。周囲にみえる田畑そして森も林も祖先たちが築き、伝えてきた汗の結晶である。ここで普段生活している人々にとって、これらの遺産は特にどうこういうことはなく、ごく当前のものであるかもしれない。しかし、当前だから価値がないというわけではない。当前だからこそ価値があるともいえる。指定してあるか否かは別にして、これらは立派な文化財であることに違いはない。
改めて身のまわりをみてみよう。茅葺き屋根の家は(現在は鉄板

 

 

 

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