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5−2保存活用の課題

本節では保存活用事例を通じ、今日的な保存活用の課題をまとめる。

?市民運動とまちづくり
 近年にはいって近代化遺産に関する保存と活用に対しての制度や手法も整備され、国民的理解も進展してきたことなど格段に条件は良くなっている。しかしながら、まだまだ古いものを残して活用するということが発展と相いれないと思っている人も多い。保存に対する市民運動が今日の保存活用につながってきたことを考えると、今後共、市民のコンセンサスを得ることが最も大切であることが指摘できる。それもただ残せというだけでなく、冷静に将来のまちづくりを見すえ、展望をもった保存活用の市民運動が求められている。

?経営を考えた自由な発想
 今まで保存活用というと、すぐカビくさい資料館がイメージされてきたが、現在では、最もオシャレでトレンディな施設としての活用が主流となっている。経営面を考えた保存活用のあり方が第一に求められているといえるが、仲々成功した事例は少ない。形だけの計画にとどまり、中途半端な第3セクター方式で行われている施設は必ずといっていい程破綻をきたし、当該自治体のお荷物となっている。独立採算をめざす施設は一つの企業であり、それだけきびしい目で運営されるべきものである。自治体が第3セクタ。一に関わってもいわゆる「金は出すが口は出さない」等の姿勢が大切である。  一方、逆に目治体の施設とすることについては、中途半端に経営的側面を強調することは避けるべきであろう。

?暮らしの中で生き続ける支援のシステムを
 今まで保存活用されてきたものは、旧庁舎等を中心とするそのまちの代表的建造物が多くをしめている。その対象は近年大きな拡がりを見せているものの、まだまだ公共の整備物件が主流といえる。しかしながら、煉瓦建造物等の近代化遺産の大半は、現在も使用されている市井の物件である。これらの建造物が暮らしの中で生き続けられるような支援のシステムの構築が望まれている。それは、「文化財登録制度」のような保存の担保要件や「まちづくり要綱」等による助成の整備である。そして、市民的理解の下に、多くの近代化遺産が無理なく暮らしの中に息づく工夫が大切な課題といえよう。

 

 

 

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