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え方が蔓延しないように心掛ける必要があろう。とくに、行政改革を推進している折りから、注意しなければいけないことは、普段、職員の数が多いように見えても、緊急時に対応するために必要な人員の数は膨大であり、平常時の職員数ではとうていカバーしきれないものだということを考えておかなければいけないということである。得てして、一番ひまなときに不要な人員はいつでも不要であると考えがちであるが、実際には、ある程度の予備の人員を用意しておかなければ、行政の十分な運営はできないのだという鉄則を忘れないようにしたい。

 

今回の阪神・淡路大震災においては、その後の対応として、特設行政相談所、特別総合行政相談所、特別行政相談所の3種の行政相談窓口が開設されたことは前述したとおりである。確かに、震災後の混乱期にこれだけの行政相談窓口を短期間の内に開設したことは、兵庫行政監察事務所と近畿管区行政監察局のなみなみならぬ努力の賜物である。従ってどこで災害が起こっても、同様に迅速な対応ができると断言できるものではない。とくに、たとえば首都圏において震災が発生し、阪神・淡路大震災をはるかに超える被害が発生したとして、今回と同じレベルでの対応ができるかというと、まずとうていできないとしかいえないであろう。
従って、そこでもう一つ考えなければいけないことは、震災直後発生する、さまざまな行政への要望や、相談に対応するために、このような窓口を開設することは、もちろん十分に意義のあることであるが、このような特別な事態が起こらない限りは、行政側は市民の側から要望や相談が提起されるまで、ただ待っているだけでよいのかどうかということである。つまり提起された問題を迅速に解決することもさることながら、市民の側にかならずしも十分にこなれない形で山積されている問題を、あらかじめ予測してそれに対応することはできないのだろうかということである。もちろんすべての要望や相談を予測することは不可能であるが、あらかじめ何が問題となりやすいのか想像がつくなら、事前にそのような問題に対して、対応策を考えておけばよいのである。そうすることによって、行政への不満をいくらかでも解消することができれば、予測したかいがあるといえよう。

 

また、このような災害時の相談窓口を整備する上で、重要なことは、相談員の十分な確保と、相談所へのアクセスの利便性、さらに電話やFAXによる相談体制の整備である。
まず第一の相談員の十分な確保のために考えられることは、行政相談ボランティア制度の確立である。退職した公務員等で各部局で相談を担当した経験のある者をボランティアとして、あらかじめ登録しておき、緊急時に協力してもらうという制度は容易にできるのではあるまいか。
次に第二の問題は、相談所へのアクセスの利便性である。今回の阪神・淡路大震災の際、兵庫行政監察事務所が開設した相談所の内、もっとも有効だったのは、西宮市と芦屋市に

 

 

 

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