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ことが多く、予後はさらに悪い。したがって、この死亡率の高い食道癌では、早期に発見することが極めて重要である。

 

食道ヨード染色と内視鏡的粘膜切除術4)
胃癌検診で有効とされるレントゲン検査は、食道癌の早期発見にはほとんど役に立たない。食道癌は進行しないと食道の内腔にレントゲン検査でわかるような凹凸を作らないためである。下図は食道ヨード染色検診で診断された粘膜層へ浸潤した食道癌の内視鏡像である。食道、胃、十二指腸の普通の内視鏡観察を終わった後で、3%ヨード液を食道に散布する。正常な食道粘膜では、ヨードと組識中のグリコーゲンが反応して粘膜全体が緑褐色に染色される。しかし、食道癌や食道異形成(良性悪性境界病変)ではグリコーゲンが減少消失し、病巣が明瞭な白いヨード不条帯となる。直径5m以上の明瞭なヨード不染帯の組識を生検鉗子で採取し癌かどうかを診断する。右図のわずかに窪んだ癌はヨード染色なしでは見逃した可能性もある。われわれの経験ではヨード染色前の普通の食道観察では58%の食道癌病巣を見逃している5)。

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日本では、内視鏡を用いた痛切除の進歩普及により、もはや小さい消化管癌を早期に発見して大きく臓器を切除するという時代は終わりつつある。食道癌の分野でも東海大学の幕内博康先生が初めて食道癌を内視鏡で切除する方法を開発し、その後も様々な内視鏡的食道粘膜切除術の方法が工夫されてきている。右図は幕内先生の開発したEEMRチューブを用いた粘膜切除の方法である。この方法により食道癌は粘膜層と粘膜下層の境界にある粘膜筋板に浸潤する前に発見されればほぼ根治可能であり、切除当日から歩けて翌日から流動食が食べられ、癌の治療前と全く変わらない生活が送れる6)。

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大酒家の食道ヨード染色検診4)
3%以上で食道癌を発見
われわれは、1993〜1994年に629例の男性アルコール依存症患者に食道ヨード染色検診を施行した。5?o以上の明瞭なヨード不染帯を25.8%の患者で認め、食道癌を3.3%(21例)で診断した。一般実検の食道癌発見率は、レントゲン検査による消化器集検全国集計では0.007%、内視鏡検診では0.03%、55歳以上の男性、飲酒家または喫煙家を対象とし

 

 

 

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