日本財団 図書館


 

公衆衛生の懸念事項としてのアルコール:WH0の見解

 

リーヌ リレイ、アランD.ロぺズ博士(Leanne Riley and Alan D.Lopez)
世界保健機関 物質乱用に関するプログラム
(Programme on Substance Abuse(PSA),World Health Organization)

 

世界保健機関の役割
世界保健機関(WHO)は1948年の創設以来、アルコールなどあらゆる精神賦活物質の使用に伴う有害事象を予防・軽減しようとする各国の取り組みを支持するにあたり、先導的役割を果たしてきた。WHOの定義では、「健康」とは単に病気でないことを指すのではなく、肉体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であることを指している。飲酒問題は事実上、心理社会的機能に関するすべての領域に影響を及ぼすものであるため、「すべての人々が可能な限り最良の健康と安寧を得る」というWHOの目標を達成するには、アルコールが原因で生じる健康面・社会面での問題を軽減することが不可欠である。1990年、アルコール問題に関する取り組みは、WHOに新設された「物質乱用に関するプログラム」で扱うにととなった。このプログラムでは、アルコール消費の形態の変化とそれに関連する有害事象について、国際的な反応を得ることを優先課題としてきた。
従って物質乱用に関するプログラム(PSA)では、アルコールが人々の健康と社会に及ぼす影響の国際的懸念事項について、焦点を当てるべきことを提案している。またPSAでは、アルコール使用の形態と傾向、およびそれらが健康や社会にもたらす影響について評価することに加え、アルコール関連の問題に取り組む研究、プログラム作り、政策活動における交流を促進・助成していくことを狙いとしている。
WHOはまた、開発途上国における疾病予防と健康増進について特別な責務を担っている。従ってWHOでは、コスト効率の良い予防法・治療法・リハビリその他の方法を特定し開発することによって、途上国がアルコール関連問題を軽減するために行う各種活動の進展・強化に尽力していきたいと考えている。ついで、アルコール問題に関して発表された文献、より多くの国、特に途上国での経験に基づいた文献を得ることが出来るよう取り組んでいる。更にWHOでは、研究やプログラム作りに際して各国共通の方法論を用いるよう奨励することで、国際的な情報交換を支援していきたいとも考えている。共通のメカニズム・形式を用いるにとにより、各国間・地域間の比較が可能となるからだ。
アルコールが関与する有害事象の世界的傾向
アルコールの問題は、先進国・開発途上国が共に抱える大きな公衆衛生の問題である。アルコールが関与する問題の重要性は、先進国においてはここ数年比較的安定し、縮小傾向にさえあるが、途上国では状況が異なる。かなり多くの途上国において、飲酒関連問題がどにまで増大するのかという懸念が高まっており、事実過去にはこの問題に比較的無縁であった国々でも問題発生の報告件数が増大している。
アルコールが関与する疾病、および傷害件数は、世界における1年間の全疾病、傷害件数の3

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION