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地域政策とアルコール関連外傷予防策

 

ハロルド ホルレター博士(Harold D.Ho1der,Ph.D.)
国立アルコール研究所予防研究センター(Prevention Research Center)

 

本稿の研究と準備はCenter for Substance Abuse Prevention(CSAP)と、National Institute on Alcohol Abuseand Alcoholism(NIAAA)の支援の元、助成金♯AA09146を得て行われた。

 

I.はじめに
予防研究センター(Prevention Research Center、米国カリフォルニア州バークレー)では、1991年から1996年にかけて、地域社会を単位とする予防対策試験を全国的規模で行った(Holaer,1993)。このプロジェクトは、各地域における環境面からの予防活動と政策の変更を通してアルコール関連の偶発傷害と死亡を減らすにとを目的とした。本プロジェクトは地域社会をべースに互いに補強し合う次の5つの要素、(1)地域社会の起動、(2)責任ある酒類供給の慣行、(3)若年者の飲酒の減少、(4)飲酒運転、(5)アルコール入手、で構成された。

 

?U.プロジェクト実施の根拠
アルコール関連傷害に関するこれまでの研究、予防策の多くは、飲酒と傷害を、主として個人べ一スの問題として扱ってきた。個人的差違や個人の飲酒行為そのものも確かに重要ではあるが、アルコール飲料、及びそれらが現代社会にもたらす社会的、経済的影響については見逃しているにとが多い。そこで、地域を単位とする組織的予防策という概念においては、目標となる状態や事象を、個人と環境との相互作用の産物であると定義する。
組織的予防策を採用するというにとは、個人の意志や行動の変化と、地域社会システムの開会的、経済的、そして時には物理的環境における適切な変化を連動させることを必要とする。よりよい研究計画と予防プログラム策定のためには、傷害や飲酒を取り巻く要因の複雑さを認識するにとが必要不可欠な第一歩となる。交通事故以外による傷害の場合、(飲酒に加えて)他の危険行為、その行為を行った環境条件、及び事故当時使用していた道具(雪上車、モーターボート、雪上または水上スキー等)についても考え合わさなければならない。交通事故の場合も同様に、運転手、同乗者、通行人に関わらず、運行中の行為、車の状態(道路の状態)、シートベルトの着用、周囲の交通状況や天候などが関わってくる。これらの要因のどれを取ってみても、飲酒によって怪我をする危険性が高まると考えられる。
飲酒が関与する事故について組織的防止策を採用する場合、公衆衛生に関する規範を以下の形で適用することができる。
1.誰がどのような状況で飲むにせよ、アルコール飲料の破壊的な使用を「アルコールの乱用」と言う。従って、社会的、精神的、遺伝的要因から、意志に反して抑えがきかないほどの飲酒をする一部の人々、つまりアルコール症者のみを指してアルコール乱用者と言うのではなく、誰に関しても、破滅的な飲み方、或いは本人や他人に危害を与えるような飲み方

 

 

 

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