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スウェーデンのアルコール政策 −制限的政策から自由な入手へ−

ビヨン ヒベル博士(Bjon Hibell,Ph.D.)
スウェーデンアルコールその他薬物情報協議会
(The Swedish Council for Information on Alcohol and other Drugs)

 

制限的アルコール政策への移行
他の多くの国々と比べ、スウェーデンのアルコール政策は、かなりの制限を課すものである、この政策は、深刻なアルコールの害の原因となる蒸留酒の大量摂取の対策として導入されて以来、長い歴史を有している。この政策がもたらした結果として、前世紀末と今世紀初頭に、大々的な禁酒運動が巻き起こった。
スウェーデンのアルコール政策の歴史を辿ってみると、例えば1922年には、全面禁止の国民投票(49%が禁止を支持)が行われ、また1人(通常男性のみ)当たりの蒸留酒の購入量を規制する通帳制度(1955年廃止)が約35年にわたって続いた。
スウェーデンのアルコール政策の基本原則は、アルコール取引における私益をできるだけ制限することであった。競争と私益は積極的なマーケティングや販売につながり、その結果、消費量の増大、及びそれに伴うアルコール害の増大をもたらすからである。
1995年までの長い歴史を通じ、スウェーデンでは、5つの独占事業が蒸留酒、ワイン、高アルコール濃度ビール(アルコール度数3.5%以上)の製造、取引を統括していた。小売りを扱うのは、この時から今に至るまで、全国に390の小売り店を抱える国有のスウェーデンアルコール小売り専売公社である。個人は、この専売店においてのみ、高アルコール濃度ビールやワイン・蒸留酒を買うことができる、
1994年まで、国有のワイン・蒸留酒グループ(Vin&Sprit Group)が、ワイン・蒸留酒の輸入・輸出・製造・卸売りの独占権を有しており、唯一の顧客が小売り専売公社であった。この独占制度の例外として現在も認められているのは、自家製ワインの製造である。もう1つの例外は、他国からの帰国に際して一定量のアルコール飲料を個人輸入できることである。
専売店でのアルコール購入を許されるのは20歳からである。但し18歳になれば飲食店でアルコールを飲んだり、食料品店で2級ビール(アルコール度数3.5%)を買うことができる。
税金、特に蒸留酒に対する税金は、世界でもトップレベルである。おそらくこれが、スウェーデンのアルコール消費量が他の多くの国より相対的に低いことに対する大きな理由であろう。1995年の計上消費量は、15歳以上の国民1人当たり純アルコール換算で6.14リットルであった。その約30〜40%と推定される非計上消費を加えたとしても、国際的にみればかなり低い。
蒸留酒は昔からスウェーデン人には欠かせないアルコール飲料であり、その伝統的な飲み方は、酔っぱらうまで飲むというものである。1970年代の終わりから蒸留酒の売り上げは激減し、今日の計上消費量の内訳は、ビールが45%、ワインが29%であるのに対し、蒸留酒はわずか26%にすぎない(図1)。

 

 

 

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