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英国における商業的利害とアルコール政策の決定

 

エリック アップルビー(Eric Appleby)
アルゴールコンサーン(Alcohol Concern)

 

ここでの発表は、科学的考察でもなく、英国における何か特別な進展についてでもありません。お話ししたいのは、近年英国で大きく取り上げられている問題、すなわち政策決定の過程とその中でアルコール業界が果たす役割についてです。このテーマを選んだのは、おそらく現在の英国に於いて最も興味深い話題だからです。アルコール関連分野の関係者ならほとんど誰もが、ポートマングルーブ(Portman Group)とその活動をよく知っており、同じような他国の同種企業より危険な存在であると感じています。同種企業とは、たとえばオランダのSTIVAや、政策決定過程での公的結び付きがより強いニュージーランドの企業などです、これから述べる状況についてはご出席の方々もよくご存知かもしれません。しかも、雑誌や新聞紙上ではテーマとして取り上げにくいので格好の話題だと思います。また、この問題と取り組む国際協力の機会となるかもしれません。
まず、アルコール産業が過去一年やそこらの間に英国の政策決定にどのように影響を及ぼしたのか、3つの例を挙げます、最初は調査についてです。アルコールと犯罪、特に暴力犯罪のつながりについて懸念する声が高まってきました、政府は両者の関係について調査を行なう必要があると決定したところ、ポートマングループが調査の資金提供と代行を申し出、アルコールと犯罪の結び付きは必然的なものだとする考えに否定的なことで有名な研究者に調査を依頼しました。政策決定は、両者の間に特筆すべき関係はないとする報告書に基づいて行われる結果となった次第です。
二番目は、英国で「アルコポップス(alcopops)」と呼ばれている飲料の例です。通常子供向けの飲料であるレモネード、コーラ、フルーツジュースなどにアルコールを混ぜた飲み物ですが、市場に出ると、政府をはじめ、各方面から不安と非難の声が上がりました。ポートマングループは直ちに自主監視を行なう行動規範を打ち立て、製造者の取り調べにあたりました。この件で彼らは明らかに失敗を犯し、私がロンドンを発った時にはかなり混乱していました。しかし、彼らは、こうした措置によって政府の介入を防ぐことが出来ると確信していたのです。三番目は、一部の人には知られていますが、英国政府はかねてより適正飲酒の問題を長いこと検討していましたが、クリスマス直前になって一日の摂取限度に関する新しい指標を打ち出したのです。これは業界への譲歩だという見方が一般的で、少なくとも当初は、指標の引き上げと云う形でこの指標が提示されました。もしアルコール飲料業界の利益を図る行政部門が、現行の指標の変更は不要であるとする保健省専属の専門家の見解をそのまま受け入れていれば、このような指標の引き上げは決して行われなかったでしょう。
この議論について、まず初めに、あまりに明白な事柄ですが1,2点指摘させていただきます。一つは、アルコール政策は複雑な作業であるということです、それは単に、飲酒が健康に良いかどうか、ストレスを引き起こすのか、または安全弁として働くのか、運転前に許される飲酒の量

 

 

 

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