日本財団 図書館


 

 

7 2020年の世界穀物需給の展望と日本の農林業のあり方

 

以上の穀物の世界需給に関する長期分析を基礎に、2020年の世界、所得階層別国家グループ、中国、インドおよび日本の穀物需要と供給量を推計したのが表2である。需要面では、FAOの食糧需給表の84〜86年の需給バランス・データと畜産において予想される飼料穀物利用の長期的増加とから穀物/畜鶏肉・卵生産転換率を推計し、飼料穀物需要の増加を人口成長率、GDP成長率、畜鶏肉・卵需要の所得弾性から推計している。人口と人口成長率は国連の中位推計、93年の畜鶏肉・卵需要と穀物需要はPAOの統計を利用した。供給面で穀物生産の成長率は上述の最近の穀物単収の成長率の鈍化を反映した値を地域別・国別に表示のような値とした。穀物需給の長期予測は、筆者やレスター・ブラウンのように需給を独立に予測する方法と世銀、FAO,IFPRIと日本の農水省のように需給の差がもたらす価格調整を含むやり方がある。36)筆者、ブラウン、農水省は2020年ないし2030年に世界で大量の穀物不足が発生し価格は上昇すると予測し、他は21世紀始めには世界穀物価格は低下するとする。このように予測が異なるのは、予測する研究者の経験を反映した価値観が推計の前提に反映されるからである。故に研究者の長期予測は経験的洞察であるといえる。
筆者の推計結果は2020年にアジア途上諸国で3.2億トンの膨大な穀物の不足が発生する。そのうち中国は1.7億トン、インドは0.15億トン、世界全体では4.17億トンほどの巨大な不足になる。高所得諸国が1.72億トンを輸出するが必要量を大幅に下回る。93年の世界の総穀物貿易量は2.3億トンであるからアジアや世界の不足量は膨大である。このような大量の穀物不足が発生するのは、表2の前提条件に示されるように発展途上諸国の人口爆発と中国を中心とするアジアやその他途上国の高度経済成長が動物性蛋白消費の増加を引き起こしそれに伴って飼料穀物需要の爆発的増加を引き起こすことと、発展途上諸国を中心に自然資源・環境・農業技術制約が穀物供給の増加を制約

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION