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2 縁の革命の経済・社会的評価

 

1) 緑の革命のマクロ的貢献
以上で見てきたように、緑の革命が世界にもたらした技術的成果としての米の大増産は、かつて輸入食糧に大きく依存してきたインドやインドネシアなどアジアの人口大国その他での食糧自給率を高め、それらの国レベルだけの問題ではなく、世界における食糧需給バランスの改善に大きく貢献して、世界レベルでの食糧問題の解決に対して重要な役割を果たしてきた。
近年におけるアジア諸国の経済成長の目覚しさは正に注目に値するものであるが、その大きな前提として農業の発展、食糧の増産があったことを無視すべきではない。後発途上国の工業化にとって、低労賃は国際競争力を強める条件であるが、緑の革命による食糧大増産は依然賃金財としての性格の強い食糧価格の高騰を抑えて工業化に貢献した。今や日本やNIEs諸国からの後発アジア諸国への企業進出は著しいものがあるが、それらの国の低労賃維持に果した食糧増産の意義は大きい。このように、アジア諸国のマクロ経済のダイナミックな発展に対して、緑の革命は積極的な貢献を果したと云っても過言ではない。この点は、いまだに食糧不足が構造化して毎年無償の食糧援助を受けている国の多いアフリカでの経済の停滞との対比からも明らかである。
食糧の消費者である都市住民、あるいは、農村における非農業産業の従事者にとって、緑の革命は安価な食糧を提供するとともに、肥料産業の拡大、流通食糧の増大による関連産業の活性化にも寄与しており、また、都市のインフォーマル・セクターで働く最貧層の食糧アクセスをより容易にすることで社会的緊張の緩和にも役立ったはずである。
このように、緑の革命は、世界の食糧問題および各国の一般経済・社会に対しては、基本的にプラスの貢献をしてきたとみなしてよかろう。

 

 

 

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