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3 産業構造変化の要因

 

産業構造の変化は、いわば経済発展の反映でもあり、古典的にはペティ・クラークの法則に有名である。豊富な経済統計分析の中から歴史法則として、経済構造は効率化を求めて第1次産業から第2次産業、さらに第3次産業へとウエイトがシフトしていくとされている。近年は、経済のソフト化も加味されて第4次産業、あるいは3.5次産業論も唱えられている。
また、アジア地域以外も含めた発展途上国に関して、1人当たり国民所得が250ドルから500ドルヘ、さらに1,000ドルから2,000ドルヘと順次倍増すると、第1次産業のシェアはそれに見合って10%ポイント程度の構造変化が生ずるとの試算もある。ここではアジア地域のデータに即して検討してみよう。
まず、アジア諸国の1人当たり所得(GNPで代用)は最近の約20年間に、長期的に停滞色の強いフィリピン、インドなどでも2倍前後、その他の国では時期による若干の変動があるが、おおむね10年で倍増、躍進の時期には5年で倍増というケースも少なくない。こうした所得増の一方で、構造変化としては既にみたように、第1次産業のシェアの低下は10年で10%ポイント前後の状況を示す時期が多くみられる。両者の関連を図示してみると第1図のようになる。国の数に比べ、国によるバラツキがやや大きいので若干ラフな計測となるが、前述した所得倍増で農業のシェア低下10%ポイントという途上国全体の傾向よりはやや大きい構造変化が認められるようである。
つぎに製造業のシェアが拡大した状況を経済成長と製造業の生産増加の関係からみてみよう。これは経済成長率に対する製造業の生産増加率の比率、すなわち製造業生産の経済成長弾性値の問題である。この弾性値が高いということは経済成長による需要の増大が、例えば投資の増大に必要な投資財の需要を大きくするという経路で成長持続の可能性を確かなものとすることにもなろう。(第1図参照)この弾性値は第5表からみられるように、経済の成熟度の高い日本やシンガポー

 

 

 

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