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る。当分のあいだ年率2%を越える増加が続くのはアフリカと西アジアであるが、それ以外の地域では東アジアのように遠からず1%以下の増加になることが予想される地域もある。そして来世紀半ばまでにはすべての地域で1%台、あるいはそれ以下の低い増加率になることが予想されている。
国連の将来人口推計は基準人口(1994年推計では1990年人口)を出発点にとり、それに予測された出生率と死亡率を適用して将来人口を計算する方法がとられている。その場合、死亡率も出生率も次第に低下すると予測されている。したがって、世界人口の増加がどの地域においても低下するという結果になっているのは、出生率の低下が死亡率の低下より早い速度で進むと予測されているからである。このような予測はある意味で楽観的な予測であるといわれるかもしれない。もし食料供給の伸びが人口増加に追いつかないという事態が起これば、死亡率が上昇して人口増加を抑制するというマルサス的人口法則が復活する恐れがある。しかし国連としては、当然ながら、このような事態を組み込んだ将来人口推計を発表したことは一度もない。

 

3 人口と食糧の関係

 

人口が増加するにつれて食糧需要が増加することはいうまでもない。しかし、食糧需要の増加は人口ー人当たり食糧需要が増加することによっても増加することに注意する必要がある。それは表4とそれをグラフ化した図をみると明かである。そこにリストされている国を低所得国(エチオピアからエジプトまで)、下位中所得国(インドネシアからボツワナまで)、上位中所得国(ベネズエラからポルトガルまで)、そして高所得国(ニュージーランドからスイスまで)の四グループに分けて、所得水準とカロリー摂取量との関係(カロリー摂取量=A+B×所得水準)を計算してみると、Bの値は低所得国では1.80、下位中所得国では0.27、上位中所得国では0.11、高所得国では0.01となる。今後発展途上諸国の経済発展が進み、国民の所得水準が高まるにつれて国民一人当たりの食糧需要が増加することは確実である。世界人口の増加の勢いは、1974年の世界人口会議以降明らかに弱まってきている。

 

 

 

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