日本財団 図書館


■事業の内容

(1)船用環境での機関各諸元の計測
実機関と実船計測
 陸上試運転の機会をとらえて、5台のディーゼル機関について機関諸元の計測を実施した。その内の3台について、海上試運転時に同じく機関諸元の計測を実施した。計測項目は排気ガスNOx濃度をはじめとして約20項目に及んだ。諸元の計測のうちで、軸馬力の測定方法が陸上では水動力計、海上では軸馬力計と異なるが、他はなるべく同一条件となるよう配慮した。
(2)条件の違いによる機関諸元の差異の検討
各計測データの集積と解析
 昨年度に引き続き陸上試運転と海上試運転の計測データの収集を行い、陸上データ7台分、海上データ5隻分の資料が得られた。これらデータについて各種の解析を行い、NOx計の型式(定電位電解法と化学発光法)による測定値の差異、陸上と海上とのNOx測定値の差と湿度による影響、軸トルクの変動による諸元の変動等が順次明らかになった。現在までのところ、陸上と海上との比較では一般に海上の方が高いNOx値が得られること、季節による湿度の差により傾向が変化すること等が分かってきている。
(3)自然条件の変化に伴う機関諸元の変化の計測
就航後の実船計測
 海上試運転の修了した大型タンカーのペルシャ湾航路と小型タンカーの内航航路について、就航後の実船計測に着手した。NOx計の信頼性が低く長期間の連続計測が不可能なため、前者はまだ1回、後者は2回の計測回数であるが、積載条件と海象条件の異なる機会に計測を行う予定としている。また、得られつつある計測データの整理に着手した。
■事業の成果

本年度は3隻の機関について陸上試験と海上試験を予定通り実施し、2台の機関について陸上試験も実施した。さらに、海上試験の終了した3隻のうち、2隻について就航後の計測を行った。これに昨年度に終了した2隻の機関の計測結果を加えて、データの解析、検討を実施した結果、現在の処ほぼ次のような成果が得られた。
(1)当初より、NOx計の形式により計測値に差が生じることが憂慮されており、計器の指示値では10%以上の差が認められていた。しかし、ISOの基準に従った湿度補正その他の補正を行った結果、定電位電解法の方が化学発光法よりも平均3.6%高い値となることが認められた。
(2)機関諸元のうち掃気流量については、JISに規定があるほかに種々の換算法(カーボンバランス法、酸素バランス法等)があり、それぞれの方法で結果が異なることが明らかになった。さらにデータを収集した上で統一することが望ましい。
(3)中速機関の陸上試験の結果から舶用特性と定回転特性の比較ができた。NOx値とO2値は舶用特性では低速機関とよく類似した傾向が得られ、定回転特性では負荷と共に濃度が増加することが明らかとなった。
(4)海上試験の結果から、操舵、旋回等による軸トルクの変動が13%程度あっても、NOx値は3%程度の変動であることが明らかとなった。その他にも陸上試験と海上試験の結果の差について多くの知見が得られ、今後のデータ集積と解析に期待する処が大きいといえる。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION