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■事業の内容

海上安全及び海洋環境保全の問題は国内だけでは推進できるのもではなく、国際協調が不可欠である。従って、常に国際的な動きに注目する必要があるため、本年度もIMO(国際海事機関)のMSC(海上安全委員会)、NAV(航行安全小委員会)、LSR(救命・捜索救助小委員会)、MEPC(海洋環境保護委員会)、BCH(バルクケミカル小委員会)等に対しては積極的に参画を図り、アドバイザーとして、我が国代表を補佐するとともに、我が国の適切な対策立案に寄与し、海上保安及び海洋環境保全の推進に資することを目的として実施した。

(1) 海難防止関係
 海上交通の国際的性格上、海上安全の問題については、常に国際的動向に注目して、これらを斟酌する必要がある。
 現在、IMOにおいて「船舶通報及び航路指定の強制化」について検討されており、1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約(SAR条約)のSAR計画における各国のSAR体制の充実及びこれに関係する全世界的な海上遭難・安全システム(GMDSS)の運用が進められている。
 また、電子海図についてIMO及びIHOにおいて国際的な基礎策定作業が進められている。
 そこで、これら海難防止関連事項を中心に各国の動向を調査するとともに、我が国の対処方針等を検討した。これらの対処方針は、IMO関連会議に調査員を派遣して反映を図った。
[1] IMO会議への出席
 IMO会議で審議される事項については、特に我が国が慎重に対応しなければならない重要な課題であるため、次の会議に調査員を派遣、出席させ、委員会における研究結果を踏まえて、当協会ロンドン連絡事務所と密接な協力のもとに、我が国の意見の反映を図った。
a. 第25回LSR
イ. 開催日:平成6年4月11日〜15日
ロ. 場所 :ロンドン
ハ. 調査員:1名
b. 第63回MSC
イ. 開催日:平成6年5月16日〜25日
ロ. 場所 :ロンドン
ハ. 調査員:1名
c. 第40回NAV
イ. 開催日:平成6年9月5日〜9日
ロ. 場所 :ロンドン
ハ. 調査員:1名
d. 第26回LSR
イ. 開催日:平成7年3月27日〜31日
ロ. 場所 :ロンドン
ハ. 調査員:1名
[2] 調査項目及び内容
 IMO会議の議題である下記の項目について、前年度に引き続き調査研究を行った。
a. 船舶通報の強制化
 下記の事項について検討した。
(a) MSC及びNAVに提出された各国提案について
(b) 日本提案について
(c) SOLAS第<5>章8の改正について
(d) 船舶通報のガイドラインについて
b. 航行指定の強制化
 下記の事項について検討した。
(a) MSC及びNAVに提出された各国提案について
(b) SOLAS第<5>章8の改正について
(c) SOLASとCOLREGの調整について
(d) 行路指定の一般通則(A.572)の改正
c. SAR条約に基づく各国SAR計画の状況
 下記の事項について検討した。
(a) SARの将来作業について
(b) 暫定SAR計画について
(c) 航空及び海上捜索救助の調和について
d. GMDSSの体制・運用等について
 下記の事項について検討した。
(a) GMDSS運用の問題
(b) ホーミングのための衛星EPIRBの使用について
(c) EPIRB誤発射について
e. 電子海図
 下記の事項について検討した。
(a) 電子海図最新維持について
(b) 電子参考図のガイドラインについて
[3] 報告書の作成
 調査研究結果を取りまとめ、報告書を作成した。
a. 部数 :150部
b. 配布先:委員会及び関係官庁、団体、図書館、教育機関等

(2) 海洋汚染防止関係
 海洋汚染防止の国際的な取り決めめ基本となるMARPOL73/78条約は、附属書<1>(油)、附属書<2>(ばら積みの有害液体物質)及び附属書V(廃棄物)が既に発行し国際的に実施されており、附属書<3>(容器に収納して運送される有害物質)についても平成4年7月1日から発効している。附属書<4>(汚水)についてはまだ発効要件を満たしていない。
 この他、現在IMOにおいては船舶からの大気汚染の防止規制及び船舶のバラスト水による有害生物の移入規制等について新しい附属書の策定に向けて審議する一方、新たな海洋汚染問題に対応するための既存の条約に対する改正審議が引き続き行われている。海洋環境問題は、あらゆる問題に積極的に取り組み、国際対応への参画が求められている。
 かかる状況を踏まえ、本事業は海洋汚染防止に関する国際的な情報の収集・解析を継続及び関連の国際会議に参加することにより、国際動向を把握し我が国の適切な対応に寄与するとともに、世界規模での海洋環境保全活動に貢献するため、本年度も、前年に引き続きMEPC及びBCHに関係する資料を収集、翻訳及び整理して国際会議に対する我が国の対処方針の策定、条約の国内法への円滑かつ適正な導入並びに国内体制の整備などについて、委員会を設けて関係官庁及び関係業界との意見の統一または調整を行った。
 また、MEPC及びBCH等の国際会議に技術アドバイザーを派遣して、我が国代表を補佐するとともに関係作業部会に参画して我が国の意見をの反映に努め、かつ、国際会議の動向を把握して関係官庁及び関係業界に報告し、海洋環境保全のための効果的な諸施策の樹立に貢献した。
[1] IMO会議への出席
 IMO会議で審議される事項については、特に我が国が慎重に対応しなければならない重要課題であるため、次の会議に調査員を派遣、出席させ、委員会における研究結果を踏まえて、当協会ロンドン連絡事務所と密接な協力のもとに、我が国の意見の反映を図った。
(a) 第24回BCH
イ. 開催日:平成6年9月19日〜23日
ロ. 場所 :ロンドン
ハ. 調査員:1名
(b) 第36回MEPC
イ. 開催日:平成6年10月31日〜11月4日
ロ. 場所 :ロンドン
ハ. 調査員:1名
[2] 調査項目及び内容
a. MEOC及びBCHに関する資料の収集・翻訳及び解析
 国際会議に出席し、わが国の代表を補佐するとともに海洋汚染防止関係資料の収集、翻訳、解析を行った。
 下記のとおり、海洋汚染防止関係国際会議等の資料の収集、翻訳、解析を行った。
(a) 第24回BCHの各国提出文書の翻訳及び担当議題の資料作成等
(b) 第36回MEPCの各国提出文書の翻訳及び担当議題の資料作成等
(c) 第25MEPC、第24BCH及び第36回VEPCの報告書の翻訳・整理等
b. MARPOL条約に関連する資料の収集・翻訳及び解析
 下記のとおり、海洋汚染防止関係国際会議等の資料の収集、翻訳、解析を行った。
(a) OPRC条約関連の資料の収集・翻訳及び解析を行った。
(b) MARPOL73/78条約締約国リストを作成した。
[3] 報告書の作成
 調査研究結果を取りまとめ、報告書を作成した。
a. 部数 :150部(コピー製本)
b. 配布先:委員会及び関係官庁、団体、図書館、教育機関等
■事業の成果

(1) 海難防止関係
 IMO第25回LSR、第63回MSC及び第40回NAVに調査員を派遣し、アドバイザーとして、我が国代表を補佐させ、船位通報及び行路指定の強制化等重要な議題について、我が国の対処方針の反映を図った。また、同時に各国の動向調査及び情報収集を行い、これを関係当局及び団体等に提供、有効な活用を図った。
 さらに、委員会での検討事項及び必要な資料について報告書に取りまとめ、海難防止に関する国際的な動向を知ることができる資料として、これを関係当局及び関係団体に広く配布したことは、海難防止の推進に寄与するものと思料される。

(2) 海洋汚染防止関係
 本事業は、海洋汚染防止条約に関するIMOの動向を把握するとともに、関係当局の指導によりMEPC及びBCH小委員会の前後に関係当局及び関係団体等で構成する連絡調整委員会を開催して国際会議の審議事項の検討を行い、わが国の対処方針の策定及び行政の円滑な運営に寄与した。
 また、MEPC及びBCH小委員会の国際会議に代表を派遣して政府代表を補佐するとともに国際会議の関係資料の収集・翻訳及び解析を行い、これから得た情報を当局をはじめ、海運及び関連業界に提供し有効な活用を図った。
 さらに、関係資料のうち必要な事項については、報告書に掲載し海洋汚染防止のための参考資料として関係機関をはじめ関係団体等に広く周知して活用されているので、関係者の海洋環境の保全に貢献するところ大であると思われる。





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