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■事業の内容

(1) 現状の実績調査と試験方案の研究
[1] 計測項目・計測方法の調査
 ディーゼル機関の陸上運転と海上運転において、計測諸元に差異が生じると予想される項目を検討し、計測実施上の難易度も考慮して約20項目余の計測項目を決定した。特に重要となると考えられるNOxの計測及び軸トルクの変動と陸上・海上の計測手法の差を補完する方法について、丹念な検討を行った。また、最初の陸上試験の結果に基づき、さらに問題点の整理と検討を行い、その後実施する海上試験に反映させられるよう、試験方案を改善した。
[2] 計測機器の選定と比較実験
 各社の計測で使用する計測器のうちで、特に統一を必要とする軸馬力計、NOx計・酸素濃度計について、各種製品の仕様を検討した。NOx計では4種類の計器を調査し、定電位電解法とケミルミ法(化学発光法)の2種類を採用することとした。これらを用いて2台のディーゼル機関の陸上試験と海上試験を実施し、その計測結果を比較した。詳細な比較検討は来年度にまとめる予定であるが、NOx計の型式による性能の差異が明らかとなった。

(2) 舶用環境での機関諸元の計測
[1] 実機関と実船計測
 約12,000馬力と約59,000馬力の2台のディーゼル機関について、陸上で試験を行い次に船舶に搭載された状態で試験を実施し、機関諸元の計測を行った。このためには、(1)項で検討された試験方案を用い、得られたデータは次の(3)項において整理・解析を行った。

(3) 条件の違いによる機関諸元の差異の検討
[1] データ集積方法と解析方法の検討
 陸上試験及び海上試験で得られる計測データの収集、解析方法を検討した。特に排気管の途中から採取するガスの採取位置の違い、採取方法の差、及び導管の前処理方法の影響等を検討した。排気ガスのNOx測定方法にはISOの規定もあるが、実用的にはまだ問題があることが分かった。また、陸上と海上とでは軸馬力の計測方式が相違するため、その影響について解析方法を検討した。
[2] 各計測データの集積と解析
 陸上試験と海上試験の合計4件の試験データを収集でき、前項で実施した検討に基づき試験結果の解析を行った。一般的には、従来予想していた通りの計測結果が得られたが、NOx計測値については計測機種の違いによるばかりでなく、吸入空気の温湿度や馬力変動による相違が大きく、これらは計測機種による差よりも大きいことなどが明らかになりつつある。
■事業の成果

ディーゼル機関の運転諸元は、陸上における試運転時と海上試運転時とでは若干の相違を示し、就航後ではさらに異なる。この理由として、使用燃料の違い、波浪による軸トルクの変動、プロペラマージン等があると言われているが、明確な原因は解明されていない。特に、地球規模で環境保全が重要になっているおりから、運転諸元の中でもNOxの排出濃度が問題となっており、この値が陸上試験、海上試験で異なると言われている。
 本研究では、多くのディーゼル機関の試験データの解析からこれらの問題を解決し、合理的な機関の計画法を確立すると共に、将来、船舶でも恒常的に排気ガスを計測するようになったときに、測定値の比較検討が容易にでき、NOx濃度に対する統一的な精度よい計測方法を確立することを目的としている。初年度の研究であったが、2隻の大型船舶による舶用環境における機関諸元の計測を終了でき、条件の違いによる機関諸元の差異のかなりの部分が明らかとなって、ほぼこの目的は達成できたと考える。
 研究の初年度のため計測方法の検討等に多くの時間を要し、かつ大型ディーゼル機関を搭載する大型船舶の海上試運転の機会はそれ程多くなく、海上試験には多くの制約があるため研究の実施には多くの苦労が伴った。これらで得られたノウハウや技術は来年度以降の試験において有効に活用されるものと思料される。





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