■事業の内容
(1) 小型試験片を用いた腐食疲労試験による各種要因の把握 [1] 腐食疲労データの調査 昨年度調査結果に加え溶接継手の海水中腐食疲労データを補強し、データベース化を行った。 [2] 標準条件下の腐食疲労特性の実験的検討 TMCP鋼の平滑試験片により、標準条件下の疲労試験を行い、S-N線図を作成した。 [3] 環境因子の影響の実験的検討 平滑試験片により乾湿繰返し条件及び人工海水中の酸素濃度と温度条件の腐食疲労特性への影響について試験を行った。 [4] 防食下の腐食疲労特性の実験的検討 バラストタンクの塗装、電気防食の劣化状態を再現する試験を行った。 [5] メカニズム及び加速試験法の検討 腐食疲労のメカニズム解明のための加速試験法を確立するため試験を行った。 [6] その他の因子の影響の検討 変動荷重因子、初期腐食因子、及び原油環境因子の影響を解明するための試験を実施した。 (2) 構造モデルを用いた腐食疲労試験 [1] 中型試験片による腐食疲労試験 構造モデル試験体により海水バラスト環境下での腐食疲労試験を行い、小型試験結果との対応について検討した。 (3) 環境模擬試験法に関する研究 [1] 加速試験法の検討 各種加速試験法について追加調査を行い、実環境を模擬した加速試験法をまとめた。 [2] 防食劣化状態に関し実環境を模擬する方法の検討 防食劣化の実環境を再現するための要因分析を行い、環境の模擬試験法を立案した。 (4) 実船調査 バラストタンクの腐食状況の実船調査要領について検討し、2船について実船調査を実施した。
■事業の成果
腐食環境や変動荷重条件が厳しい船舶のバラストタンクなどの船体構造信頼性向上のためには、従来行われた試験片レベルの多くの疲労研究成果を実構造、実環境へ適用する手法の開発が必要になる。また、実船の損傷例が多いにも拘らず、実構造、実環境における腐食疲労特性は未だ十分に把握されていないのが現状である。 本研究は実船における腐食疲労特性を考慮した高い精度のき裂発生寿命の予測技術の確立を目指して、過去の実績調査、解析及び実験により各種要因を明らかにし、実船のバラストタンクにおける腐食疲労強度評価法の提案を行うことを目的とした、3ケ年計画の2年度である。 本年度の研究成果を要約すると、以下の通りである。 (1) 腐食疲労データのデータベース化 腐食疲労データを調査、収集して、データベース化を行い、今後の研究の指標を得た。 (2) 小型試験片を用いた腐食疲労試験 K32A鋼(TMCP)の小型試験片を用いて、腐食疲労試験を実施し、標準状態のS-N線図を求め、塗膜厚さと疲労強度、海水温度と疲労強度、電気防食の効果、腐食疲労メカニズムについて確認することができた。 (3) 中型試験片による試験 塗装の有無に分けた中型試験片により腐食疲労を行い、小型試験片の結果と対比して、ホットスポット応力を評価指数とすると、両試験の破断寿命が良く一致することを確認した。 また、塗装無しの試験片について見ると、人工海水中では、大気中の寿命の1/4となることが分かった。 (4) 環境条件の模擬 バラストタンクの実環境と実験室の環境条件の比較を行い、水質や温度については、ほぼ実環境を模擬しているが、漲水率などは、今後検討を要することが分かった。 (5) 実船調査 疲労寿命推定を効果的にすることを意図して、就航中のバルクキャリア2隻のバラストタンクの腐食、損傷状態を調査した。
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