日本財団 図書館


■事業の内容

(1) 損傷事例/解析事例の調査
 損傷事例/解析事例の追加収集を行い、寿命予測上重要な、発見可能なき裂長さの実態を明らかにした。
(2) 疲労き裂伝播解析手法の基礎データの整備
[1] 小型試験片による疲労き裂伝播試験
 小型標準試験片によりき裂先端の詳細計測を行い、伝播解析手法の基礎データを整備した。
[2] き裂伝播の解析手法の整備
 き裂伝播影響因子(溶接残留応力、止端部応力集中)のモデル化を行い、各種実験に対して試計算を行い、実験データと比較した。
(3) き裂成長シミュレーションとその実用的利用方法の研究
[1] シミュレーションの実用化手法の研究
 表面き裂ベンチマーク計算及び三次元自動要素分割手法について検討し、大きなき裂のき裂成長シミュレーションを行った。
[2] 代表的部材のシミュレーション解析
 解析対象部材として80型BCの横隔壁下部の船底縦通材、横隔壁部の船側縦通材、横隔壁スツールと内底板の交差部を選定し、その機能喪失条件を仮定してき裂成長と寿命予測の検討を行った。
(4) 大型構造モデルによる検証
[1] 構造モデルによるき裂成長シミュレーション手法の実験検証
 実船におけるき裂成長過程の再現を模擬した構造モデルを製作して検証実験を行った。
(5) 寿命予測法への総合化研究
[1] き裂の実用的定義と部材重要度の研究
 き裂の実用的定義と部材重要度の定義を行い、寿命予測におけるき裂長さを部材の重要度に応じて明らかにした。
[2] 信頼性工学アプローチによる総合化手法の研究
 項目(1)損傷事例/解析事例の調査結果から検査の実態の把握及びモニタリング手法の導入の検討等総合化への構想作りを行った。
■事業の成果

船舶の信頼性向上の要請は強くなってきており、設計上の諸ツールの機能、精度の向上が求められている現状にある。特に疲労強度評価法では、想定するき裂の形態に応じて部材の機能喪失を防止する観点からその寿命予測が行われる必要がある。
 このためには、船体構造の設計・検査・保守に携わる関係者の疲労き裂に対する共通認識に基づく設計手法を実用化する必要がある。
 本研究は上記の観点から、実証的データに裏付けられたき裂伝播解析手法の設計への利用を目的とした3ケ年計画の2年度である。
 本年度の研究成果を要約すると、以下の通りである。
(1) 損傷事例/解析事例の調査
 検査点検性と発見可能き裂寸法の調査結果の分析を行い、検査点検性改善の指針作成の考え方とパックデータが得られた。
(2) き裂伝播解析手法の基礎データ整備
 き裂伝播試験及びき裂先端の開閉口の詳細計測により、RPG荷重理論が開閉口の挙動の数値シミュレーションに適用できることを確認した。
(3) き裂成長シミュレーションとその実用的利用法
 バルクキャリアの二重底構造を取り上げ、き裂伝播解析に必要なモデル化要領など、実用化のための課題を明らかにし。
(4) 大型構造モデルによる検証実験
 実船の疲労き裂進展やき裂の経路選択現象を再現シミュレートする計算法を検証するための基本データを取得した。
(5) 寿命予測法への総合化研究
 疲労寿命予測法のガイダンスについてまとめ、船体構造のメンテナンス、点検/検査のガイドライン及び疲労損傷モニタリングの基本的な考え方、今後の方向について提言した。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION