日本財団 図書館


■事業の内容

小型高性能な小型船舶操縦士訓練用シミュレータの試作機の開発を行うため、総合システムの開発及び調査検討を行った。
[1] 総合システムの開発
a. 画像生成ソフト開発
 景観画像表示の高度化、テロップの表示、船体動揺(ピッチ、ヒール)に連動する画像表示、視野切替え機能、他船(他の移動物体)の表示に関するソフトを新たに開発し、本ソフトの開発は完了した。
b. 船体運動計算ソフト開発
 船体運動計算部のシミュレータへの組み込みを行うとともに、操縦装置から操縦操作量を入力とする運動計算の実行、計算結果の視界模擬装置、音響模擬装置、教育訓練支援装置への出力、時間管理機能に関するソフトを新たに開発し、本ソフト開発は完了した。
c. 教育訓練ソフト開発
 具体的なシナリオを実現するための各装置およびソフトに対する制御機能、他船(移動物体)の発生、教育訓練支援表示装置上への自船、他船の2次元航跡表示、技能評価、記録出力機能に関するソフトについては現在開発中であるが、基本部分のソフト開発は完了した。
d. データベースの設計・制作
 画像データ、音響データ、他船航行データ、テロップデータ、音声データ、水域データに関する6種類のデータについて、その内容、形式、情報量および制作手法等の設計を行うとともに、サンプルデータの制作に着手した。
e. ハードウェアの製作
 音響模擬装置の製作が完了し、初期の性能を満足することを確認した。総合体に関しては、その製作に着手した。
f. 全体システムの構築
 本シミュレータのソフトウェアにおいては、画像生成ソフト、船体運動計算ソフトが完成し、教育訓練ソフトについても基本部分の実行が可能な状況になった。また、ハードウェアにおけるこれら構成要素の総合調整を図りながら、シミュレータとしての機能面でのまとめ上げを行い、シミュレータとして最小限必要となる機能を実現できる段階に達した。
g. システム性能確認試験
 システムの性能に関しては、各装置(視界模擬装備、操縦装置、教育訓練支援装置、音響装置)の固有性能を、可能な部分から順次ソフトウェアも含め確認を行い、良好な結果を得ることができた。
[2] 調査
a. シミュレータにおける技能評価基準の策定について
 平成5年度において得られた諸データおよび公表論文等を基に、シミュレータの教育訓練シナリオにおける衝突回避動作の技能評価基準について検討を行い、その基準案を策定した。
b. 教育訓練シナリオに関する具体的検討
 本シミュレータの利用者は、日頃乗船機会の少ない小型船舶操縦士免許の受有者であることを前提に置き、実船実験やアンケート調査で得られた操船実態も考慮して、教育訓練シナリオの素案を一つ作成するとともに、その内容に関して作業部会において審議検討を行った。
c. 自学自習をサポートする諸機能について
 利用者が特別なインストラクターなしに初期の訓練を受けられるようなガイドの方法を中心に、検討を行ってきた。具体的にはシミュレータ利用者のガイダンス方法や、テロップ、ナレーションによるメッセージ提示機能および記録出力機能に関する検討であり、教育訓練シナリオに折り込む形で素案を作成した。
e. シミュレータ開発に関し必要な調査事項について
 シミュレータの試作を進める上で、決定が必要となる仕様等に関して、他船、浮標等の視認距離の補完、教育訓練支援表示装置について調査を行った。
※本事業は、平成7年9月30日完了予定である。
■事業の成果

昨年度は、シミュレータを構成するハードウェアおよびソフトウェアの主要な要素に関する基本的な技術開発を中心に事業を実施した。本年度の目標は、昨年度開発された要素技術に磨きをかけるとともに、これら要素を総合化し、シミュレータが一つのシステムとして機能するレベルまで高めるところにある。
 主な成果は次のとおりである。
 総合システム開発においては、これまで運動、画像、音響などの模擬装置関係のハードウェアおよびソフトウェアの開発がほぼ終了し、試作機はシミュレータとして最低限必要な機能を実現できる段階に達した。今後、より詳細な教育訓練シナリオを試作機上で実現させることを中心に、ハードウェア、ソフトウェア、データベースの開発を引き続き進めて行く。
 一方、調査研究においては、昨年度実施した実船実験調査、アンケート調査等の基礎的な調査結果を基に、衝突回避動作における評価基準の策定、教育訓練シナリオの検討など試作機に関わる具体的な調査・検討を行ってきた。今後とも、試作機開発の進捗に応じてさらに検討を重ねることにより、造船技術の振興、我が国の造船業の発展に大いに貢献するものと思料される。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION