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■事業の内容

(1) 流出油拡散漂流シミュレーション・プログラムの開発に関する調査研究
[1] 流出油拡散漂流シミュレーション・プログラムの開発
 外洋における流出油の漂流予測は、平穏な内湾のような場合に比較して難しい課題が多くあり、大規模事故が発生した場合に、的確な対応ができない可能性がある。従って、事故発生の早い時期に保全水域または沿岸への油漂着及び汚染範囲等を推定し、事故対応計画の決定ができるようにするため、我が国周辺海域のうちタンカー・ルートに位置する海域として相模湾・伊豆大島海域を対象とした流出油の拡散・漂流状況を予測することのできるシミュレーション・プログラムの開発を行った。
[2] 2次元風洞水槽における原油の経時変化特性の研究
 平成4年度に製作した2次元風洞水槽において流体力学的基本特性調査を実施し、原油の経時変化特性の実験を行い、原油の蒸発、乳化及び混合並びに輸送過程を漂流予測シミュレーション・プログラムに導入した。
(2) 流出油防除措置に関する調査研究
[1] 可搬式船舶搭載型外洋向油回収装置の調査
 各種油回収装置の性能調査を行うとともに、内外の実情を調査し総合評価を実施した。
[2] オイルフェンス、漁網及び放水ノズルの流出油流動制御方法に関する調査研究
 保全水域または沿岸への油漂着を防止するための方法として、オイルフェシス及び放水ノズルについて平成4年度の低粘度油に対して高粘度油を対象に水槽試験を実施するとともに、漁網の取りまとめを行った。
[3] 海外調査
a. 調査先
カナダ、エドモントン
アメリカ、ワシントンD.C.及びタンパ
b. 調査内容
 上記[1]の総合評価に関する資料収集等のため、カナダで開催する氷海域に拾おる油濁防止対策に関する研究集会に出席し、研究機関の研究動向及び資料を入手するとともに、アメリカOPA90発効後に建造された16隻の防除作業船について調査した。
(3) 報告書の作成
部数  : 200部
配布先 : 関係官庁、海洋環境保全関係者、委員等

■事業の成果

(1) 流出油拡散漂流シミュレーション・プログラムの開発に関する調査研究
[1] 我が国周辺海域の主要なタンカー・ルートに位置する相模湾・大島海域について流況予測、風の分布予測及び風圧流予測の各サブモデルを編集し、これらを合成して流動場を求めた。この流動場に油の移流拡散予測サブモデル及び油の風化サブモデルを加えて、流出油の拡散・漂流を予測することのできるシミュレーション・プログラムを開発した。
[2] 開発したシミュレーション・プログラムには流出した油の経時変化の物性値を表示するととができる。
[3] 計算された漂流油の位置と実際に観測された漂流油の位置につかれが生じた場合、随時漂流油の位置の修正をして予測するととができる。
[4] 原油風化実験用の2次元風洞水槽の付属設備、計測器及び解析システムを整備して、流体力学的特性を調査するとともに中東産のオマン原油について風化実験を行い、蒸発量、密度、含水率、粘度の経時変化する物性値を把握した。なお、本研究では風化原油の蒸発量をキャビラリーガスクロマトグラフを使って、求める方法を開発した。また、従来利用されていた乳化現象に関する微分方程式を再解析し、シミュレーションにおける含水率の予測に有効に利用できる道を拓いた。
(2) 流出油防除措置に関する調査研究
[1] 可搬式船舶搭載型外洋向油回収装置の調査研究
 文献調査は米国に新たな民間防除組織として設立されたMSRCの油流出事故対応船(16隻建造)及び油防除資機材等について行った。また、油流出事故に対応する組織や資機材の配備計画等も併せて調査し、我が国の防除体制に大いに参考となる資料を得た。収集した外洋向油回収装置の油回収に関する性能等の評価を行ない、この性能評価をもとに平成4年度に油回収原理模型を設計・製作して、水槽試験を行ない、広範囲な粘度の油を回収することができた。このことにより、本油回収原理模型を用いて、外洋向油回収装置にスケールアップできる見通しを得た。
[2] オイルフェンス及び放水ノズルの流出油流動制御に関する調査研究
 流出油が沿岸の保全水域に漂着するのを防止するため、斜め展張オイルフェンスにより、漂流油の流れ方向を変える方法及び放水ノズルから水ジェットを噴射して流れを作り、漂流油の流れ方向を変える方法を水槽試験で実施し、油の誘導制御に関する知見を得た。また、水槽試験をもとに斜め展張オイルフェンスの理論解析及び放水ノズルによる開水域幅についての理論解析を行い、水槽実験との整合性を得るとともに実用例として、オイルフェンス展張形状及び展張力の計算プログラムを作成した。
[3] 漁網の利用
 比較的網目の小さいいわし漁業の旋網に、漁業用フロート(30cm以上)で乾舷を設けて、5,000cP以上の高粘度油(最大26,700cP)の滞油性能を調査し、利用できる見通しを得た。このことにより、緊急時の資機材不足の応急措置としての漁網は、滞油・漂流拡散防止の他に油の流動制御にも利用できる見通しが得られた。
 これらは、今後の流出油防除措置体制整備、並びにこれに必要な資機材の開発に資するものと思料される。





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