■事業の内容
1993年6月地球サミットがブラジルで開催されるなど、近年地球規模の環境問題が大きく取り上げられ、これらの問題を解決して行くためには世界中が一丸になって取り組んで行くことが必要とされている。 船舶関係者は、地球環境問題のひとつである海洋汚染の防止を図るため、古くから船舶からの油等の排出規制措置などに世界的に取り組んできているが、海洋の恩恵を享受している者として、また、地球規模で活動している者として、船舶関係者が船舶の運航に係る豊富な経験と知識に基づき、船舶の特殊性を生かして地球環境問題の改善のために積極的に貢献すべき時期に来ている。 しかしながら、地球環境問題は温暖化の問題をはじめとして、大気、水、熱帯雨林など広範な分野に及ぶため、それに対する効果的かつ現実的な貢献施策は十分検討されていないのが現状である。 本調査は、船舶関係者が積極的に地球環境問題の改善に貢献するため。船舶関係者が成し得る地球環境の保全に関する貢献施策をガイドライン(ボランタリー・プラン)としてまとめ、広く関係者の理解と利用に供するため、次のとおり実施した。 (1) 調査の方法 [1] 委員会による検討 学識経験者、関係団体及び関係官庁で構成する「海洋データの収集等地球環境貢献施策調査研究委員会」を設置して調査研究を推進した。 a. 検討事項 (a) 調査研究方針 (b) 中間報告の検討 (c) アンケート調査結果の検討 (d) その他 [2] 委託研究 「地球環境貢献施策に関する基礎調査」に係る各種データの収集等調査を専門会社に委託し、ガイドライン案をとりまとめた。 [3] アンケート調査・ヒアリング調査・文献調査 a. アンケート調査の実施 (a) 「ボランティア商船による地球環境関連データの収集に関するアンケート」調査 (b) 「船舶関連会社に対する地球環境貢献施策アンケート調査 b. ヒアリング調査 c. 文献調査 (2) 調査の項目及び内容 [1] 地球環境関連データの収集計画 地球環境問題の改善のための調査研究を実施している国立研究所、大学などが収集を望んでいる海洋や大気に関するデータ項目を整理し、それらデータの収集について船舶乗組員の労力や必要な費用などの面から船舶が通常の運航中に実施できる方法をガイドラインとしてまとめるため、下記のとおり実施した。 a. ヒアリング調査及びアンケート調査 地球環境問題の改善に関する研究を実施している国立研究所、大学等の研究機関を対象に、研究上有用な海洋及び大気に関する各種データ(項目、調査海域、調査方法等)についてヒアリング調査及びアンケート調査を実施した。 b. 収集データの整理 上記aで実施したヒアリング及びアンケート調査で収集したデータを整理した。 c. データ収集方法の検討 それぞれのデータの収集について、船舶乗組員の労力、測定機器及び費用の面を含めて実施方法を検討した。 d. 地球環境関連データの収集計画のまとめ 収集可能なデータ項目ごとに実施方法を整理した。 [2] 地球環境貢献施策 冷凍機や、冷蔵・冷凍コンテナにオゾン層の破壊に影響の少ない冷媒を使用して大気環境の改善に寄与したり、コンテナなどの資材を熱帯雨林産の天然材から植樹林産のゴム樹合板に替えて熱帯雨林の破壊防止に貢献するなど船舶関係者の一部で既に実施されている地球環境貢献施策の実例を収集・整理するとともに、文献などにより船舶の運航に特別な負担をかけることなく実行可能な貢献施策を調査研究してガイドラインとしてまとめた。 a. アンケート調査・文献調査 船舶関連会社等を対象にアンケート調査を行い、現在実施している地球環境貢献施策と今後可能な施策及びアイディアを収集する。また、文献等により、他業界の貢献施策に関する資料を収集した。 b. 収集資料の整理 上記aで収集した資料を整理した。 c. 貢献施策実施方法の検討 それぞれの貢献施策について、船舶の運航に特別な負担をかけることなく実行可能な実施方法を検討した。 d. 地球環境貢献施策のまとめ 地球環境貢献施策をとりまとめ・ガイドラインを作成した。 (3) ガイドライン及び報告書の作成 研究結果をとりまとめ、ガイドライン及び報告書を作成した。 [1] ガイドライン イ. 部数 :各1,000部(印刷製本) ロ. 配布先:委員、関係官庁(各100部)、船舶関連会社(各600部)、関連研究機関(各200部)、その他(各100部) [2] 報告書(コピー製本) イ. 部数 :40部 ロ. 配布先:委員、関係官庁等 (4) 委員会の開催 海洋データの収集等地球環境貢献施策調査研究委員会 4回
■事業の成果
地球環境問題の研究のためには広範囲な海洋の諸現象の解明が重要であり、専門の調査船のみならずボランティア船舶による観測協力は不可欠の要素である。 ボランティア船舶としての地球環境への貢献は、海洋航行者としての特性を生かした船舶関係者だけが実施可能な施策であり、船舶関係者側も可能な限り協力したいとの意向を有しているが、研究者にとって観測に可能な船舶の情報が不足していること、観測作業に伴う乗組員の負担増、観測機器設置に関する船内スペース等問題点が明らかとなった。これらの問題点を受けて、ボランティア船による観測を促進するための提言として、次の3項目の検討が必要であるとまとめられた。 [1] 研究員と船舶関係者との連絡調整を行う窓口機関の設置 [2] ボランティア船舶用観測機器の開発促進 [3] ボランティア船舶観測促進のための支援の仕組み、国際協力の促進 一方、環境に優しい企業として、海運・水産業界が地球的規模で環境保全に貢献可能な具体的事例を抽出した。これら調査結果は、前者については「ボランティア船舶による地球環境の促進について」、後者については「船舶関係老による環境保全のための貢献策について」のそれぞれパンフレットにまとめられ、船舶関係者の地球環境への具体的な貢献施策等の指針となるものと期待される。
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