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■事業の内容

(1) 評価実験
 平成4年度に試作した新型モデル巻揚機の海上評価実験計画案を作成し、委員会の承認を受け実験を実施した。
 実験は、海上保安庁水路部の測量船「明洋」の協力を得て、10月9日〜12日にわたり相模湾等で実施した。実験データは、実験項目ごとに整理解析を行い、モデル巻揚機の制御ソフトの改良を行った。
(2) 合理化方策の作成
 平成4年度に作成した合理化方策について再度検討した結果軽微な修正で合理化方策は決定された。
 評価実験及び合理化方策について委員会、作業部会で、次のような審議・検討を行った。
[1] 船体の上下動を検出するために加速度計か水中深度計のどちらがよいか検討された。本質的には後者の方が好ましいが、今回は加速度計による方法を目標とする。
[2] 海上実験に備えワイヤ取りに加速度計を取り込み巻揚機の上げ下げの駆動実験を7月中に会社内で行う。
[3] 社内実験では重錘(20kg)の1mの上下動を巻揚機のワイヤくり出し巻き取りにより約70%吸収できた。
[4] 波高、周期、重りの重量を種々変えて、自動吸収の性能を比較する必要がある。
[5] 海上実験の計画内容は再度検討し、委員長の了解を得てから実施すること。
[6] 海上実験では自動停止及び自動駆動は、ほぼ設計どおりの成果を得ることができた。
[7] 波浪による船体の上下動を吸収する海上実験では、波高約1m、周期10秒の波は、巻揚機の正逆回転により90%吸収できた。
[8] 水中の重錘につけた加速度計のデータからは、重錘が制御装置により、水中で上下動をしていないことの検証は得られなかった。
[9] 水中重錘に加速度計を付けたことについて検討した結果、加速度計に代えて水圧計を付け、将来再度実験をする必要がある。
[10] 合理化策の見直しについては、前年度作成した案に「資料室を設ける」、「ピンガー受信装置を装備する」の2項目が追加された。
[11] 国内の海洋調査船の概要が判明したこと、及び調査内容が報告書にまとめられたことは過去になく、大きな成果である。
[12] 観測機器が高精度化されてきたので、船体自身の振動を減少させる必要が生じてきた。

■事業の成果

電子技術等の発展に伴う海洋観測機器の発達により、現在の海洋調査船には海上測位・海底地形・海底地質構造・地磁気・重力・海象等の多種多様な調査機器・システムが船内に装備され、また、甲板上及び船外には曳航するために必要なギャロス・巻揚機等が目的別に個々に多数配置されており、重量的・空間的に極めて非効率的な現状にある。
 本事業により、海洋調査機器及び海洋調査船の現状と開発動向の情報収集・整理・解析に基づく技術的問題点等と対策及び新型モデル巻揚機の評価実験を踏まえ、ギャロス・巻揚機等の多目的共用化と観測機器の適正配置の合理化等について研究したことは、非効率的な現状の改善、合理的かつ効率的な海洋調査船の建造に資するとともに海難防止に寄与するものと思料される。





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