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■事業の内容

船舶用ディーゼル機関から排出されるNOx、SOx等の海上における計測方法について、以下の項目について検討を行った。

(1) 常時モニタリングシステムの検討
 従来のNOx測定機器は、陸上固定発生源での使用を念頭に開発されたもので、陸上での使用に必ずしも適しているとは限らない。ここでは、小型の可搬型の測定機の現状を調査し、同機器を使用する際の留意事項等について測定機メーカーへの聞き取りを中心に調査検討を行った。船舶排ガス常時モニタリングシステムとして、陸上煙源に使用されているNOx測定機器(CLD法(化学発光法)とNDIR法(赤外線吸収法)が主)をべースに、船舶上でのNOx測定に適した機器について検討した。

(2) 簡易計測方法の検討
 簡易計測手法を用いてNOxを定量的に測定する方法の可能性について大学研究室及びメーカーへの聞き取り調査を行った。

(3) 部分負荷時の船舶排ガス中SPM(浮遊粒子状物質:Suspended Particu1ate Matter)濃度の測定
 昨年度に引き続き、今年度は部分負荷に注目して2サイクル機関と4サイクル機関について排ガス中SPMの測定を行った。実験には直接法と間接法を用い両者の関係について検討した。

(4) 船舶排ガス測定標準の作成
 ISO規格を船舶排ガス測定に応用する際の問題点として、NOx測定部分、NOx補正式、SPM測定部位について、実験及び資料収集を行った。

(5) 大気汚染物質低減対策実施手法の検討
 IS08178(案)をべースにして、テストベッドあるいはオンサイトにおける船舶排ガス中のNOx測定に関する問題点を検討し、測定に際しての参考指針を作成した。

(6) 委員会の開催
 船舶排ガスからのNOx等測定標準調査研究委員会  4回
■事業の成果

[1] 陸上で現在用いられているNOx測定機(CLD法(化学発光法)及びNDIR法(赤外線吸収法))を船上で用いる際の問題点についてまとめた。
また問題点に対する技術的対処法についてもまとめた。その結果、現状の可搬型測定機をそのまま利用するには実用面でかなり無理があり、船舶用の測定機の開発が必要であるとされた。
[2] より簡便なNOx測定機器として、検知管、NOxセンサー、イオンクロマトグラフィーを用いた測定機器の使用の可能性を検討した結果、これらの簡易計測方法の利用は現状では困難と判断された。
[3] 船舶排ガス中のSPM(浮遊粒子状物質:Suspended Particu1ate Matter)濃度を、4サイクル及び2サイクル機関を対象に測定した結果、直接法での測定値が希釈法での測定値を上回り、その程度は低負荷になるほど大きくなることが認められたが、今後より多くのデータを蓄積していく必要があるものと考えられた。
[4] 船舶排ガス測定標準の作成のために、船舶排ガス中のNOx及びSPM測定に関する種々の問題について実験も含めて検討した結果、IS08178の提案式の使用が大型2サイクル機関においても実際上問題ないことが認められた。
 以上の結果を踏まえ、IS08178をべースにして、船舶排ガス中のNOx測定に際しての参考指針を作成したが、今後の課題として、部分希釈法及び直接法による船舶排ガス中のSPM測定方法、測定方法によるNOx測定値の相違、舶用機関の長期間にわたる出力の変化、の点について、今後さらに資料を蓄積していく必要があることが分かった。これにより、地球環境の保全に資するとともに、造船技術の振興及び我が国造船業の発展に大いに貢献するものと思料される。





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