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■事業の内容

(1) 船殻に関する軽量化手法及び軽量化技術の開発
[1] サンドイッチ構造の適用に関する調査研究
 平成3年度調査研究により、サンドイッチ構造の適用による軽量化効果が大きいことが定性的に把握されたが、平成4年度は材料的にはアルミニウム系サンドイッチ構造に焦点をあて、具体的にどのような部分への適用が効果的であるかを検討し、その効果の定量把握、及び経済性の評価を行った。
[2] アルミニウム合金の適用に関する調査研究
 アルミニウム合金の船舶への適用は徐々に増えつつあるが、今後の本格的普及に向けての要素技術研究、すなわち高力アルミニウム合金板の工作法、及び接合法に関する研究を行うとともに、サンドイッチ構造との組み合わせについても検討した。
(2) 艤装に関する軽量化手法及び軽量化技術の開発
[1] Desigh by Anaiysis(DBA)手法の適用に関する調査研究
 軽量化の検討対象となる艤装部品として、[1]ハッチカバー、[2]諸管、[3]ラッシング装置、[4]シャフティング、[5]通風/換気装置、[6]がい装なしケーブルを抽出し、各種解析を行い、その結果から得られた軽量化効果を分析した。
[2] 防火及び消火関係重量の軽量化に関する検討
 国際航海に従事する船舶が備えるべき防火構造・装置及び消火装置について規定する海上人命安全条約(SOLAS条約)、IMOの防火小委員会、建築の防火等の動向を踏まえ、軽量化防火材料・防火構造及び軽量化消火設備の使用可能性について、法的規制や小規模な火災実験から火災拡大と抑制等の検討資料を得て火災安全上の検討を行うとともに、防火関係規定に起因する船舶の重量増加を抑え、更に軽量化を促進する方法を検討した。
[3] アンカー及び係留システムの軽量化手法に関する調査研究
 アンカー関連装置の軽量化は特に小型船舶において効果が大きいが、船舶によってはアンカーの利用率が非常に低く、適当な支援システムが存在すれば揚錨装置の省略等による重量軽減が可能となる。本年度は、各種船舶におけるアンカーの使用法を調査するとともに、アンカー関連装置の軽量化、簡略化を実現するシステムの実現性、課題等を分析した。
(3) 舶用機器に関する軽量化手法及び軽量化技術の開発
[1] 舶用機器へのプラスチック系材料適用のための検討
 平成3年度において、舶用機器へのエンプラ化(エンジニアリングプラスチック)の可能性の検討が行われ、数年後にエンプラ化が可能な部品の洗い出しとその際の問題点及び課題が抽出されたが、平成4年度はその結果に基づき、エンプラを中心にそれぞれに使用可能なプラスチック系材料の洗い出しとプラスチック系材料部品の解析(特に強度)手法について調査研究を行った。
[2] 各種機器・システムの検討
 船舶における省エネ追求の主たる課題は、推進性能の向上と軽量化であり、特に高速船等では搭載機器の小型・軽量化によるメリットは非常に大きいが、そのためには新材料の導入、機器回転数の高速化、新構造の採用等が必要であるが、航空機や自動車等における大量生産を前提とした機器と比べ、多品種少量生産である船舶用機器については製造コストの増加が避けられない。
 以上のことから、本年度は、国内外の他産業の類似機器の現状並びに船舶への適用可能性の調査、各種機器単体での軽量化・小型化の検討及び機器システムとしての軽量化手法・技術の抽出と技術的実現の可能性について検討した。
(4) 委員会の開催
船舶の軽量化に関する調査研究委員会  3回
同 船殻部会             5回
同 艤装部会             4回
同 舶用機器部会           4回
■事業の成果

本事業の検討結果における船舶全体としての軽量化効果は、次のようにまとめられる。
(1) 船殼等にアルミ系サンドイッチ構造材料を用いることによる軽量化効果は、船舶の規模、船種によって異なるが、小型船舶で約40%、1,000GTクラスで約10%の軽量化が見込める。
(2) 防火関係の規定強化(スプリンクラの設置等)による重量増加は、高速旅客船で軽荷重量の10%程度と予想され、これの軽量化を図ることは効果が大きい。
(3) 船舶全体の軽量化効果に対しては、船殻の寄与度が最も大きい。これは、船殻が船舶全体に占める重量比が大きいためであるが、艤装や舶用機器の中でもハッチカバー、配管、主機等は比較的重量比が大きく、その軽量化は重要である。
 以上のように本事業では、船舶を船殻、艤装、舶用機器に分割し、それぞれの分野に関し、軽量化手法及び軽量化技術について検討し、種々の船舶についての軽量化効果を試算した。これらにより、造船業界の永遠不変の課題である軽量化技術の重要性が再認識され、また軽量化技術の開発が推進し、造船技術の振興及び我が国造船業の発展に大きく貢献するものと思われる。





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