(1) 水槽試験 a. タンカー船型テスト 模型船無線制御装置を製作し、SR196船型2.5m模型船を対象として、修正法の精度検証のために実際の試運転状態に最も近い完全自由航走時の波浪中船速低下量を計測した。 b. 肥大船型斜波中テスト VLCCの4.5m自航模型船を用いて、短波長斜め規則波中での運動と航跡(速度、方位角)を計測し、コンテナ船型との船型差の影響を調査した。 c. 斜波中抵抗増加試験 SR196船型2.5m模型船について、すでに実施された斜波中の抵抗増加の理論計算の妥当性を検討するために、抵抗増加量を計測し、理論計算結果と比較検討した。 d. 確率論的実証試験 試運転時の船速の保証限界を決めるために必要な計測時間のとり方を理論的に検討し、SR196船型について試運転海域での1マイル間の計測で予想される船速低下の推定範囲を計算し、速力試運転を不規則波中で行った場合の修正量の大きさと精度を明らかにした。 (2) 理論による推定法 a. 波浪中航走時力学モデル これまで検討してきた波浪中航走時の力学モデルにおいて、修正法を確立するという立場から、修正法の適用限界をこのモデルによりシミュレーション計算し、操舵、横運動、横流れ低抗等の検討を行った。 b. 定常力の計算法 長波長斜め規則波中の抵抗増加の計算法のうち従来の方法について検討し、SR196船型の実験値との比較によって海象及び載荷状態の相異による推定精度を調べた。ユニファイド・セオリーについては斜波中の低抗増加及び定常横力の計算法を確立した。また、短波長時の抵抗増加の計算法を検討した。 c. 船速低下推定法 a.及びb.を総合した船速低下推定法の改良をし、試計算を実施した。 (3) 修正法の精度向上と実用化 a. 修正法の構築 プロトタイプをもとに、実験・理論の成果を反映した修正法を構築し、汎用性を高めるために計測の実施法、適用限界、修正の実施法等に関する波浪影響を含む速力試運転解析マニュアルを作成した。 b. 精度の検証 実船での実施例、水槽試験計測結果との比較等を行って構築した波浪影響修正法の精度を確認した。 抵抗増加・船速低下に及ぼす各要因について、現状の推定精度を明確にするため、船型差等による影響を調査した。 c. フォーマットの作成 船上でのパソコンによる修正計算プログラムを作成するとともに、修正量推定のための速力試運転解析法及びその解説書を作成した。
■事業の成果