
■事業の内容
(1) 図面化による検討 平成3年度に実施した国内19隻海洋調査船の各種観測機能、設備等についての調査に基づいて、2,000t及び500t型の海洋観測船を想定して、観測設備・機器の適性配置についての案を作成し、作業部会、委員会に於いて次のような審議・検討を行った。 [1] 観測作業、機材庫、観測室等のスペースを充分に確保するためには、観測設備の配置を合理化する必要がある。 [2] 観測船はローリング、ピッチングを最小にするため減揺タンク、フィンスタビライザーの導入が必要である。 [3] 保針性・定位性についてはDPSと近年開発されたシリング舵システムの導入により相当の向上が期待できる。 [4] 観測舷を低くすることが観測作業上必要であるが、船体の耐波性との関係から大型船で3m、中・小型船では2mが限界との結論に達した。 [5] 観測機器として音響を使用するものが増加してきている。このため船体から発生する音響雑音を低レベルに抑制する設計上の配慮が必要である。 [6] CTD、採水、採泥等はワイヤーの推進翼や舵への絡みを避けるため舷側での作業が適している。 係留系の設置及び揚収は広い作業スペースを必要とするため、船橋前の甲板又は後部甲板が適している。 [7] ギャロス等の観測中間設備は、機材庫に極力接近させて配置することが好ましい。 [8] 観測作業の監視には現在使用されているビデオカメラに加えて、双方向同時通話が可能な電話機の使用が必要である。 以上の検討内容を元に、後部作業甲板を主体とする観測施設及び運航施設の後部甲板配置図を縮尺1/50で作成した。 (2) 実験用モデル巻揚機の設計・試作 従来の巻揚機は電動によるものが主導であり、大型の機種が多く、作業甲板に占める割合が高く、観測作業上の取り扱いや、作業能率に問題があり、また巻揚機に高度の制御機能を付加する必要があった。 平成4年度は、小型軽量で高度の制御機能を有し、原寸の1/2をめどにしたモデル巻揚機を試作することとし、作業部会、委員会で審議、検討した結果、次のような巻揚機を設計・試作した。 [1] 巻揚機の小型軽量化を図るため、歯車機構を必要とせずドラムに直結することができ、瞬時巻揚げ、繰り出しの切り替え動作ができる低速高トルク形のロータリ式油圧モータを採用した。 [2] 水中の観測機器に与える船体上下動の影響を、ワイヤの繰り出し、巻き込みにより軽減する。 [3] あらかじめ指定した線長までの自動運転を行い、自動停止をする。 [4] あらかじめ設定した線速によりウインチを運転し、スタート及びストップを緩やかかつ滑らかに行う。 [5] 制御機能の各種センサの検出には線長、線速計としてロータリー・エンコーダを使用し、光パルスを電気信号に換え演算回路を経て線長及び線速として表示する。 [6] 圧力計は、歪ゲージ式圧力変換器及びアンプにより遠隔表示を行いアナログ出力も可能とする。 [7] 油圧モータの油圧の制御には低速時の制御が安定している電磁比例式流量制御弁とコントローラの組み合わせを採用した。 試作したモデル巻揚機の制御機能に関する工場試験では、サイン波、方形波、三角波についての巻揚機の追従性がテストされた。巻揚機及び油圧機器の機械的応答性は非常に良好であることが判明した。 今後は、海上に於ける船体の波浪による上下動に合わせた巻揚機の制御機能の追従性を更に実験によって確認する必要がある。
■事業の成果
本調査により、海洋調査船の建造に必要となる観測設備の適性配置の基本事項が明らかとなり、報告書の原稿として取りまとめることができた。後部甲板の部分的配置図は縮尺1/50で、全体の一般配置図はまた縮尺1/200で2,000t及び500t型の海洋調査船の観測設備等の配置図を作成した。 一方において、小型軽量で高度の制御機能を有する新型モデル巻揚機の開発を行ったことにより、海洋観測船の作業甲板の有効利用が可能となり、作業能率と安全性が向上し、その上、高精度の観測が期待できるものと思われる。
|

|