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■事業の内容

(1) アジア、アフリカ等におけるらい対策研究及び援助
[1] 技術者研修
a. 海外技術者研修(笹川財団フェローシップ及びスカラーシップ)
(a) 研修場所
日本国内:東京、京都、大阪、沖縄、熊本等にあるらい関係施設並びに他の医療機関及び研究施設
日本国外:中国、フィリピン、インドネシア、インド、タイ、エチオピア等及び欧米のらい関係、一般医療関係諸施設及び医科大学、その他の研究研修諸機関
(b) 研修期間  2週間〜12ヵ月(平均30日)
(c) 研修人員  44名
対象  イ. フェローシップ
医師、研究者、看護婦、技術者等らい管理及び研究、研修従事者 44名
インドネシア、タイ、ミャンマー、フィリピン、中国、ナイジェリア、マレーシア、パキスタン、アメリカ、日本
ロ. スカラーシップ
現地大学及び高校における教育
らい患者の子弟  20名
(実施に当たっては各国よりの要請に基づき、優先順位の高いものから選考した。)
(d) 研修内容  イ. らいの診断、分類、治療法等の臨床的研修
ロ. らいの細菌学、病理学、免疫学等の基礎研修
ハ. らいの免疫学及び管理全般に関する研修
ニ. らい菌培養、動物移植、病理組織、電子顕微鏡、検査等の研究技術の習得
ホ. らいの看護及び保健衛生教育に関する研修
へ. らい従事者のトレーニングに関する研修
ト. 学位及び専門分野免許証等の取得のための学習
チ. らい患者子弟の中等、高等教育
b. 海外専門家技術者研修
(a) インドネシア国内セミナー
 インドネシア全国におけるらいのコントロール専門家、専門医及びMDT(らい複合療法)実施従事者を対象とし、当財団が推進しているMDT対象患者に対する管理並びにモニタリングの実地研修を行い、実践を通じてマンパワー育成を図りMDTを総合的に強化することを目的としたセミナーを開催した。
イ. 開催場所  ジャカルタ、その他MDT実施地域
ロ. 研修期間  平成4年4月〜平成5年3月
ハ. 参加人員  県、地区レベルのらい専門家   55名
保健所レベルのらい関係者  1,935名
らい従事者          935名
保健所スタッフ        105名
地区らい監督官         10名
ニ. 研修内容  (イ) MDT対象患者管理、モニタリング
(ロ) MDT実施強化に伴うらい管理上の問題点とその対策
(ハ) MDTの実施方法について
(b) 中国国内セミナー
 1985年以降、全国的にらい複合療法を展開してきた中国は、多くの地域で基本的ならい根絶目標を達成し、公衆衛生上の問題としてのらい対策は最後の段階を迎えている。しかしながら、治らい薬の出現によりらいは完治しても様々の障害を残している人々が多く、治療中の患者を含め、らい対策は新たな展開を要求されたため障害の治療と予防、社会復帰等、中国の実情に即したらいリハビリテーションの展開を図る目的で本セミナーが開催された。
イ. 開催場所  江蘇省 蘇州市
ロ. 研修期間  平成4年10月6日〜10月9日
ハ. 参加人員  中国国内専門家  93名
ニ. 討議日程  (イ) 専門家講演
(ロ) 中国におけるらいリハビリテーション対策についての紹介
(ハ) らいリハビリテーションの技術的問題点について
c. 専門家技術者研修
 この研修は、将来海外医療協力の実施を期待される専門家(医師、技術者、看護婦等)を対象として海外での医療協力の在り方について実地に学んでもらうもので、以下のとおり実施した。
(a) 医学生対象
イ. 名称    第16回らい医学夏期大学講座
ロ. 研修場所  東京・国立療養所多摩全生園、国立多摩研究所
ハ. 研修期間  平成4年8月24日〜29日(6日間)
ニ. 講師    国立療養所、研究所、大学のらい専門家
ホ. 研修人員  計46名(医学生31名、医師7名、その他8名)
へ. 研修内容(イ) らい医学の現状について
(ロ) らいの治療について
(ハ) らいに関する諸研究の現状について
(ニ) らいの国際医療協力について
d. らいに関する教材の開発及び供与
(a) らい蔓延各国に適する教材の作成及び配布
イ. 使用目的   らいの教材の不足している発展途上国に対し、らいに関する教材を印刷した。
ロ. 教材の内容  MDT実施用教材、他らい関連教材
ハ. 利用者    発展途上国において、らいの医療に従事する職員及び一般保健医療従事者
(b) 世界各国に現存するらい関係教材の収集及び整理
世界的にらい教材として顕著な書籍を購入した。
[2] 現地技術協力
a. アジア、アフリカ等における技術協力
 実際にマンパワーの不足している発展途上国に、わが国の優れた専門家を派遣して、現地で指導・研修を行った。また、受入れ側国のニーズによっては海外からの専門家を派遣したケースもあった。
(a) 派遣国   タイ(6名)、ベトナム(5名)、中国(1名)、韓国(6名)
(b) 派遣期間  2週間〜12ヵ月(平均30日間)
(c) 派遣人員  計18名
(d) 派遣内容  イ. らいの診断、治療、予防法等の臨床技術指導及び協力
ロ. 薬品投与の指導及び協力
ハ. らいの看護、検査、リハビリテーションの指導及び協力
ニ. らい患者調査及び統計作成の指導及び協力
ホ. らいに関する諸研究(動物接種、ワクチン開発を含む)の技術指導及び協力
ヘ. らい患者の歯科治療及び現地歯科医師の技術指導
[3] WHO,ILEP専らい関係諸機関との協議、連絡及び調整
a. WHO,ILEP及び海外救らい団体等との協議、連絡
(a) 調査場所   スイス、イギリス等ヨーロッパ、アジア、アメリカ
(b) 協議期間   平均10日間
(c) 派遣人員   7名
(d) 協議調査内容 イ. WHO等当財団のらい対策事業の関連についての協議
ロ. ILEP本都及び参加諸団体との協力に関しての協議
ハ. 海外諸国におけるらい管理対策の調査研究
ニ. 当財団の事業を円滑に推進するための協力方法等の調査研究
[4] らいに関する基礎及び実地研究
a. らいの化学療法に関する国際共同研究(実施国:タイ)
(a) 実施場所  ラシ・プラチャ・サマサイらい研究所(バンコク)
プラパダンらい療養所(バンコク)
ノンソンブンらい療養所(コンケーン)
その他の地域保健センター
(b) 研究内容
イ. 研究課題   オフロキサシンのらいに対する治療効果の研究
ロ. 対象患者数  90人
ハ. 研究方法   対象患者を下記の3つのグループにわけ、治療効果を調べた。
Group1. BIのmaxが4以上の未治療の患者にOFLOを投与し、その殺菌効果判定のためbiopsyを行い、続いてMDTによる治療を行う。
Group2. Paucibacillaryの患者を対象とし、Rifampicinに過敏な患者にOFLOがREPの代用となるか否かを調べる。
Group3. Multibacillaryの患者を対象に、OFLOがREPの代用になるか、WHOのMDTにOFLOを加えた時の添加効果、OFLOがLampreneの代用になるかの3点を調べる。
ニ. 実施責任者  タイ国:Dr.Charoon Pirayavaraporn
(タイ保健省伝染病予防局らい課長)
日本:伊藤利根太郎博士
(当財団理事・大阪大学名誉教授)
b. 化学療法共同研究連営委員会
(a) 開催名称  平成4年度化学療法共同研究運営委員会
(b) 開催場所  東京
(c) 開催期間  平成4年6月12日
(d) 参加人員  13名
タイ(7名)  Dr. Teera Ramasoota
Dr. Bantao Uekul
Dr. Charoon Pirayavaraporn
Dr. Prasert Sampoonachot
Dr. Somchai Peerapakorn
Mr. Sathian YovaPue
Mrs. Punthip Ramasoota
日本(6名)  大阪大学名誉教授 伊藤利根太郎
常務理事     湯浅  洋
理事       鶴崎 澄則
名誉理事長    石館 守三
理事       阿部 正英
前財団科学顧問  今村  博
(d) 開催内容  イ. 研究の進捗状況について
(イ) 多菌性らい患者に対するオフオキサシンを用いたらいの複合療法について
(ロ) PCR(遺伝子複製反応)を用いたらいの早期診断法について
ロ. 研究組織の確立について
ハ. 日本らい専門家の研究協力について
[5] 薬品機材供与
a. アジア、アフリカ等に対する薬品供与
 近年当財団が、強化しているらい複合療法(MDT)をさらに推進し、らい根絶のためにMDT案施国を中心に治らい薬の供与を行った。
(a) 対象国  フィリピン、ブラジル、ミャンマー、インドネシア、ネパール
[6] らいに関する広報啓蒙活動
a. パンフレットの作成
 近年らい複合療法(MDT)を強力に推進しているインドネシアにおける啓蒙用パンフレット及びポスターを作成した。
b. らい関係教材の購入及び配布
 既に外国で製作されているらいに関する図書を購入し、一部は財団用として保管し、他は国内、国外関係者に提供した。
[7] らい複合療法(MDT)に関する国際会議
 WHO西太平洋地域事務局(WPRO)所属国におけるらい複合療法(MDT)の実施状況と将来の計画を検討した。
a. 開催期間  平成4年6月23日〜26日  4日間
b. 開催場所  フィリピン・マニラ WHO西太平洋事務局
c. 参加人員  44名
(a) WHO西太平洋地域所属国専門家
米領サモア(1名)、才一ストラリア(1名)、中国(2名)、カンボジア(2名)、クック諸島(1名)、フィジー(1名)、仏領ポリネシア(1名)、グアム(1名)、バヌアツ(1名)、香港(1名)、マレーシア(1名)、マーシャル諸島(1名)、マカオ(1名)、ミクロネシア(2名)、フィリピン(2名)、ニューカレドニア(2名)、パラオ(1名)、トンガ(1名)、韓国(2名)、パプアニューギニア(1名)、ラオス(2名)、シンガポール(1名)、ソロモン諸島(1名)、西サモア(1名)、ベトナム(2名)
(b) コンサルタント
米国(1名)
(c) アドバイザー
中国(1名)、韓国(1名)、インド(1名)、米国(1名)、
シンガポール(1名)
(d) オブザーバー
フィリピン救らい協会(1名)、世界救らい団体連合(1名)、米国救らい協会(1名)
(e) セクレタリー
WHO本部(1名)、WHO西太平洋地域事務局(1名)
d. 討議内容
(a) 地域内におけるMDT実施状態を再調査することについて
(b) 全地域のらい患者減少数の観点から新しい優先順位を定めることについて
(2) アジア、アフリカ等における寄生虫症対策研究及び援助
[1] 技術者研修
a. 日中寄生虫予防研修(於:日本)
 中国において、未だに高率に蔓延している回虫や鉤虫などの腸管寄生虫の予防に関し、戦後わが国で行い、著しい成功をおさめた寄生虫予防の諸経験を伝えるため、中国の行政または民間組織の専門家を招き、予防対策の実践方法につき、幹部指導者として研修を行った。
(a) 財団法人日本寄生虫予防会に委託
イ. 研修場所  東京、福島
ロ. 研修期間  平成4年6月30日〜7月11日  12日間
ハ. 研修人員  中国6名
ニ. 研修内容  (イ) 回虫、鉤虫など土壌伝播寄生虫に関する学術知識の修得
(ロ) 集団検査、集団駆虫など効果的な寄生虫予防対策の実施方法並びに衛生教育の波及効果について
(ハ) 他の公衆衛生活動との連携によるより効果的な実施方法の検討
(b) 筑波大学〔医学教室〕に委託
イ. 研修場所  筑波大学、東大医科学研究所等
ロ. 研修期間  平成4年10月6日〜31日  26日間
ハ. 研修人員  中国2名
ニ. 研修内容  (イ) 殺貝剤の室内評価方法の修得
(ロ) 日本住血吸虫の免疫学的解析方法の修得
b. 海外寄生虫技術者研修(於:タイ)
 東南アジア諸国の寄生虫予防対策の発展向上に資するため、各国の行政、民間機関の寄生虫対策担当者をタイ国に集め、予防対策に関する学術的、技術的知識の習得を図り、さらに各国間の経験交流を通じて、より効果的な実施方法の検討を行い、幹部指導者養成のため、研修を行った。
(a) 研修場所  バンコク マヒドン大学熱帯医学部、公衆衛生学部、人口地域開発協会本部
ナコンシタラマ県 南部地域研修センター
(b) 研修期間  平成4年11月9日〜21日  13日間
(c) 研修人員  ブータン(2名)、ネパール(3名)、ラオス(2名)、カンボジア(2名)、インドネシア(3名)、マレーシア(1名)、フィリピン(3名)、スリランカ(3名)、ベトナム(2名)、タイ(6名)  計10ヶ国 27名
(d) 研修内容
イ. 各国における土壌伝播寄生虫防除のための技術訓練
ロ. 他の公衆衛生活動との連携による効果的な寄生虫予防実践方法の検討
ハ. 地域フィールドにおける実践活動に即した伝達講習システムの検討
(e) 研修方法
イ. バンコク市マヒドール大学等において寄生虫学、公衆衛生学、生理学などの講義、実技訓練
ロ. タイ家族計画・地域開発協会における講義討論
ハ. タイ地方地域における寄生虫予防、家族計画実験プロジェクト見学による実践教育
[2] 現地技術協力
a. アジア、アフリカ等における技術協力
(a) 派遣国   中央アフリカ、中国、タイ、フィリピン
(b) 派遣期間  約25日間
(c) 派遣人員  中央アフリカ(5名)、中国(4名)、タイ(4名)、フィリピン(4名) 計17名
(d) 派遣内容  イ. 寄生虫(フィラリア、住血吸虫等)僕滅対策の援助及び技術協力
ロ. 寄生虫症の疫学的研究及び防除対策指導
ハ. 薬剤を用いた寄生虫対策モデル実験及び指導
ニ. 中国における寄生虫症対策研究の指導
[3] 薬品機材供与
a. アジア、アフリカ等に対する薬品機材供与
寄生虫症対策に必要な医療関連物品を供与した。
(a) 対象国  中央アフリカ、フィリピン
(b) 品目   プラジカンテル、コンバントリン、プラントンコンパス、タイプライター、顕微鏡など
■事業の成果

らい根絶を目指して当財団は、設立以来19年間、医療分野における国際協力を推進し、今世紀中に公衆衛生上危害を及ぼさない疾病にするというWHOの目標宣言の一端を担って来たため、その実現も間近になって来ている。このような情勢下、当財団は複合療法(MDT)を一層積極的に強化推進するため治らい薬の供与、保健要員のトレーニング等をWHOその他の団体と連携をとりつつ全世界的規模にて実施した。同時に、複合療法実施を徹底させるため、海外のらい蔓延国の指導者を中心とする国際会議を開催し、らいの早期解決の実現に努力した。また、寄生虫症対策も新しいニーズに対応できるよう、マンパワーの育成のための研修、現地における技術指導、必要な薬品・機材の供与等を行ったことは、もって世界における保健衛生の向上に大きく寄与するところ大なるものがあると思われる。





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