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■事業の内容

〔東北地区〕
(1) 全国及び東北地区における漁業の将来展望と漁船造修需要の予測
 農林水産庁統計、担当者インタビュー、既存資料を利用して、将来の全国漁種別漁獲量の予測を実施し、この予測結果を基に将来の漁種別漁船船腹量の予測を行った。又、現在、全国で稼働中の漁船について、今後船舶の造修としてあがってくる漁種別漁船造修量の予測を行い、その結果から東北地区シェアにおける漁種別漁船造修量の需要予測を行うとともに、漁船の造修分野において今後比較的需要が見込めるかつお、まぐろ船に注目し、現在、当該船舶の建造需要の東北地区管外流出分の内から需要を取り込んだ場合の3ケースについて、それぞれ検討を行った。

(2) 全国及び東北地区における内航貨物輸送の将来展望と内航貨物船造修需要の予測
 運輸省各種統計資料、海造審答申、業界インタビュー、その他既存資料を活用して、全国の内航貨物船新造需要予測を行うとともに、東北地区造船所が今後、内航貨物船新造需要を取り込むため、[1]東北地区の貨物船オーナーによって東北管外に発注される内航貨物船需要[2]東北地区内に発着する内航貨物船需要[3]東北、北海道地区内に発着する内航貨物船需要の3つの潜在需要を想定して需要予測を行った。

(3) 東北地区の旅客船造修需要予測
 運輸省各種統計資料、海造審答申、業界インタビュー、その他既存資料を活用して、東北地区造船所が今後、旅客船造修需要を取り込むため、[1]東北地区の旅客船オーナーによって東北管外に発注される内航貨物船需要 [2]東北地区内に発着する内航貨物船需要 [3]東北、北海道地区内に発着する旅客船需要の3つの潜在需要を想定して需要予測を行った。

(4) 東北地区造船企業の課題と今後の方策
 上記(1)〜(3)までの需要予測等、調査結果及び東北地区造船企業、東北地区造船関連工業企業、東北地区貨物船オーナー、東北地区漁業関係者等のインタビューをもとに、漁船以外の船種造修分野へ進出するにあたっての個々の地域における課題の抽出、市場参入経路、及びその手順について、東北地区造船企業の強み・弱み等を踏まえながら検討を行った。

〔神戸地区〕
(1) 兵庫県小規模造船業の今後の需要動向の把握
 管内造船関係事業者50社に対して、平成4年8月〜9月にかけてアンケート調査を実施し、この集計結果の分析及びインタビュー、業界統計の分析により、兵庫県小規模造船業に関する需要動向、市場環境を分析・展望し、問題点、課題を明らかにした。

(2) 兵庫県小規模造船業の経営力・生産技術力の評価及び課題整理
 アンケート調査、インタビュー、各種調査資科により、兵庫県小規模造船業の建造実績、設備投資動向、業績動向を把握し、その問題点と課題を明らかにした。

(3) 兵庫県小規模造船業の労働力不足状況及び就業環境の実態と問題点・課題の整理
 アンケート調査、インタビュー、各種調査資料により、兵庫県小規模造船業の労働力過不足状況、労働力不足の職種、採用実態、労働力不足要因、労働力不足への対応策について、特に、労働力不足の重大な要因としての就労環境の現状と問題点を明らかにしつつ、検討を行った。

(4) 兵庫県小規模造船業の環境整備策の検討
 兵庫県小規模造船業における今後の需要動向、経営力・生産技術力の評価及び課題整理、労働力不足状況及び就業環境の実態把握と問題点・課題の整理のそれぞれの検討結果及び先進造船会社の事例を踏まえ、就労環境の改善や生産技術面での改善の目的等に応じた検討を行った。

(5) 環境整備策の効果と実施上の問題点・課題
 就労環境の整備策の実施に伴う効果を明らかにするとともに、整備のために要求される投資額の水準を示し、整備策実施のフィージビリティーの検討を行った。合わせて、中小造船業における就労環境整備に伴う障害と問題点を明らかにし、就労環境整備実現のための条件と課題を明示した。

(6) 兵庫県小規模造船業の経営基盤強化に関する提言
 以上の検討結果を踏まえ、労働力不足への対応や生産性の向上を目指した就労環境整備のあり方を提案するとともに、将来の兵庫県小規模造船業をめぐる需要動向、需要構造、競争条件等の変化に対応した中長期的な視点からの経営基盤強化のあり方の提言を行った。

〔四国地区〕
(1) 四国地区造船業の市場構造と経営動向の把握
 四国地区造船業の企業数、建造能力(実績)、日本全体に占める建造量のウェイト、業績等を各種統計資料及び造船会社、協力会社を対象としたアンケート調査(回収造船会社68社、協力会社101社)結果より把握し、特徴及び問題点を明らかにした。

(2) 四国地区造船業の雇用実態と労働力不足の実態把握
 上記アンケート調査、インタビュー調査をもとに、四国地区造船業の雇用実態を職種別、男女別、社内工、協力工、年齢構成等の分類によって整理し、特徴と問題点の把握を行った。また、労働力不足の実態を全般的な状況及び職種別に把握するとともに、労働力不足による影響とその対応状況を明らかにした。

(3) 四国地区造船業の作業環境に係わる問題点の調査及び対応策の検討
 上記アンケート調査及び造船会社インタビュー(21社)により、四国地区造船業の作業環境の実情把握とその評価を行い、環境整備の方向性(整備場所、改善すべき作業内容、投資内容等)の提示を行った。また、種々の環境整備を実施するに際しての障害や実施上の課題を明らかにした。

(4) 作業環境改善に係わる研究開発成果の取り組みに関する検討
 大手造船所による作業環境改善の事例調査の分析を行うとともに、中小造船所へ導入が困難な改善策に関して、小型化、機能化等の様々な改善の工夫を行った。

(5) 造船所のイメージの実態把握とイメージアップの検討
 造船所、船舶のイメージの実態及びイメージが造船業への就業意欲等に及ぼす影響を把握し、強調するイメージについて明確にし、造船所のイメージアップの実現へ向けての検討を行った。

(6) 四国地区造船業の作業環境改善、イメージアップのための提言
 上記の検討結果を踏まえ、労働力不足の対応策として作業環境改善とイメージアップのための方策を検討し、同時に方策を実施するにあたっての課題の抽出を行うとともに、対外的なPR活動の内容検討を行った。

(7) 説明会の開催
[1] 高松地区
日時   平成5年3月9日
場所   四国運輸局朝日町庁舎
出席者  管内造船所及び関連工業事業者
[2] 徳島地区
日時   平成5年3月10日
場所   四国運輸局徳島海運支局
出席者  管内造船所及び関連工業事業者
[3] 今治地区
日時   平成5年3月12日
場所   四国運輸局今治海運支局
出席者  管内造船所及び関連工業事業者

〔中国地区〕
(1) 中国地区鋳物工場の現状について
 中国地区の鋳物工場の現状を把握するため、同地区内において平均的な工場を数カ所抽出し、企業規模、従業員の年齢構成、生産性など、経営活動の実態の把握を行った。特に、若年者の雇用難を実証する指標として、従業員の平均年齢を工場ごとに示し、従業員の高齢化の現状把握を行うとともに、鋳物の製造工程における作業環境を害する粉塵、騒音および高熱の発生状況を把握するため、工程ごとの作業内容の把握、環境阻害要因の摘出を行った。また、対象工場の生産設備における機械化、自動化の状況について調査を行った。

(2) 中国地区鋳物工場の現状評価について
 調査対象工場の作業環境評価の客観性を高めるため、10項目を設定して各工場ごとの評価を行い、作業環境の状態に応じて3ランクの評価わけを行った。また、舶用関連の鋳物工場の特質として、多品種少量生産があげられるが、製造工程の合理化を図る上で、内在する多くの課題の解決が必要不可欠であることから、その課題解決の指針ともなる各製造工程における問題点の検討を行い、合理化を達成した鋳物業界の実例を参考に、今後の合理化へ向けての取り組み方の検討を行った。

(3) 中国地区鋳物工場の作業環境改善と近代化について
 鋳物工場の作業環境改善のために、作業環境の汚染の原因となっている各製造工程における粉塵、騒音等の抑制について、溶解、型ばらし、仕上げの各工程を対象に具体的な工程改善方策の検討を行い、さらに、鋳物製造の全工程について、機械化、省力化の可能性の検討を行った。
■事業の成果

造船産業が今後健全にかつ長期にわたり発展するためには、技術開発の促進、船舶需要の喚起、新たな海洋事業分野への転換を図るのはもちろんのこと、良質な労働力をバランスよく確保していく体制を整備する等、活性化対策を講じることが強く求められている。
 このため本事業により地域造船業活性化のための調査研究を実施し、地域の造船産業構造の実態に即して考えることにより、地域造船業の経営実態、労働力不足の現状及び作業環境の実態を把握し、また、環境整備の必要性、緊急性を明確にすることができた。
 これにより、企業の経営の近代化及び安定化に資するものと思われる。





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