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■事業の内容

(1) 人材流動化時代における人材確保、人材活用の現状と将来に関する調査研究
[1] 調査方法
 調査は、アンケート方式により、通信調査及び実地調査によって行った。
[2] 調査対象
全国主要企業 1,019社
[3] 調査項目
a. 新規学卒者の採用の実態と今後の対応
b. 定年延長制度等定年後の再雇用制度
c. 女子職員の再雇用制度
d. 中途採用者の実態
[4] 調査結果の概要
 我が国の経済は、長い好況のあと、今や深刻な先行不透明の中にあり、雇用をとりまく環境も労働需給の逼迫の状況から緩和へと移り、昨今では人手過剰感もかなり出ている状況であり、また一方、長期的基礎的にみれば、高齢化の急速な進展、女性の著しい社会進出、労働力の流動化などに対応して、企業においてもさまざまな施策が実施されている時期に、東京証券取引所第1部上場企業を中心として、これに準ずる企業をも含め1,019社を対象に調査を実施したものである。
 本調査の趣旨を理解し、協力回答が得られた企業は308社(回収率30.2%)で、回答企業の産業別内訳は、製造業が176社(57.1%)で全体の過半数を占め、ついで卸売・小売業の43社(14,0%)、金融・保険業27社(8.8%)、建設業26社(8,4%)等と、また企業規模別内訳は、常勤従業員1,000人〜2,900人の企業が122社(39.6%)と全体の約4割を占め、ついで5,000人以上の企業が71社(23.1%)、999人以下の企業が66社(21.4%)等となっている。
 調査結果は、雇用調整の状況については、雇用過剰の状況にあるとする企業は7.5%、やや過剰であるとする企業は28,6%となっており、合わせて全体の3分の1で過剰が生じている状況にある。過剰企業のその対処方法は、雇用調整を実施した企業は26.1%、雇用調整の計画のある企業が24.3%、雇用調整は未定とする企業は49.6%となっており、雇用調整の内容は、「新規採用の抑制」が最も多く、ついで「配置転換」、「系列会社への出向」、「希望退職の募集」の順となっている。
 人材確保の状況については、平成4年4月の新規学卒者の採用状況は、全体としては前年に比べ「増やした」、「変化なし」、「減らした」とする企業はともに同程度であるが、これを企業規模別にみると大企業ほど採用を減らした割合が大きく、常勤従業員数「5,000人以上」では採用数を増やした企業29.0%に対して減らした企業は42.0%となっている。一方、「1,000人未満」の企業では、大企業とは逆に採用を増やした企業34.4%に対し、減らした企業は25.0%となっており、平成4年度では、大企業で減らし小企業で増やす傾向がみられた。また、ここ数年の採用状況については、「おおむね計画どおり確保できた」企業は62.8%、「計画どおりではないが、毎年必要な人材は最低限確保できた」は20.7%であり、両者を合わせると8割を超え、総じて必要な人材は確保された状況となっている。
 女子従業員の雇用状況については、今後の採用方針は現状と変わらないとする企業がほとんどであり、結婚・育児のため退職した者の再雇用制度のある企業の割合は26.9%となっている。
 高齢者の雇用対策としての定年延長については、現在一律定年制を採る企業(96.4%)のうち94.6%は60歳となっており、さらに定年を延長して「60歳から62〜63歳まで」を検討する企業が9.4%、「62〜63歳から65歳まで」を検討する企業が8.8%となっており、合わせて18%の企業が60歳を超える方向に動いている。
[5] 報告書の作成
a. 部数   600部
b. 配布先  調査協力会社       308部
その他関係省庁及び諸団体 292部
(2) 職場におけるメンタルヘルスの教育、研修の開発に関する研究
[1] 題名  「職場におけるメンタルヘルス」
[2] 規格  1吋マザーテープ及び2分の1吋コピーテープ(VHS)を作成(時間:39分)
[3] 数量マザーテープ 1本
コピーテープ 5組(1組2本(22分、17分))
[4] 内容
a. ストレス社会といわれる今日、職場不適応をおこす動労者が増加しており、これらの現象は人事管理上大きな問題となっている。その解決策の一環として、研修用の教材を開発した。内容は管理職向けに、具体的な事例を用いた。
b. 第1部「ポストの重圧に喘ぐマジメ課長」
 課長に昇進したが、仕事の行き詰まりとポストの重圧に押されとうとう無気力な状態に陥ってしまう新任課長の姿を提示し、専門医が対処すべきポイントを解説する。
c. 第2部「定年を前にして不調に陥った課長」
 定年を翌年に迎える課長が、定年を節目にと自宅購入や再就職を決めてしまいたかったがうまくいかず、心身ともすっかり不調に陥ってしまう。その対応策を専門医が解説する。
■事業の成果

(1) 人材流動化時代における人材確保、人材活用の現状と将来に関する調査研究
 人事管理をとりまく状況としては、基礎的な流れとして高学歴化、技術革新、雇用の多様化、高年齢化など多くの重要な変化があり、企業においても将来それらに対して制度の運用を行ってきているが、その対処の仕方は人員構成や職種等によりそれぞれ異なっている。また、現在、景気の深刻な低迷を背景に、労働需給の動向は緩和に陥りつつある中で、一部にかなりな人手過剰感も出ており、雇用調整の動きが広がりつつある。
 しかし一方、長期にみれば労働力人口の減少が遠望されていて、今後一層高年齢者や女性の労働力の活用が重要な課題となると思われ、人事管理においても雇用や勤務条件等において柔軟な対応がもとめられると考えられる。
 本調査は、以上のような認識の下に、現在の企業における人材確保、人材活用施策について、その現状と将来の方向を把握することを目的に実施したものである。
 この結果、企業における人材確保及び人材活用施策の現状と高齢化社会への将来の対応等について、貴重な資料、情報が数多く得られた。これらの資料は、厳しい条件の下で人事管理の業務に絶えず努力している企業及び公務部門の方々に役立つものと思われる。
(2) 職場におけるメンタルヘルスの教育、研修の開発に関する研究
 企業や官公庁などの職場で発生した場合のメンタルヘルス問題は、身体の病気の場合とは異なり、その対応に苦慮しているのが実状で、その殆どの原因は、メンタルヘルスに対する誤解や偏見が根強くあるためといわれ、その解決のためには、職員に対し、特に部下を持つ管理職に対する教育が最も基本的な対策であると指摘されている。
 本事業は、これらのニーズに応え、職場における福祉の増進と人材の有効活用に資するため、職場内の研修用教材として、具体的事例を提示する「ビデオ」を作成したもので、係長や課長の管理職研修用及び一般職員への啓蒙用として、官民各職場の利用に供される。





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