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■事業の内容

(1) 化審法による試験
 第1次候補防汚剤については、前年度の試験結果に基づいて情報が不足している3検体の反復投与毒性試験、2検体の濃縮性予測試験、1検体の染色体異常試験を昨年度と同様、日本化学品検査協会に委託して化審法による試験を実施した。また、第2次候補7種類についても同協会に委託し、データベース検索により、安全性を確認し絞り込みの上、計画の一部を変更し、5検体の復帰変異試験、5検体の濃縮性予測試験、及び7検体の染色体異常試験を行った。
(担当場所:中国塗料)

(2) 塗料中の防汚剤の溶出分解性の研究
[1] 中層、底層水域での分解をモデル化した試行実験
 実験装置の要件を検討し、実験装置を製作した。また、実験に用いる海水に関して、採取予定水域(東京湾木更津沖)の海水水質指標(懸濁物濃度、有機炭素濃度等)を調査した。
 実験はこの海水を用い、通気の有無、滅菌の有無を条件として、防汚物質(TPN及びTBT)の海水中残存量の経時変化を求めた。
(担当場所:船舶技術研究所)

(3) 防汚性の研究
[1] 前年度第1次海中浸漬試験の追跡調査
 前年度提案(第1次)の新規防汚剤(14種類)を配合して試作した供試防汚塗料(26種類)と比較のためのブランク板等5枚、合計31枚の塗装試験板について、所定の各海域で海中浸漬試験6ケ月後、9ケ月後及び12ケ月後の塗膜状態を観察した。
[2] 第1次候補品の後期海中浸漬試験
 第1次候補防汚剤の中から10種類の防汚剤などから成る供試防汚塗料(14種類)を後期海中浸漬試験として所定の各海域に浸漬し、3ケ月後及び6ケ月後の塗膜状態を観察した。
[3] 第2次候補品の海中浸漬試験
 第2次候補防汚剤(7種)などから成る供試防汚塗料(18種)の塗装試験板を所定の各海域に浸漬し、1ケ月後及び3ケ月後の塗膜状態を観察した。
(担当場所:日立造船、川崎重工業、石川島播磨重工業)
■事業の成果

船底防汚剤については、従来有機錫化合物が主流をなして来たが、これら防汚剤の環境残留性が問題化し、トリフェニル錫化合物トリブチル錫化合物共に『化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律』(化審法)によって第2種特定化学物質に指定され、その使用が厳しく規制されるに至った。
 このため塗料業界では、有機錫化合物に代わるより安全な防汚剤の開発に力を注いでいる。これら新規防汚剤は化審法上、いずれも既存化学物質であるが、農薬に類似する物質であるため、環境残留性や塗装作業での安全性について十分調査しておく必要がある。これらの調査結果を公的機関で検証し、各界の有識者の判断を得て、初めて造船、海運業界で安心して使用することができる。
 本研究は化審法に準拠した毒性・環境残留性等の試験、海水中に溶出する物質の挙動の把握試験、及び海水中浸漬試験を行い、安全性と防汚性を確認することを目的とする3年計画の第2年度の研究であり、以下の成果が得られた。
 化審法対応試験については、候補防汚剤が多数提案され、それらのデータ情報も多数得られたが、安全性を評価するために基本的に必要なデータを収集するため、できるだけ広範囲に試験を実施し、合計29件のデータを化審法対応試験の安全性評価基準はまだ存在しないので、本研究会独自の方法を設定し、有機錫化合物を比較対象物質として評価を行った。
 また、新規防汚剤の溶出、分解性の研究については、中、底層海水中における分解性を前年度と同じ物質(TBT及びTPN)について試験を行った。
 塗料の防汚性については、全国11箇所で海水中浸漬試験を行っているが、現在までの結果では、いずれの防汚剤剤も動物・植物ともに亜酸化銅併用系に効果がみられ、また、防汚剤単独系でも程度の差はあれ、いずれも効果が認められる。
 従って今後更に研究が進むにつれて、有機錫にかわる優れた防汚剤が選定できるものと思料される。





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