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■事業の内容

[1] 国際規則と船舶設計等との関連に関する調査研究
a. 国際規則と船舶設計等との関連調査
(a) 国際競則に対するわが国の意見の取りまとめ及び提案資料の作成
 海上人命安全条約、国際満載喫水線条約、海洋汚染防止条約等に関連するIMO(国際海事機関)海上安全委員会(MSC)、海洋環境保護委員会(MEPC)及び関連各小委員会の資料、それらに対する各国の提案及びコメント、各船級協会の資料等をもとに検討を行い、わが国の意見及び提案資料を作成した。
(b) 上記国際条約・規則等を国内法に取り入れるに際しての問題点の検討を行った。
b. 国際規則と船舶設計等との関連のための調査及び試験
 IMO海上安全委員会(MSC)、復原性・満載喫水線・漁船の安全小委員会(SLF)、救命・捜索救助小委員会(LSR)、無線通信小委員会(COM)、防火小委員会(FP)、設計設備小委員会(DE)、航行安全小委員会(NAV)、コンテナ貨物小委員会(BC)、及び海洋環境保護委員会(MEPC)等、各委員会における審議の推進、並びに各種規則に関連して、次の調査及び試験を行った。
(a) 1966年国際満載喫水線条約の見直し
(b) 退船システムの評価に関する調査(船舶艤装品研究所)
(c) イマージョンスーツ(ウェットタイプ)に関する調査
(d) 国内用極軌道衛星系EPIRBの性能要件に関する試験
(船舶艤装品研究所)
(e) 船舶内装材料の発煙性試験方法に関する試験(船舶艤装品研究所)
(f) 標準火災試験方法に関する試験-仕切りの煙保全性と煙の測定方法-
(g) 燃焼ガス毒性評価方法に関する調査(船舶艤装品研究所)
(h) プラスチックパイプの燃焼性試験方法に関する試験(船舶艤装品研究所〕
(i) タンカーのタンクヘの火炎侵入防止装置の国際共同試験
(S&O財団筑波研究所)
(j) 火災時に発生する煙の制御方法に関する試験(船舶艤装品研究所)
(k) 船舶の操縦性基準に関する研究
(l) 高速船の国際基準に関する研究
(m) 新世代衝突予防システムに関する検討(船舶艤装品研究所)
(n) 有害固体ばら積貨物による海洋汚染防止に関する試験
(S&0財団筑波研究所)
(o) 船舶からの海上大量流出油対策に関する調査研究(船舶技術研究所)
(p) ばら積み貨物の安全輸送に関する研究
c. 国際会議出席等
 本年度IMO本部(ロンドン)等で開催された下記委員会に出席し、わが国の意見の反映を図るとともに、国際規則に関連して情報の収集、国際的動向の調査、意見の交換等を行った。それらの結果については、運輸省に報告するとともに、本基準研究部会の各分科会及び小委員会に報告した。
[2] IMO新復原性基準に関する調査研究
 1974年の海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS)採択会議における付帯決議を受けて、IMO復原性・満載喫水線・漁船安全小委員会(SLF)において行われている「船舶の復原性規則の改良作業」に対応するため、本年度は、損傷時復原性基準、並びに非損傷時復原性基準について、以下の検討作業を行った。
a. 乾貨物船等の損傷時復原性基準の検討
(a) 各種乾貨物船等のSOLAS条約改正案に対する適合性
(b) 100m未満の乾貨物船等の損傷時復原性基準
b. 追波中の非損傷時復原性基準の検討
(a) 斜め追波中の復原性の検討(大阪大学)
(b) 追波中の復原性の確率論的評価(水産工学研究所)
(c) 斜め追波中の転覆現象に関する模型実験及び数値解析(船舶技術研究所)
(d) 追波中の復原性基準の検討(日本造船技術センター)
c. IMO提出資料の作成
 RO-RO旅客船6隻のMSC/Circ.574による('90 SOLAS)への合度計算結果は米国に送付し、米国から纏めてSLF36/4/11としてSLF36に提出され、追波の検討結果は、SLF36/INF.4としてわが国から直接IMOに提出された。
[3] 内航船の復原性に関する調査研究(日本造船技術センター)
 調査研究の4年度目として、今年度は基準資料策定のための作業を行い、基準試案を作成してその評価を行った。その結果、IMO A.167、A.562に準拠する「内航船の復原性基準案」を得た。
[4] 特定の放射性物質の海上輸送に係る安全性の調査研究
[5] 高燃焼度使用済核燃料の安全輸送に関する調査研究
■事業の成果

[1] 国際規則と船舶設計等との関連に関する調査研究
a. 国際規則と船舶設計等との関連調査
 IMO等において、規則の制定、改廃に係る検討・審議が行われている船舶関係の国際条約・規則等に関連する各種の事項について検討を行い、提案資料を作成するとともに、制定、改廃が行われた規則等の国内法制化に資する資料を作成した。
b. 国際規則と船舶設計等との関連のための調査及び試験
 上記a.に関連して、以下の調査及び試験を実施してa.の検討をバックアップした。
(a) 1966年国際満載喫水線条約の基本的見直し
 船型要素をパラメータとした船首乾舷と海水打込みの確率、並びに耐航性理論にもとづく船首乾舷の大きさを推定する回帰式により、海水打込みの発生確率を評価し、今後の条約見直し改正作業に有効な資料が得られた。
(b) 退船システムの評価に関する調査
 避難時、乗客が迅速に救命設備に到達し得るための模擬退船シミュレーションを行った結果、船舶動揺時の避難歩行速度等に関する基礎資料が得られ、救命設備規則改正に資する資料となる。
(c) イマーションスーツ(ウェットタイプ)に関する調査
 海外における現存のウェットタイプイマーションスーツの使用実態等の調査を行い、同スーツの性能要件及び試験方法等の情報を収集した。これら収集された情報等は、IMOへの対処及び国内基準策定時に資する有益な基礎資料となる。
(d) 国内用極軌道衛星系EPIRBの性能要件に関する試験
 国内用EPIRBを持つべき性能要件及びEPIRBに使用する数種の電池について、温度環境下で発信持続作動試験を行った結果、衛星飛来頻度(12時間に3回)に相応したEPIRB用電池は十分作動することが判り、更に小型化できる可能性があることが分り、国内用EPIRBの性能基準策定に資する有効なデータが得られた。
(e) 船舶内装材料の発煙性試験方法に関する試験
 IS0 5660、ISO-TR5924及びASTM-E662の発煙性試験方法により、各国から供給した各種船舶内装材料の発煙性試験を行った結果、発煙量の規制値を定めるに有効なデータが得られた。
(f) 標準火災試験方法に関する試験 -仕切りの煙保全性と煙の測定方法-
 試験体による防火仕切りの煙の貫通に関する試験を行ったところ、煙の発生量が把握でき、また、本試験に使用した煙濃度測定装置による測定が必要かつ有効であることが確認され、防火安全対策を検討する上において有益な資料が得られた。
(g) 燃焼ガス毒性評価方法に関する調査
 船舶火災時に発生する燃焼ガスにより多くの人命が失われることを防止するために、内外の諸文献の調査、試験装置及び評価方法について調査・整理した。全ての条件をクリアーする試験装置は見当らないが、毒性ガス評価モデルも多種多様であることから、燃焼ガスは相加作用が成立するとした評価式をもとに評価するのが最善策と考えられる。
(h) プラスチックパイプの燃焼性試験方法に関する試験
 鋼に代るプラスチックパイプは、A.653火災伝播試験及びガイドラインによる試験方法の規定値を満足することが判ったが、パイプを加熱するとかなりの煙が発生するため、その規制値も定める必要がある。
(i) タンカーのタンクヘの火炎侵入防止装置の国際共同試験
 IMO試験基準(MSC/Ciro.373/Rev.1)に従い、PV弁、高速排気管頭、フレームアレスタの試験を行い、当該試験基準の妥当性及び評価を行った結果、IMO-FPにおける基準の改正の審議に資する有益なデータが得られたものと思考する。
(j) 火災時に発生する煙の制御方法に関する試験
 船舶居住区の縮尺モデル及び実大モデルを用い、煙の伝播試験により、火災時の煙の流動、阻止方法を実験的検証並びに数値解析を行い、煙の伝播の性状等がある程度把握され、防火の安全性を検討する上において有益、かつIMO-FPでの審議に資する資料が得られた。
(k) 船舶の操縦性基準に関する研究 
 船舶の操縦性能の各種指標について検討され、基準案をIMOへ提出するとともに、設計段階で操縦性能を推定するための模型実験による数学モデルの構築、更に基準試案を考慮したパイロットによる操船シミュレーションを実施した。
 これらのデータは、操縦性基準設定に最とも効果的に反映されるものと思考する。
(l) 高速船の国際基準に関する研究
 本研究の検討範囲が多岐にわたるため、構造強度、防火・消防、運航体制の3つの分野から高速船の安全規制のあり方及び将来の技術的対応書の可能性等について検討され、構造・強度部門については、解析準拠型を基本とする「高遠船構造基準フレームワーク」の検討50m以下の単胴船を対象とする規則準拠型の基準の検討、単胴高速船及びSES型高速船の模型実験、海外調査等を行った。
 防火・消防部門については、スプリンクラーの性能要件、火災感知器の応答性評価、並びに水模式軽量防火仕切りに関する実験を行うと共に火災事故想定シナリオの検討を行った。また、IMOにおけるHSCコードの審議の進展に対応して、同コード第7章(防火)の検討を行った。
 運航体制部門については、運航体制のあり方の検討に焦点を絞り、操船シミュレータによる避航開始距離及び輻輳度を求める実験を行うと共に、海外における高速船の運航実態調査を行い、高速船の運航体制の提案を検討した。
 以上のような検討により、高遠船の安全規制の提案を行うに必要な有効な資料が得られた。
(m) 新世代衝突予防システムに関する検討
 船舶間で操船意志の伝達ができる最適衝突予防システムとして、最とも有力な方法と考えられるレーダートランスポンダ利用による案件と基礎的概念設計の検討を行った結果、今後の研究推進する上における有益な資料が得られた。
(n) 有害固体ばら積貨物による海洋汚染防止に関する試験
 MARPOL条約附属書VIの新設計画に先立ち、揚げ荷の残留貨物、又は洗浄水の海洋投棄による海洋汚染に係る荷役の実態調査、洗浄水の船内処理方法に伴うばら積固体物質の物性等の調査を実施した結果、条約設定検討の際の参考となる資料が得られた。
(o) 船舶からの海上大量流出油対策に関する調査研究
 タンカー事故時の油流出防止対策として、構造を二重化にし、その導入を図る検討が行われており、造船国であるわが国も早急に対応する必要があることから、各種構造方式による油流出量低減化技術の検討、及び座礁時の船体構造強度評価の検討を行った結果、小型タンカーには効果が薄いが、大型タンカーにおいては船底破孔時の油流出の特性、並びに流出量を推定することができ、今後、海洋汚染防止条約改正に大きく貢献できるとともに、造船業界等に及ぼす影響は大である。
(p) ばら積貨物の安全輸送に関する研究
 ばら積貨物の液状化に関しては、わが国が提案した「貫入法流動水分値試験法」について、IMO第31回BC小委員会の審議を通じ、よりよい試験法の確立を目指して、試験装置の細部修正と適用範囲の拡大等に関する要望があった。このため、本年度は試験装置の改良を図ると共に試験方案の見直しを行った。また、適用範囲の拡大に関連して大粒塊の混入した試料の水分値の試験等を実施して、貨物の実状に即した流動水分値及び運送許容水分値測定法の確認を行った。ばら積貨物の荷崩れに関しては、本年度は、試料パイルを圧密した状態での荷崩れ限界について実験し、加圧堆積条件を荷崩れ限界判定に導入する基礎資料を得た。また、非粘着性貨物と粘着性貨物に対するBCコードの修正及び粘着/非粘着性貨物の区分基準を求めた。さらに、貨物のパイル角、船体運動を加味した荷崩れの数値解析及び実証試験を行い、より現実的な状態での貨物の荷崩れの検討を可能にした。
 以上、「貫入法」の補完、適用範囲の検討及びこれらを活用しての広範囲なばら積貨物の安全対策の基本事項が解明され、所期の成果を納めることができた。今後のIM0 BC小委員会における審議に有効な資料を得た。
c. 国際会議出席等
 第59回海上安全委員会(MSC)を始め、29の国際会議に延べ55人が出席して審議に対応した。
 以上により、わが国がIMO等の国際会議における審議において世界の主要海運・造船国としての責務を果すことができ、国内的にも国際規則の円滑な国内導入に寄与し、海上における安全確保等に貢献した。
[2] IMO新復原性基準に関する調査研究
 「乾貨物船等の損傷時復原性基準」については、「RO-RO旅客船の損傷時残存能力の改善に関する('90 SOLAS)の現存船への遡及適用」に関連して、わが国の外航RO-RO旅客船6隻について、その適合度を調査し、'90 SOLASの国内受入れには略々支障は無い事を確かめると共に、SLF36('92年2月)に資料を提出して、IMOの審議に貢献した。
 また、「追波中の非損傷時復原性基準の検討」については、追波、斜め追波中の転覆の危険度を模型実験及び数値解析によって調査し、危険条件を避けるための安全操船マニュアル案を作成してSLF36に提案した。SLFにおいては、「追波中の操船マニュアルに関するCorrespondence Group」が設置され、藤野東大教授(RR24部会長)がCoordinatorに指名された。追波の転覆防止は、船型要件を規定する現行復原性規則のみでは達せられず、「操船マニュアル」は不可欠であるので、わが国はこの分野で大きく貢献し得るものと思われる。
[3] 内航船の復原性に関する調査研究
 今年度は、今までの研究成果を集大成して「基準試案」を作成してその評価を行い、現存内航船の多くが同試案に適合する事を確かめ、「内航船の新船適用には問題無し。」との結論によりIMO A.167、A.562に準拠する「内航船の復原性基準案」が得られた。また、検討作業の経過において、復原性計算上の問題点として、船体傾斜時の海水流入口の位置、並びにタンカーにおける貨物油槽の自由表面影響について検討し、内航貨物船の実状に即したその決定法及び標準的な算定法を得た。以上の結果、内航船の復原性基準の制定に関連する技術的検討作業としては、現行旅客船規則との調整を残すのみとなった。
[4] 特定の放射性物質の海上輸送に係る安全性の調査研究
a. プルトニウム運搬船等の火災時の安全性についての確率論的評価手法作成の資料が得られた。
b. プルトニウムを船舶で輸送する場合の積載方法、被曝管理等の輸送基準及び運行マニュアルの策定基準の作成に有効な資料を得た。
c. プルトニウム運搬船の構造・設備要件案を作成した。この案をべースに運輸省から平成3年12月に運搬船の構造・設備要件の通達が出された。
[5] 高燃焼度使用済核燃料の安全輸送に関する調査研究
 原子力発電所の高燃焼度化に対応して、高燃焼度使用済燃料の安全輸送を確保することは、核燃料サイクル確立のうえで極めて重要である。
 本調査研究は、平成3年度を初年度とする3カ年計画で実施する予定であり、本年度は、高燃焼度使用済燃料の[1]燃料の性状、[2]輸送容器の仕様、[3]運送形態等について調査研究を行った結果、所期の成果を納めることができ、次年度研究の基礎資料として有益なものと期待される。





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