■事業の内容
過去3か年の成果を踏まえて、有機スズ化合物を含む船底塗料による海洋汚染防止のための適正な方策を検討することを目的として実施した。 (1) 調査の方法 [1] 委員会による検討 学識経験者、関係団体及び関係官庁等で構成する「水質汚染対策委員会」を開催し、次の事項について検討した。 a. 大型船だけでなく小型船の影競も含めた、東京湾におけるTBT(トリブチル系の有機スズ化合物)の収支 b. シミュレーション手法による、東京湾の海水中におけるTBT削減効果予測(ケーススタディ) c. TBT汚染防止対策 [2] 委託研究 船底防汚塗料(有機スズ化合物を含む)の海洋環境に及ぼす影響の調査研究に関し千代田デイムス・アンド・ムーア(株)に委託して実施した。 [3] 文献調査 a. TBTによる海域の汚染 b. TBTにとる魚介類への毒性影響・生物濃縮 c. 海域におけるTBTの挙動 d. TBTの規制状況 (2) 調査項目及び内容 国際的、国内的規制の動向を踏まえて、可能な規制方法を想定し、それぞれの場合について数値シミュレーション手法を用いてケーススタディを実施した。その結果を評価・検討して防汚塗料による海洋汚染防止のための望ましい規制方法について調査研究を行った。 本年度は、事業の最終年度にあたり前年度に引き続いて次の事項を検討した。 [1] 汚染防止対策のシミュレーション手法による評価 a. 小型船の影響も考慮したものにシミュレーションモデルを取纒めた。 b. シミュレーション手法を用いて、TBTの削減効果についてケーススタディを実施した。 [2] TBT汚染防止対策 シミュレーションの結果を取纒め、TBT削減対策の効果について検討した。 (3) 報告書の作成 調査研究結果を取纒め、報告書を作成した。 [1] 部数 :200部(コピー製本) [2] 配布先:委員会及び関係官庁、団体、図書館、教育機関等 (4) 委員会の開催 水質汚染対策委員会 3回
■事業の成果
有機スズ化合物は、船底塗料の防汚剤として優れた効果があったが、水性生物に与える影響が予想以上に大きく、現在、各種規制が行われている。しかし、その消滅効果については、あまり分かっていなかった。 このような状況を踏まえて、本年度の事業では、前年度までに開発したシミュレーションモデルを小型船の影響も考慮したものに取纒め、これを用いて、東京湾における海水中のTBT濃度の挙動を明らかにした。これによって、現在行われている規制等による消滅効果を予測することができ、今後の国際規制の策定に対応するために必要な資料を得ることができた。 なお、このシミュレーションモデルは他の海域や汚染物質等についても、条件を替えることによって利用でき、非常に画期的なものであると思われる。
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