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■事業の内容

(1) 社会環境及び勤労者意識の変化に対応する福祉施策の現状と将来に関する調査研究
[1] 調査方法
 調査は、アンケート方式により、通信調査及び実地調査によって行った。
[2] 調査対象
 全国主要企業 1,033社
[3] 調査項目
a. 休日、休暇制度
b. 法定外企業年金
c. 永年勤続特典
d. 社宅、独身寮
e. 持家の促進
f. 貸付金制度
g. 保養・研修・文化・体育等施設
h. 自己啓発・余暇活動援助
i. 退職金準備指導・援助
[4] 調査結果の概要
 [3]の記載事項について調査を実施した結果、年間休日数の平均は117日であり、当研究所の昭和63年調査の106日に比べても著しい増加となっている。
 休日数を増やした企業数割合は85%と高率であり、また、今後において休日数を増やしていきたいとする企業は58%あった。一方、特別休暇の今後の導入予定については、育児休業制度の実施という時代の動きを反映して、育児休暇が約4割と最も多く、次いで看護・介護休暇、長期連続休暇と続いている。
 社宅、独身寮の状況については、ほとんどの企業が保有しており、最近における新設、増設等は、それぞれ保有する企業のほぼ半数以上が行っている。調査の結果を総合的にみると、労働時間の短縮や休日数の増加等を進めることかはっきりと示されており、それとともに社宅、独身寮、育児休業等の福利厚生面の施策を強化し、企業のイメージアップを図って人材確保をさらに進展させようということも強調されている。
[5] 報告書の作成
a. 部数   600部
b. 配布先  調査協力会社366部
その他関係省庁及び諸団体  234部
(2) 職場におけるメンタルヘルスの教育、研修の開発に関する研究
[1] 題名  「職場におけるメンタルヘルス」
[2] 規格  1吋マザーテープ及び2分の1吋コピーテープ(VHS)を作成
(時間:18分及び20分 各1)
[3] 数量  マザーテープ 1本 コピーテープ 5組 (2本1組)
[4] 内容
a. ストレス社会といわれる今日、職場不適応をおこす勤労者が増加しており、これらの現象は人事管理上大きな問題となっている。その解決策の一環として、研修用の教材を開発した。内容は部下を持つ管理職向けに、具体的な事例を用いた。
b. 第1部「エンストを起こした新入社員」
 ちょっとしたことで出社拒否したり、退社したりする新入社員を部下に持つ係長が、その対応に苦慮する姿を提示し、専門医が対処すべきポイントを解説する。
c. 第2部「出向先の環境に馴染めないエンジニア」
 子会杜に出向した社員が、仕事の内容と生活環境が大きく変化したために、これに適応できず不調に陥ってしまい、上司の課長はとまどう。その対応策を専門医が解説する。
シート作成
(a) 題名   「職場におけるメンタルヘルス」
(b) 規格   B5版、22頁
(c) 数量   400部
(d) 内容   ア. メンタルヘルスの社内教育、研修の社内講師用として、職場における対策を系統だててまとめた。
イ. メンタルヘルス対策の在り方、メンタルヘルスの保持・増進、職場不適応の早期発見とその後の対応、職場復帰と再発防止。
(e) 利用先  職場の労働衛生の向上に資するため、民間企業及び官公庁の希望に応じて貸与し、さらに、中間管理職を対象とする職場研修においても活用。
(3) 高齢社会に相応しい人事・賃金モデルに関する研究
 60歳前半層の雇用機会を確保し、65歳定年制を目標とするためには、今後の人事管理制度は、一部の基幹となる幹部職員=ゼネラリストとその他の固有の専門性を有する職員=スペシャリストとに大別して、大勢としては管理職志向から専門職志向への転換が求められている。この場合の専門職は、欧米流の極めて細分化され、融通性に乏しい「専門」をイメージすることなく、その職務内容を可能な限り明確化し、かつ、できるだけ適応性に富んだものとすべきであり、また、それぞれの専門性に対する評価基準を確立し、管理職員との適切な対応関係をもつ、資格制度による格付けと給与処遇を行い、個別人事管理の徹底を図る必要がある。
 賃金体系については、55歳定年制を基礎とした、50歳前半層をピークとする急激な右上がりの上昇カーブを改め、65歳までの継続雇用を念頭においた賃金体系とする必要がある。具体的には、中ブクレを是正し、概ね50歳以降はその水準を維持することにより、60歳前半層までの継続雇用に対応した賃金体系を目指すべきである。
 退職金については、従来の高い水準の退職時賃金と長期化する勤続年数を基礎とする退職金原資の増加抑制及び一時金の年金化の方向で進んでいるが、現行の企業年金は必ずしも十分に老後生活の保障となっていないことから、従業員の拠出制を考慮しつつ、その充実を図るよう努めるべきである。
■事業の成果

(1) 社会環境及び勤労者意識の変化に対応する福祉施策の現状と将来に関する調査研究
 日本経済は世界でも最も底堅い成長トレンドを長い間示してきたが、その結果として今では、ゆとりや真の豊かさが実感できる社会を実現しようとする動きや会社人間からの脱却を促す風潮が各方面から出されており、このような状況の中、基調として人手不足も深刻な情勢となっている。
 本年度の調査は、以上のような情勢の認識の下に、現在の企業における職場の活性化や従業員の幸せに対する配慮、また、人材確保対策としても注目される企業福祉施策について、その現状と将来の方向を把握することを目的に実施したものである。
 この結果、企業における福祉施策の現状と高齢化社会への将来の対応等について、貴重な資料、情報が数多く得られた。この調査研究報告は、厳しい条件の下で人事管理の業務に絶えず努力している企業及び公務部門の方々に役立つものと考えられる。
(2) 職場におけるメンタルヘルスの教育、研修の開発に関する研究
 企業や官公庁などの職場で発生した場合のメンタルヘルス問題は、身体の病気の場合とは異なり、その対応に苦慮しているのが実状で、その殆どの原因は、メンタルヘルスに対する誤解や偏見が根強くあるためといわれ、その解決のためには、職員に対し、特に部下を持つ管理職に対する教育が最も基本的な対策であると指摘されている。
 本事業は、これらのニーズに応え、職場における福祉の増進と人材の有効活用に資するため、職場内の研修用教材として、具体的事例を提示する「ビデオ」と部内講師用の手引きとして「研修シート」を作成したもので、係長や課長の管理職研修用及び一般職員への啓蒙用として、官民各職場の利用に供される。
(3) 高齢社会に相応しい人事・賃金モデルに関する研究
 本事業は、今後、本格的な高齢社会に向けて、これまでの雇用形態や採用から退職までの一元的な人事・賃金制度を見直し、再構築を図る企業が増加していくことが予想される状況の下で、そうしたニーズに応え、公務及び企業に対し一つの指針を提示すべく、高齢社会に相応しい人事・賃金モデルを研究したものである。この研究報告は、実際の人事管理に携わる担当者等の有益な参考資料として活用されるものと考えられる。





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