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■事業の内容

(1) 輸出船市場調査研究
 輸出船市場調査研究委員会を3回(5月24日、6月28日、12月17日)開催して、内外の資料をもとに東南アジアおよびアフリカ諸国の船舶事情等について審議検討し、報告書(エリア1,8各150部)を作成・頒布した。

(2) 海外市場調査
 3月3日から9日までの7日間フィリピンに調査員(2名)を派遣して、同国の船腹拡充計画等について現地調査を実施し、報告書にまとめ頒布した。

(3) 英文総合カタログ作成頒布
 英文総合カタログ作成委員会を2回(6月12日、9月20日)開催して、船舶写真、会社記事等について審議検討し、英文総合カタログ“MODERN SHIPS IN JAPAN'91”(1,500部)を作成・頒布した。
■事業の成果

(1) 輸出船市場調査研究
 今回の調査対象国は、エリア1. シンガポール、インドネシアおよびエリア8. エジプト、リビア、アルジェリアの5ヵ国である。シンガポールは地理的に国際海運の要衝に位置しており、従って海運の歴史も古く、船舶需要は活発である。しかし、日系資本の参加した合併造船所があるなど、造船業については、わが国のライバルと言っても過言ではない。
 インドネシアは大小約6,000島しょから成り、海運はこれら諸島間の経済発展にとり、極めて重要な位置を占めている。このため内航船のスクラップ・アンド・ビルド(国内建造)を実施するとともに、自国造船業の整備にも努めており、最近では輸出船の建造も手掛けるなど、今や、同国はわが国にとって、中小型船の輸出市場国からライバル国にかわりつつあるといえよう。
 次にエジプト、リビア、アルジェリアは石油やLNG等の輸出および食糧品の輸入等のため、政府主導で海運力の整備・拡充に努めており、特にアルジェリアの国営海運会社CNANはアフりカ第1位の大海運会社となっている。
 エジプトは北アフリカでは最大の造船能力(最大38,500DW)をもっているが、全般的に技術レベルは低く、設備も老朽化しており、新造船部門については国際競争力に欠けている。従って主要な船舶は海外からの輸入に依存しているが、財政難のため新造船の対外発注は当面期待できない状況であり、わが国からの新造船の輸出もここ数年は、経済協力船数隻にとどまっている。
 リビアは莫大な石油収入を背景に経済開発計画を推進しているが、米国の対リビア経済制裁に表われているように、目下同国の政治経済情勢は極めて不安定である。船舶については、10数年前にわが国からタンカー等数隻の輸出実績があるだけで、以後引合いもない状況である。
 アルジェリアは石油および天然ガスの産出国として知られており、これら鉱物資源の輸出のために国営海運会社を設立し、以来その船隊の増強に努めてきた。当会では同国に対して昭和45年より市場調査および広報宣伝等を実施してきており、その結果、約70隻にのぼる各種船舶の輸出実績を有するに至っている。しかし、石油・ガス関連品が輸出総額の97%を占めている同国の経済は、石油価格の変動に大きく左右されることとなり、加えてミッテラン政権後のフランスとの関係修復もあり、最近ではわが国への船舶の引合は中古船を除き低調である。しかしながら、同国は中小型船の輸出市場としてのポテンシャリティは高いものがあり、今後ともその需要動向等について調査研究を行う必要があろう。
 以上のように、今回の調査研究により対象国の基礎資料を整備し、今後の輸出対策樹立の指針とすることができた。
(2) 海外市場調査
 1986年マルコス政権崩壊後、アキノ政権となり経済復旧に向って始動しているフィリピンの船舶需要の調査並びに経済協力による船舶供与の実現促進を図るため、本市場調査を計画した。
 本調査は当初6月実施を予定していたが、現地受入機関の都合により8月に延期したところ、7月16日発生したルソン島大地震の復旧が捗らないため調査実施を延期して欲しい旨、現地機関より要請があり、平成3年1月20日出発に再度延期した。ところが、中東湾岸戦争の勃発により再度、訪比延期の要請があった。このように再三にわたり実施が延びていたが、3月3日から9日に市場調査を実施した。
 以下、訪問した個々の関係機関との面談結果は次の通りである。
[1] PHILIPPINE NATIONAL OIL COMPANY (PNOC)
 Mr. Orland L. Galang (Vice President, Logistics, Shipping & Transport)
 PNOCはフィリピン最大の石油会社であり、26隻の船舶を保有しており、傘下にPNOC Dockyard & Enigneering Co.があり、小型船はここで建造する。従って小型船以外の中型船等は海外発注する考えがある。
[2] ABOITIZ SHIPPING CORPORATION
 Mr. Txabi Aboitiz (VicePresident)
 アポイッツグループの海運会社で経営は同族会社である。23隻の船舶保有があるが、船台10〜20年で代替時期にきている。
[3] CAVALIER SHIPPING CORP.
 Mr. Victorino A Basco (President)
 社長は元MARINAの役員で退官後、同社を設立し、11隻の貨物船を運航している。当会会員造船所で2席の貨物船を1984〜5年に建造した。
[4] LOADSTAR SHIPPING CO., INC
 Mr. Teodoro G.Ricasata(Assistant Vice President)
 日本への定航航路にも就航させている海運会社で当会会員造船所で保有船舶の検査を打っている。19隻保有のうち18隻が老朽貨物船で今後、代替建造する計画を持っている。
[5] MAGSAYSAY LINES,INC
 Mr. Alfredo G Ricasata (Assistant Vice President)
 Mr. Rufino V.Ocampo(Port Engineer)
 同社はフィリピン最大のオペレーター会社で、創業者は第3代大統領のラモン・マグサイサイ氏である。日本の新日本丸に同社社員が乗組員として勤務している。建造計画は今のところ未定である。
[6] MARITIME INDUSTRY AUTHORITY (MARINA)
 Mr. Rodolfo S. Llobrera (Director)
 Mr. HR. Vitasa (DeputyAdmhistrator for Planning)
 Mr. Cesar V. Jovellanos,Mnsa(Naval Arehitect & Marine Engineer)
 MARINは1974年に設立されたフィリピン海運業の政策決定機関である。
 フィリピンの海運増強計画を策定し、中期造船目標(3カ年計画)と長期ライナー代替建造10ヵ年計画があるが、実行は経済事情等により危ぶまれている。また、この他に湾岸警備のため、アルミ船のパトロールボート80隻の計画があり、内訳は5隻をアメリカから、また75隻を現地建造の計画である。
  以上のように、フィリピンにおける船舶需要等の対応策が明らかになったので、本調査結果を基に今後の輸出対策樹立の指針とすることができた。
(3) 英文総合カタログ作成頒布
 長期に亘った造船不況も新造船需要の回復等により所業にも漸く明るい兆しが見えているが、建造量の約7割を輸出船で占める斯業としては、輸出の振興が斯業経営のための大きな柱であり、今後とも常に海外市場の維持開拓を図り、需要喚起に努める必要がある。加えて斯業のほとんどは中小企業であり、個々の会員造船所が独自に海外広報宣伝等を実施することが難しいため、当会が中心となってわが国の中型造船業を海外に紹介し、その優秀性を知らしめ、新規需要の創出に結びつける必要がある。
 本カタログの刊行により、アジア、中近東、アフリカおよび中南米等の主要な船主および海運関係機関に対して、新業の優秀性とそれら造船所において建造した船舶を十分に紹介することができたので、斯業の輸出振興に必ずや寄与するものと確信する。





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