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「海上防災の調査研究」の報告書

 事業名 海上防災の調査研究
 団体名 海上災害防止センター  


■事業の内容

前年度までの調査研究を踏まえ次の調査研究を行い、有害液体物質の防除処理システムの確立を図った。
(1) 資機材開発の基礎調査
 排出油防除資機材の現有資機材と併用し、又は補完する専用資機材として、有害液体物質の物性、特性等に適応した資機材を開発するため、次のとおり検討した。
[1] 要求性能の調査
a. 回収装置
 対象物質が、海中に浮流するゴミや海底の沈殿物を汚染することがあり、対象物質と一緒にこれらのゴミ、ヘドロ等を回収する必要性が生ずる。
 また、対象物質の回収に伴い多量の水を揚収することになる。
 湿気ジェットポンプでは、対象物質を含む堆積物0.3m3/minの揚収に対し、水2.1m3/minの揚収があることが判明した。揚収した水は物質に汚染されていることが予想され、後処理の問題が二次的に派生するので揚水量の小ない回収装置が要求される。
 更に、装置の小型軽量化が必要である。
b. 吸着材
 有害液体物質に対する吸着材として求められる性能は、対象物質の吸着量が多く、かつ疎水性があり、更に耐薬品性に優れているということである。対象物質に対する吸着能力を予測する解析を行ったところ、粘度や蒸気圧などの物性によって、概ね粘度の高いものがよく、また蒸気圧が低いものがよいという傾向が判明した。
[2] 開発の可能性の調査
a. 回収装置
 エアリフト工法は汎用性に富み、理論的には水深の制限がない。また、ゴミ、ヘドロ等の回収も可能である。
 試算によると、0.5m3/minの液体を揚収するのに5.33/minの空気を供給する必要があることが判明した。
 この結果、エアリフトしゅんせつ機を小型化することにより、潜水夫が自由に扱える回収装置の開発可能性があることが判明した。
b. 吸着材
 物質の蒸気圧、粘度等による吸着能力の予測が可能になれば、ヤシ殻など天然繊維の活用やプロピレン系素材の加工法の改良により、吸着効果の高い専用の吸着材の開発が可能となることが判明した。
 また、浮遊物質の大半が粘度1cp前後であることから、この程度の粘度に着目して開発する必要がある。
c. 固化処理
 対象物質を固化材とともに固化して海底に封じ込むという方法は、現在の固化材では、固形物の経時変化により物質が滲み出す恐れがあり、問題があることが判明した。
 従って、現状では固化処理は回収を前提とした一時保管のための手段として位置付けられる。
 固化処理に用いられる装置としては、港湾土木作業で使用されている軟弱地盤の改良工法を原型とした固化装置の開発が考えられる。
d. 無害化処理
 酸やアルカリ性物質が流出した場合、極めて閉鎖的な海域においては、中和反応が望めるが、薬品による二次汚染の影響を考慮しなければならず、海水のpH測定が必要である。
 同様に、酸化性物質に対する亜硫酸ソーダ等の還元剤や還元性物質に対する次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤の使用が考えられるが、特別な海域での使用に限られ、十分なモニタリングが必要となる。
 また、沿岸域での底泥には、還元性を有するものがあることが実験により判明したので、これらの底泥との反応によって自然浄化されることも考えられる。
 その他の物質は、ほとんど常温で安定な有機化合物であるため、これに対する化学処理の方法は見いだしていない。
 しかしながら、十分な化学処理とはいえないが。流出事故の状況によっては、アセトンツアノヒドリやアクリロニトリルあるいはスチレンなど個々の物質については、有害性を少しでも減ずる可能牲がないとはいえないので1今後モデル実験などを行って調査する必要がある。
(2) 処理システムの検討
 これまでに検討してきた資機材を実際の事故に適用する場合の効果的な運用方法を次のとおり検討し、有害液体物質の防除処理ツステムの確立を図った。
[1] 浮遊性物質の処理の検討
a. 拡散防止
 対象物質は水面拡散速度が速いため、オイルフェンスの展張を短時間で行う必要がある。
放水による水流の併用も考える必要がある。
b. 回収処理
 吸着材による吸着は、一時的であるので、吸着後速やかに回収しなければならない。
 対象物質の引火爆発や毒性等の危険防止対策上、油ゲル化剤の散布等は、航空機による空中散布の必要がある。
c. 揮散抑止
 対象物質からの蒸発ガスが引火性の場合は可燃範囲以下にし、毒性の場合は許容濃度以下にするため、油ゲル化剤又は泡消火薬剤の散布が必要となる。
d. 回収処分
 回収物質の管理に当たっては、回収物質が飛散し、及び流出し並びに悪臭が漏れるおそれがないようにする必要があるので、回収容器については、海水による材質腐食や不完全密閉の起きにくいものでなければならない。
[2] 沈降性物質の処理の検討
a. 回収処理
 海底のくぼみなどに堆積した物質については、潜水夫が小型のエアリフトを手に持って直接吸入口を物質に当て回収することができる。
 対象物質がヘドロに浸透するような場合は、固化材等で固化した後、しゅんせつ機械を用いて回収することができる。
b. 固形化処理
 海底の状態等から対象物質の拡散が速い場合等においては、セメント等の固化材や油ゲル化剤により物質を固形化して流動性を抑制したうえ回収する必要がある。
 しゅんせつ機による回収や固化材等の注入攪拌においては、海洋汚染防止幕等の併用を考えなければならない。
c. 回収処分
 浮遊性物質と同様であるが、対象物質と同時に砂利、ヘドロ、ゴミ等を回収することとなり、また多量の揚収水があるので、密閉バージ等大型の容器が必要となる。
[3] 油ゲル化剤空中散布実験
 防除処理システムを確立する上で油ゲル化剤の空中散布方法を確立する必要があるので、次のとおり実験を行い検討した。
a. 使用油ゲル化剤  アミノ酸及びソルビトール系油ゲル化剤
各1種
b. 航空機      回転翼機
c. 実験供試物質   ベンゼン、ヘキサン
d. 実施場所     (社)農林航空技術センター
e. 散布実験
(a) 予備実験
室内走行式散布装置を用いて。予備実験を行い、ゲル化効果から実機実験における散布諸元、飛行諸元を次のとおりとした。
散布諸元
散布圧力  1.5kg/cm2
ノズル   D8-46
飛行諸元
飛行速度  20MPH、30MPH、ホバリング
飛行高度  5m、10m
(b) 実機実験
 実験結果から、推定吐出量に対する有効散布量の割合を散布効率として算出し、飛行諸元による散布効率をみると、飛行速度は高速で、飛行高度は、低粘度の油ゲル化剤については低く、高粘度の油ゲル化剤は高い方が良いとの結論を得たが、今後より多くの実験データを蓄積し、明確にしていく必要がある。
 また、対象物質の量と油ゲル化剤の散布量の関係から、室内実験では適正な散布量となったが、屋外の実機実験では、まだ不十分であることが判明した。
 このため、改善策としては、散布装置、散布方法に改良を加え、短時間に散布し、油ゲル化剤の散逸を減らす必要がある。
■事業の成果

有害液体物質の防除資機材に関する調査研究は、船舶の海難事故等に起因して流出した有害液体物質を防除処理する場合の防除資機材に焦点をあて、既存の排出油防除資機材の活用の方策及び新たな専用資機材の開発の必要性や可能性について調査研究し、それら資機材の有効、適切な運用方法を策定することにより防除処理システムを確立するため、昭和63年度から3ヵ年計画で実施してきたもので、本年度はその最終年度である。
 本年度は、前年度での調査をもとに、資機材開発の基礎調査を実施した。
 浮遊性物質に対しては、油吸着材、油ゲル化剤及び泡消化剤などの排出油防除資機材等が適応されるが、この資機材を土台に改良、改善を加えることにより専用資機材の実現可能性が推察される。
 海中漂流性物質も含め沈降性物質の防除処理の現実的な対応としては、港湾土木作業で用いられるしゅんせつ機材による回収である。エアリフトしゅんせつ機は汎用性があり、専用の回収機材として応用可能である。
 物質の化学反応性を利用した化学処理については、特殊な状況における中和や酸化、還元が考えられるが、常温で安定した有機化合物を海中で反応させるのは困難である。
 また、防除資機材に関するこれまでの調査研究をもとに、実際の流出事故において、防除作業の流れに則して各種資機材を効果的に運用するためのシステムを検討した。このシステムにおいては、広域に及ぶ汚染区域を迅速かつ有効に処理するため、航空機による油ゲル化剤の空中散布技術の確立が必要となることから、実機による散布諸元を実験的に調査し、航空機による油ゲル化剤の空中散布が可能であるとの結論を得た。
これにより、本調査研究の初期の目的である防除処理システムを確立することができた。
今後は、あらゆる機会を、特に実際の事故処理の実例を捕えて、資機材の有効性を把握するとともに、防除技術の向上及びシステムの高度化を図ることとしており、この成果を十分活用することにより海洋汚染及び海上災害の防止に大きく寄与するものと期待される。





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更新日: 2019年8月10日

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