日本財団 図書館


■事業の内容

平成元年度の研究成果をふまえて、本年度は動揺補正システムの実用化をはかるため、船の動揺を検知するヒービングセンサーを既存の音響測深機及びデジタル深度集積装置に接続し、動揺補正済のアナログ・デジタル記録を得ることができる実用的動揺補正システムの設計・製作と評価実験を次のとおり行った。
(1) 動揺補正システムの設計・製作
[1] ヒービングセンサー
 昨年度は、バーチカルジャイロを用いたスタビライザの上に加速度センサを装着したヒービングセンサーにより、小型船の送受波器の位置の上下方向の加速度を検知した電気信号に変換し、この出力信号によって動揺補正を行ったが、本年度は1個及び4個の送受波器の動揺補正量を1個のヒービングセンサーで求める必要があるので、このセンサーに内蔵されているピッチングとローリングの信号を利用することとした。
[2] 動揺補正装置
 昨年度は、小型船の動揺によって得られた加速度信号は、2回積分してヒービングセンサーの位置の上下動揺に相当する電気信号に変換していたが、本年度は4個の送受波器のそれぞれの位置の上下動揺量に相当する電気信号に変換するため、ヒービングセンサーより得られたピッチングとローリング信号を利用して高速演算し、ヒービングセンサーの位置の上下動揺量にピッチングとローリング成分の上下動揺を加えることにより、4個の送受波器それぞれの位置の上下動揺量を求められるようにした。更に電気的に積分器の前段にローパスフィルターを設けて、設置場所による雑音の混入を軽減するとともに、旋回操船と同時に手動で積分回路をリセットし、旋回加速度の影響を回避することとした。
このようにして得られた信号に基づき、音響測深機の発振位置を送受波器の上下動に相当する位置に制御し、アナログ記録上から活底記録を読み取ることと、直接海底信号をデジタル化して集録することができるようにした。
 本装置の主な仕様は次のとおりである。
a 信号周波数  0.05〜0.5Hz
b 入力電圧   Max,  5V
c 積分定数   10秒〜1分 適宜切り換え方式
d 補正出力数  4素子分
e PDR-501に動揺補正済のアナログデータを記録する。
f アナログデータをDDR-101Aに入力し、A/D変換したディジタルデータをテープに記録する。
(2) 評価海上実験
 12月3日〜5日に相模湾の小田原漁港を基地として、平塚海岸〜二宮海岸の沖合海域において、製作された割揺補正システムの性能及び作動状況を確認するための性能比較試験と航走試験を実施した。
 実験結果は、1.5mを越す波浪中でも良好を補正効果は得られており、目標性能を満足していることが判明した。
■事業の成果

評価実験では、動揺補正を行わないときの測深値の変動に対して動揺補正を行ったときの測深値の変動が、波浪の周期が2〜10秒の動揺については10%以内に、10〜20秒の動揺については20%以内の目標性能を満足する補正効果は得られることが判明した。
 この動揺補正装置を使用することによって、水深測量に及ぼす効果は次のとおりである。
(1) 波浪等の影響を含む海底地形記録が影響分を除去した海底地形記録となり、水深読み取り作業の単純化と水深精度の向上がはかられる。
(2) 外洋性沿岸域における作業効率が向上する。
(3) 成果品の均一化がはかられ、海底地形変動の解析信頼度が得られる。
(4) 小型船使用による水深測量の全海域型自動化システムの推進をはかることができる。
 このような有効性から、本動揺補正システムは水深測量を実施する機関、会社等に取り入れられ大いに普及することが期待でき、今後の海底地形調査技術の向上をはかることができる。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION