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■事業の内容

(1) 海洋汚染防止に関する国際対策の調査研究
[1] 調査の方法
 資料の収集、翻訳及び解析を行い、国際会議用資料を整理し、委員会を開催して、国際会議への対処及び結果報告並びに関係先への報告を行うとともに、報告書を作成した。
[2] 調査項目及び内容
a. 条約準備会議への対応
 「油汚染への備え及び対処に関する条約」の早期の採択のため会議に出席し、政府代表を補佐した。
b. 第20回BCH及び第30回MEPCへの対応各々の会議に出席し政府代表を補佐するとともに資料の収集をした。
c. 海洋汚染防止に関する国際動向への対応
 資料の収集及び整理を行い、委員会を開催して検討し、報告書を作成した。
d. ケミカルタンカーのタンク洗浄に関する調査
 第21回BCHにおけるわが国の対応のため専門家及び関係団体による作業部会を開催し検討した。
e. 国際会議への出席
イ. 条約準備会議
(イ) 開催日:平成2年5月11〜21日
(ロ) 場所 :ロンドン
(ハ) 調査員:海洋汚染防止研究部主任研究員  名和純二郎
ロ. 第20回BCH会議
(イ) 開催日:平成2年9月27〜10月7日
(ロ) 場所 :ロンドン
(ハ) 調査員:海洋汚染防止研究部主任研究員  木畑幸延
ハ. 第30回MEPC会議
(イ) 開催日:平成2年11月12〜16日
(ロ) 場所 :ロンドン
(ハ) 調査員:海洋汚染防止研究部部長     池上武男
[3] 報告書の作成
 調査研究の結果を取り纏め、報告書を作成した。
a. 部数 :200部
b. 配布先:委員会及び関係官庁、団体、図書館、教育機関等
[4] 委員会の開催
a. 連絡調整委員会  4回
b. 同作業部会    1回
(2) 海上流入物質の海洋生態系に及ぼす影響の調査研究
[1] 調査の方法
a. 委員会を3回開催し、船底防汚塗料による海洋汚染の防止対策について検討し、報告書をとりまとめた。
b. 船底防汚塗料による海洋汚染の防止対策に関する調査研究に係る研究業務を千代田ディムス・アンド・ムーア(株)に委託して実施した。
[2] 調査項目及び内容
 船底防汚塗料による海洋汚染防止対策に関して、数値シミュレーション手法の改善を図るため、東京湾におけるTBTの挙動を調査した。
 シミュレーション手法により汚染防止対策の評価を行った。
[3] 報告書の作成
 調査研究の結果を取り纏め、報告書を作成した。
a. 部数 :50部
b. 配布先:委員会及び関係官庁等
[4] 委員会の開催
 水質汚染対策委員会  3回
(3) MARPOL73/78条約附属書<6>に関する調査研究
 本年度は、前年度の調査結果を踏まえて、ばら積み固形物質の海上輸送にともない海上投棄される残留固形物質の海洋環境への影響の評価手法について検討し評価を試みることを目的として、下記の通り実施した。
[1] 調査の方法
 MARPOL73/78条約附属書<6>に関する調査研究の文献資料の収集・整理及び解析を千代田ディムス・アンド・ムーア(株)に依頼するとともに、委員会を4回開催して調査内容を検討し、報告書にまとめた。
[2] 調査項目及び内容
 下記の項目についてそれぞれ実施した。
a. 環境影響評価手法に関する既往知見の収集・整理
b. 前年度の調査結果を基に海洋投棄の可能性のあるばら積み固形物質のリストアップ
c. 前年度の調査結果を基に海洋投棄の実態整理(量、投棄方法)
d. ばら積み固形物質性状の整理
e. 海洋に投棄されたばら積み固形物質による海洋環境への影響の予測
f. ばら積み物質と影響との相互関連性の検討(マトリックス表作成)
g. 影響程度の検討(有害性の検討)
h. 有害ばら積み固形物質のリストアップ
[3] 報告書の作成
 調査研究の結果を取り纏め、報告書を作成した。
a. 部数 :50部
b. 配布先:委員会及び関係官庁等
[4] 委員会の開催
 MARPOL73/78条約附属書<6>対策委員会  4回
(4) 浮体構造物に係る環境影響評価技術指針に関する調査研究
[1] 調査の方法
a. 委員会を開催し、過去2カ年の検討結果を踏まえ、大規模浮体構造物の環境影響評価手法の指針について個別事項の検討を行い、報告書をとりまとめた。
b. 「大規模浮体構造物の環境影響評価手法の指針策定調査」に係る研究業務を新日本気象海洋(株)に委託して実施した。
[2] 調査項目及び内容
 大規模浮体構造物の設置に伴う環境影響評価手法に関して、昨年度までに実施された各種要素別の調査研究に引き続いて、本年度は主として設置された海域の海水流動の影響を、より詳細なケーススタディーとして調査研究した。
 またこれと同時に、すでに実施した浮体構造物の技術資料の整理(便覧)に関して、その後に得られた資料によりその内容を増補した。
 以上の諸成果とともに、昨年度及び一昨年度に実施した諸成果を整理して、環境影響評価手法の指針としてとりまとめた。
[3] 報告書の作成
 調査研究の結果を取り纏め、報告書を作成した。
a. 部数 :200部
b. 配布先:委員会及び関係官庁、団体、図書館、教育機関等
[4] 委員会の開催
 浮体構造物の環境影響評価に関する調査委員会  4回
(5) イベント船の生活排水等から生じる海洋汚染の防止対策に関する調査研究
[1] 調査の方法
 イベント船の生活排水等に関する基礎的調査を新日本気象海洋(株)に委託して実施するとともに、委員会を4回開催して調査を実施した。
[2] 調査項目及び内容
 海洋レジャーに船舶を従来とは異なった形態で利用するイベント船の、停泊中の生活排水等が周辺海域を汚染する懸念があり、このため、イベント船の適切な振興を図る上から、イベント船から発生する汚濁物質の海洋環境への影響評価と適切な汚染防止対策の技術的検討を行うための資料を作成するため、前年度の調査で得た、イベント船の利用目的別の発生源単位に基づき、下記の調査を行った。
a. イベント船のモデル計画の作成と発生負荷量の推計
b. 日本各地の港湾の累計化と発生負荷量の調査
c. 上記bに基づくイベント船の生活排水の汚濁負荷量の算定
d. 上記a〜cに基づく、海洋汚染防止対策に関する調査
 既存資料を収集整理するとともに、海上イベント主催者や屋形船経営者及び係留船計画事業体へのヒアリング調査を行い、昨年度に引き続きイベント船の概念把握を行った。
 また、委員会においてイベント船から排出される生活排水等の質的・量的検討を重ねるとともに、海洋汚染防止対策についてとりまとめた。
[3] 報告書の作成
 調査研究の結果を取り纏め、報告書を作成した。
a. 部数 :200部
b. 配布先:委員会及び関係官庁、団体、図書館、教育機関等
[4] 委員会の開催
 イベント船対策委員会  4回
■事業の成果

(1) 海洋汚染防止に関する国際対策の調査研究
 海洋汚染防止条約に国するIMOの動向を把握するとともに、関連の国際会議の前後に関係当局及び関係団体等で、構成する連絡調整委員会を開催して、国際会議の審議事項の検討を行い、我が国の対処方針の策定及び行政の円滑な運営に寄与した。
 また、関連の国際会議に代表を派遣して政府代表を補佐するとともに、ここで得た情報を当局はじめ、海運及び関連業界等に提供し有効な活用を図った。さらに、関係資料のうち、必要な事項については、報告書に掲載し、海洋汚染防止のための参考資料として関係機関はじめ関係団体等に広く配布し、関係者の海洋環境の保全に貢献した。
(2) 海上流入物質の海洋生態系に及ぼす影響の調査研究
 平成2年度は、日本国内において効果的なTBT対策が実施に移された年であった。また国際的には、従来の小型舟艇を対象とした各国個々の規制から、近い将来の大型船をも対象に含めた規制の実施に向けて動き出した年でもあった。
 このようた状況の中で本年度の事業では、今まで明らかとなっていなかったTBTの海域における挙動を明らかにすることができた。これより、船の船底塗料が海洋環境に及ぼす影響を、将来的に予想することが可能となった。このことは、急速に変化していくTBTに関する状況にあったものであり、今後の対策を推し進めていく方向を探るうえで非常に重要な成果を上げることができた。
(3) MARPOL73/78条約附属書<6>に関する調査研究
 平成元年度調査では、アンケート調査により海上輸送されるばら積み固形物質の荷役に伴って発生し、海上投棄される残留固形物質の種類及び量を把握した。
 本調査研究では、前年度の調査結果を踏まえて、ばら積み固形物質の海上輸送にともない海上投棄される残留固形物質の海洋環境に及ぼす影響について検討を行い、評価手法の一例としてインパクト・マトリックス表を作成した。厳密な評価については、各物質の海水中での挙動、運命が現段階で科学的に十分明らかでないことから、今後の知見の蓄積を踏まえて再検討する必要があるが、本調査研究の成果は、MARPOL73/78条約附属書<6>に関する調査研究のためのばら積み固形物質の有害性評価手法として、基礎的な資料となるものと思われる。
(4) 浮体構造物に係る環境影響評価技術指針に関する調査研究
 本調査研究は3カ年計画として作業を進めたが最終年度である本年度は、浮体構造物に関する情報の整理と、設置海域の海水流動に対する影響のより詳細なケーススタディーの実施、更には3年度を通しての成果をとりまとめた。
 具体的には、まず浮体構造物の技術資料の整理に関しては、その後に得られた資料を増補して、現時点での浮体構造物を適確に把握するための資料を便覧としてとりまとめた。
 次に設置海域の海水流動に与える影響を解明するために、昨年度に引き続いて特定海域に設置した1,100m×1,000mの大規模浮体構造物を対象にして、海水の流動変化をより詳細に解析して、その状況を把握した。更にはこれらの成果も加えて、これまでに実施した各種要素の環境影響予測モデル等を整理した上で、本調査研究の目的とするところの影響評価のための技術的な指針をとりまとめた。以上の成果により、今後に建設が計画されるであろう大規模浮体構造物に関して、その周辺の海水の状況、あるいは生物環境等に対する影響を事前に評価する差異の技術的指針が与えられたといえよう。
(5) イベント船の生活排水等から生じる海洋汚染の防止対策に関する調査研究
 本事業の目的とするイベント船の生活排水等から生じる海洋汚染防止対策に対して、イベント船自体の意味するところを明確にしておく必要から、昨年度は諸文献とレジャー施設として利用される船舶、浮体構造物、また、必要に応じて陸上におけるイベントの事例等も調査対象に含めて実施した。
 今年度も引き続きヒアリング調査等を実施し、イベント船の概念を把握するための資料を作成して、今後の多方面に有効な参考資料を得ることができた。また、イベント船から排出される生活排水等の質的・量的検討について昨年度はイベント船の利用目的別に排水原単位を設定し、今年度はそれをもとにイベント船から排出される生活排水等の影響について詳細な検討を行うとともに、海洋汚染防止対策についても検討を行った。
 いずれも調査研究の初期計画を満たすものであって十分な成果を得たものといえよう。





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