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■事業の内容

(1) 副部特性推定法に関する現状調査
 文献調査範囲、レビューシートフォーム等を決定し、船舶以外の分野も含めて、国内外の20の学会誌等から、付加物のまわりの流れ、抵抗及び外挿法に関する文献を検索して40の論文リストを作成した。また、文献調査票の書式に従って、これら40の論文の概要をレビューし、多軸船の推進性能の推定手法に関する現状の技術レベルと、それらの手法の評価を行った。
 (担当場所:三井造船昭島研究所、石川島播磨重工業)
(2) 副部抵抗に関する尺度影響及び分離計測の研究
[1] 相似模型のシリーズ試験
 研究すべき基本的船型としてSR108の2軸1舵コンテナ船型を、主対象副部としてシャフトブラケットを採り上げることとし、軸系副部・舵等も検討して7m模型船を製作した。
 7m模型船による水槽試験は、船体裸殻状態の他に、3種の副部をそれぞれ装着または脱着した状態について抵抗試験を行い、副部抵抗の特性を検討する上での基礎データを得た。
(担当場所:船舶技術研究所)
[2] 副部抵抗分離計測の研究
 2.5mの2軸、ブラケット取換え式小型模型船を製作し、これとブラケットを用いて、付加物なし、ブラケットのみ装着、シャフト及びブラケットを装着、シャフト、ブラケット及び舵装着の4種類の抵抗試験を行った。また、2m模型を製作し、流れの可視化実験を行った。これらの計測データは次年度以降の尺度影響の研究に使用される。
(担当場所:九州大学、大阪府立大学)
(3) 副部周りの流れの研究
[1] 流場の実態把握実験
 (2)[1]項で使用した7m模型船について、軸系副部まわりの流場詳細計測のための計測機器準備、配置検討、データ処理手法の検討・整備を行った後、副部無し及び全副部付きの流場計測を行った。これらのデータは次年度以降の研究の基礎資料となるものである。
(担当場所:三菱重工業)
[2] 副部周りの抵抗特性評価の研究
 供試船型の基本的な流場を把握するために、副部無しの船体形状全体を2方向スプラインで表現したが、船首バルブと船尾プレートのために表現上の困難が多く、今後改良が必要であるが、これをもとに格子生成を行い、NSソルバーによる流場計算を行った。計算結果はファインな船型に対応して比較的単純な様子を示している。
 また、副部に相当する3次元翼まわりの流れを計算するプログラムを開発し、グリッドを生成して計算を行った。この計算は層流であるが副部としての楕円翼周りの流れの計算ができた。
 (担当場所:船舶技術研究所、広島大学)
[3] 部分モデル抗力計測及び流れの計算
 副部周り流れの数値解析技術として、適合格子を使ったものと直交格子を使ったものの2種のナビエ・ストークス式の解法を開発し、回転体などの単純物体まわりの流れの例でチェックした。その結果、これらの解法は物体形状と抗力の関係を検討する手法となりうることが明らかとなった。
 副部を想定した平板上の柱体まわりの流れの計算に必要なグリッドの発生法についての検討、べースとなる平板境界層の計算を終了し、柱体まわりの流れの2次元計算を行った。かなり粗い格子での計算であるが、定性的には妥当な結果が得られた。
 シャフトブラケット周りの伴流場について、ナビエ・ストークス方程式の差分解法により、2次元計算で流速ベクトル図並びに境界層及び伴流域の速度プロファイルを求めるための電算プログラムを作成し計算を行った。迎角によって境界層の発達が正面と背面で変ってくる興味ある結果が得られた。
(担当場所:東京大学、大阪大学、横浜国立大学)
■事業の成果

フェリーや客船などの多軸船では、ボッシングやシャフトブラケット等副部系の抵抗が船体の抵抗性能に考える影響が大きく、その船型計画や推進性能向上にとって重要な要素となっている。
 副部系の性能推定法には、相似模型船の水槽試験結果を利用するものと、副部個々の抵抗を計算で出すものとがあるが、両者とも未だ流体力学的に解明を要する課題が残されている。
 本研究はそのような状況を踏まえ、平成2年度から3か年計画で開始したものであるが、すでに述べたように、文献調査、7m模型船・2.5m模型船・2m模型船等による水槽実験、NS方程式等による数値計算を行って、副部抵抗特性を検討する上で必要な基礎データを得ることができた。これらのデータは次年度以降得られるであろうデータとあわせて詳細に解析され、副部抵抗推定精度向上とともにさらには多軸船の推進性能推定精度向上に寄与するものと考えられる。





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