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■事業の内容

(1) 模型試験とその解析
[1] 代表船型の決定
 本部会参加造船所を対象に、中型ばら積貨物船54隻の主要目等をアンケート調査、整理した。これらのうちから船型線図の提供、航海日誌の入手等も勘案して母船型を選定し、これをべースに船幅をかえたL/Bシリーズ4船型を決定し線図を作成した。
(担当場所:大島)
[2] 模型試験
 [1]項で作成した線図により4.5m模型船4隻を製作し、正面規則波中における波浪中馬力増加計測試験と波浪中低抗増加計測試験を行った。
 吃水は満載及びバラスト状態、速力はFn=0.10、O.17、波長はλ/L=0.4〜1.Oに於て試験を実施し、船幅と波浪中運航性能との関係を検討した。
(担当場所:大島<技セ>)
[3] 試験結果の解析
 波浪中模型試験の結果をもっと広範な主要目の船型に利用できるようにするため、波浪中性能推定の方法を調査し、それにより計算プログラムを作成した。その計算プログラムにより、シリーズ模型試験の波浪中抵抗増加計算、母船型の実船馬力増加・船速低下の計算及び模型試験と航海日誌解析結果との比較を行った。
(担当場所:阪大、九大、大島、サノヤス)
(2) 航海日誌の解析
[1] 解析方法の調査
 (1)[1]項で決定した代表船型に類似の主要目をもった実船2隻を選定し航海日誌を収集した。
 また、汚損影響、経年影響、波浪影響の取扱いについて検討し、解析手順をまとめた。
(担当場所:広大、常石)
[2] 解析
 a項の手順に従って2隻の航海日誌を解析し、波浪による船速低下について検討した。
(担当場所:広大、常石)
■事業の成果

近年、中手造船会社を中心に中型のばら積貨物船が多数建造されているが、現状では、主機関の小出力化の傾向に加えて、船型も肥大化しているので海洋波の影響をうけやすい。このため、実航海で所要の航海速力を維持する船舶の設計がより重要な課題となっている。
 従来、船舶の設計は平水中において必要速力を出すことに設計の重点がおかれてきたが、上記の理由から実航海上で要求速力と良好な推進性能を保つように、海運界からの要望が強くなっている。更に、この種の船舶においても高速化の兆しがあり、主機関出力の余裕が少ない中での運航性能の改善の研究はますます重要性が増している。
 本事業は、船舶の運航状況を航海日誌により調査するとともに、模型船による波浪中の推進性能試験及びその解析によって、実際の航海時の推進性能向上を研究することから、中型ばら積み貨物船の運航性能改善の指針を得、この種船舶の高性能化に資することを目的とする。
 このために本年度は、まず中型ばら積み貨物船の船型の近年の傾向を調べ、その平均的な船型を求めた。この船型を母船型として、“船幅変化の短波長中の推進性能に及ぼす影響に関する調査・研究”が模型試験、模型試験の解析及び類似船型を持つ実船の航海日誌の解析により行われた。これらの調査・研究の結果、
○ 船幅シリーズ4隻の模型船の水槽試験により,“船幅変化の短波長正面規則波中での低抗増加、波形低抗増加及び馬力増加に及ぼす影響”が明らかにされた。
○ 試験結果の解析、すなわち近年の理論を応用した低抗増加の計算結果と模型試験結果とを比較検討することにより、定量的には両者に差があるものの、定性的にはよく一致していることを示し、理論計算が“短波長正面規則波中での低抗増加に及ぼす船幅変化の影響”の検討に有効であることが明らかにされた。
○ 母船型と類似の要目を持つ2隻の実船の航海日誌の解析により、船底汚損マージン、実航海中での波浪マージン及び船速低下が明らかにされた。
○ 船速低下の理論計算結果と実船の船速低下とを比較することにより、船速低下の推定に理論計算が有効であることが示された。
等の多くの成果をあげることができた。
 来年度は、これらの研究をさらに発展させ、模型試験においては、喫水及び肥大度を変えて波浪中低抗増加及び波浪中馬力増加の計測を実施し、試験結果の解析においては理論計算の充実を図り、模型試験結果の応用を高めるとともに、航海実績のシミュレーション計算をも行う。また、航海日誌の解析も引き続き実施されるので、実航海中での運航性能のデータの充実が期待される。





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