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■事業の内容

(1) ハイリースキュードプロペラの流力性能に関する研究
[1] 実船プロペラ翼面圧力計測
a. 実船計測用圧力計開発
 圧力計としてPS-5KB及びPS-2KBを選定し、圧力計に対する翼曲げ歪の影響を除くためのアダプターの設計と模疑試験、及び圧力計の取付け方法についての検討を行った。これらの結果を考慮して、圧力計アダプターを製作し、これらの組立作業を行い、チャンバー方式の圧力計を製作した。コード保護用充填剤と圧力計の耐塩水試験を行い、電蝕等の化学反応が生じないことを確認した。
b. 圧力計取付工事
 プロペラ工場においてプロペラ加工を行った後、24個の圧力計取付け及び配線を行った。圧力計は0.7Rと0.9Rを中心にNo.<2>及びNo.<4>翼のバック面に各6個所、No.<3>翼のフェイス面に6個所、No.<5>翼のフェイス面とバック面に各3個所取付けた。
c. 圧力計測システム開発
 データの伝送方法としては模型試験結果から、有線テレメータ方式を採用することとし、FM有線テレメータの仕様及び設計方針の検討を行うとともにテレメータの設計・製作を行った。FMテレメータ送信機は6ch.であることから切換スイッチにより6ch.毎の計測システムとした。圧力計からの信号はプロペラキャップに取付けられた防水コネクタを介してプロペラ軸内に配線されたコードを通り、切換スイッチによりFMテレメータ送信機に伝送され、増幅された後、軸に取付けられたスリップリングを介してFM受信機に伝送される。受信機で得られたアナログ信号はデータレコーダに記録され、A/DコンバータによりAD変換され、パソコンによりデータ解析がなされる。
d. プロペラ翼面圧力計測実験
 供試プロペラ(青雲丸通常型)をプロペラ工場からドックまで運搬し、入渠した青雲丸に対して1O月23日〜27日の5日間プロペラ換装、配線工事、有線テレメータ取付け、その他計測準備工事を行った。
 実船実験は1989年10月27日〜11月2日に相模湾伊豆七島付近で行い、24個の圧力計により多数のデータを取得した。これらのデータは解析プログラムを作成して解析し、プロペラ1回転中の圧力は変化し、翼前縁ではバック面倒で右下り、フェイス面倒で右上りの傾向があること、回転数が変化しても圧力係数は変わらないこと、圧力係数の翼弦方向分布がM型を示すことなどが明らかとなった。
[2] トレーサーによる三次元流場計測
a. トレーサー放出システム開発
 青雲丸模型船の船尾部から放出した多数のトレーサー球を3台のテレビカメラで撮影し、これらの画像を電算処理して伴流分布を求め、トレーサーの放出位置、計測法及び解析法等の検討を行った。また、実船におけるトレーサー放出位置、カメラ位置等を決定するとともに、トレーサー放出装置を製作して作動チェックを行った。
b. 流暢計測システム取付工事
 カメラ水中容器を製作し、入渠中の青雲丸船尾部に各機器誘導管、各機器台等を溶接し、計測機器としてCCDカメラ3台、ストロボ装置1台、トレーサー放出装置工合を取付けた。
c. 洗場計測実験
 青雲丸によりa.項の圧力計測と同時期に計測を行った。予定した90,110,149RPMのうち、110RPMは装置の故障で計測できなかったが、他の条件については予定通りデータを取得できた。
 これらの計測データについては、電算処理して伴流分布図を作成した。

(2) ハイリースキュードプロペラの強度に関する研究
[1] 実船プロペラ翼応力計測
a. 歪ゲージ・センサー取付工事
 実船プロペラ用の翼応力計測法を検討するため、歪ゲージの性能、取付方法、接着剤等を調査し、歪ゲージとしてKFW-5-D16-11-L500を選定した。また、翼応力計測用の応力増幅回路の仕様について検討し、応力増幅回路を製作した。歪ゲージの取付けについては予備試験を行って取付法を確認した後プロペラのNo.1翼フェス面0.7R,0.8R及び0.9Rの3点に貼付け、配線、防水工事等を行った。
b. 翼応力計測
 実船プロペラ(通常型)の翼面圧力と同時にドック内工事を行い、計測システムをチェックした。実船計測は他の実験と同時に翼面上3か所の点について行われた。計測データは歪〜翼角度位置線図にまとめた。この結果、プロペラトップ付近及びボトム位置の圧力のピークに対応して歪にもピークの現われることがわかった。
■事業の成果

ハイリースキュードプロペラは通常型プロペラと同等またはそれ以上の性能を持ち、プロペラ起振力を減少させる効果が期待されるため、多種多様の船舶に採用されている。そのため折損や曲損等の事故の報告も時おり見られる。このような事故を未然に防止するためには、翼応力の解析方法による計算精度が確認されていなければならず、実機プロペラの船後での作動状態における応力集中部位付近の翼応力の実態、及びその基礎となる翼面圧力分布の状態を実船によって把握する必要があり、実船試験を行ってハイリースキュードプロペラ特有の問題点を明らかにして、さらに安全で高性能なハイリースキュードプロペラの実現を図ることを目的として本年度から2か年計画で研究が開始された。
 本年度は、練習船青雲丸を利用して、通常型プロペラに圧力計及び歪ゲージを取付けてプロペラ翼面の圧力と応力を計測するとともにトレーサー方式による船尾流場計測を行い、多量の有益なデータを取得できた。
 これらの計測データは、次年度に行われる予定のハイリースキュードプロペラ実船試験の結果とあわせて総合的に解析し、翼強度設計に係る資料として利用される。





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