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■事業の内容

(1) 有害液体物質の防除資機材に関する調査研究
[1] 浮遊性物質に対する防除資機材の検討
 本年度実験物質(9物質)に対する排出油防除資機材(油ゲル化剤、油吸着剤)及び泡消火薬剤の適応性を評価するとともに、前年度実験物質(14物質)に対する評価結果を総合して浮遊性物質に対する排出油防除資機材の適応性を検討したところ、物質によってかなりばらつきがあるものの総体的に回収、蒸発ガスの抑制等の効果があり、適用できることが判明した。
[2] 沈降性物質に対する防除資機材の検討
a. 回収又は無害化の検討
(a) 一般資機材の応用
 エアリフトしゅんせつ機、水中サンドポンプ及び地盤改良工法について、その原理を調査し検討したところ、沈降性物質に対する専用防除資機材を開発するうえでそれらの原理が応用できることが判明した。
(b) 化学処理の検討
 沈降性物質のうち特に配慮すべき特性をもつ物質を23物質選定したうえ、その化学反応性等を調査し検討したところ現在のところ、海底に沈降した有害液体物質を無害なものにする適当な化学処理はないことが判明した。
(c) 固化処理の検討
 セメント又は油ゲル化剤を用いた固化回収又は、封じ込めについて、沈降性物質の防除手法としての有効性を調査し検討したところ、攪拌混合及び回収装置の開発によっては、回収効果が期待できるが海底にき封じ込むことは、困難であることが判明した。
b. 水槽実験
(a) 浮難物質に対する排出油防除資機材の適応性を前年度に引き続き水槽実験により調査した。
イ. 処理薬剤(供試資材) 油ゲル化剤、油吸着材泡消化剤
ロ. 対象物質      浮遊性物質9物質
ハ. 実験結果      ばらつきはあるが、物質によっては、適応性があり、回収等に効果があることが判明した。
(b) 沈降性物質に対する防除に用いられる油ゲル化剤及び固化材について海底での実用性を水槽実験により調査した。
イ. 供試資材  油ゲル化剤(2種)セメント等固化剤(3種)
ロ. 対象物質  沈降性物質ゲル化実験(20物質)
固化実験(10物質)
ハ. 実験結果  理想的な海底の状況であれば、物質によっては、海底で使用できることが判明した。
[3] 防除資材開発の基礎調査
 有害液体物質の物性、特性に適応した専用資機材の開発に際し、具備すべき性能、要件等に関する資料を収集した。
(2) 流出油監視システムに関する調査研究
 前年度の調査研究を踏まえ次の調査検討を行い、流出油の漂流状況を常時監視可能な油の監視システムの確立を図った。
[1] 追跡ブイシステムの検討
 油の漂流に同期する追跡ブイシステムに関し次の検討を行った。
a. 取扱性
重量 :筐体部約15kg、電源部約1kgとした。
容量 :球形筐体部(直径300mm)とし、円錐形筐体部(直径330mm×高さ398mm)とした。
耐衝撃:高度20mからの投入に耐える構造とした。
b. 安全性
動揺  :傾斜角を風速15m/sにおいて20度以内とした。
油の種類:C重油相当油とし、追従性を検討することとした。
c. 監視限界
電波確認距離:距離約10海里(20km)とし、電界強界は20dB以上を確保することとした。
気象条件による減衰:天候により測定に支障を来さないものとした。
[2] 流出滴監視システムの確立
 試作したブイを実海域において漂流させ、疑似油に対する追跡状況調査及び発信機の電界強度測定調査を行い、流出油監視システムを確立した。
a. 海上実験
試作ブイ:球形(形状比0.7、1.1)2基及び円錐形(形状比0.9、1.1)2基を使用した。
実施場所:神奈川県江ノ島沖南2海里付近海域とした。
実験項目:イ. 追跡ブイと油(疑似油)の漂流同期性
ロ. 追跡ブイの位置決定法
b. 電界強度測定実験
試作ブイ:球形を使用
実施場所:電波発射位置 広島県福山市鞆町沖合海面
電波測定位置 岡山県玉島審島及び福山市海岸とした。
実験項目:イ. 電波の到達限界(電界強度測定)
所定の電界強度を上回る測定値を得た。
[3] 防除処理手法へのシステム化
 海上実験及び電界強度測定実験結果をもとに追跡ブイの実用化のための検討を行い、防除処理における追跡ブイの使用方法の確立を図った。
■事業の成果

本事業の完成により、調査研究項目ごとに次の成果をあげることができた。
 今後、この成果を活用することにより、海洋汚染及び海上災害の防止に大きく寄与するものと期待される。
(1) 有害液体物質の防除資機材に関する調査研究
 本調査研究は、船舶の海難事故等に起因して流出した有害液体物質の防除処理システムの確立を図ることを目的に昭和63年から3か年計画で進めているもので、本年度はその2年目である。
 本年度は前年度に引き続き浮遊性物質に対する資機材の有効性について評価するとともに、沈降性物質に対する資機材について油防除資機材のほか土木資機材の原理の応用、化学処理の方法等から検討を行い、それらの手法に用いる資材について水槽実験により実用性を調査した結果、物質によっては油吸着剤、油ゲル化剤、消火薬剤等の有効性が認められ、更に、専用資機材として開発するうえで土木資機材の原理の応用が可能であるとの結論を得た。
 この結論を踏え、次年度は、流出事故現場における効率的な資機材の運用を検討し、有害液体物質の防除処理システムの確立を図ることとした。
(2) 流出油監視システムに関する調査研究
 本調査研究は、流出油事故における油の漂流状況を常時確認することが可能な油の監視システムを確立するため、昭和63年度から2カ年計画で実施した調査検討結果の成果である。
 本集度は、前年度の調査をもとに球形及び円錐形のブイを改良試作し、実海面における油への追従性及び搭載無線機の電界強度測定を行った結果、球形・円錐形とも形状比を変えることにより流況の変化に対応した追従性を確保することができ、また、電界強度については所定の数値以上のものが得られ、いずれのブイも流出油の監視に適するとの緒論を得た。
 また、ブイを実用化するにあたり流出油監視システム及び防除処理手法等並びに災害発生を想定したブイの使用方法等を併せ検討し、初期の目的とする流出油の監視システムを確立することとなった。





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