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■事業の内容

(1) 海洋汚染防止に関する国際対策の調査研究
[1] 調査方法
 委員会を開催し、IMO委員会に対応するための調査研究並びに対処方針を策定し各実施項目の研究の推進方法等を検討し、報告書をとりまとめた。
 作業部会を設置し、油水分離器に関する試験仕様及びケミカルタンカーの予備洗浄方法について調査を行い、IMOへのわが国の対応を検討した。
[2] IMO会議への代表の派遣
 IM0で開催されたMEPCへ2回、BCHへ1回、それぞれ代表を派遣し資料の収集、翻訳及び審議内容を解析し、わが国の対処方針並びに国内法への対応を審議した。
a. 第19回BCH
(a) 開催日   平成1年9月11日〜15日
(b) 開催場所  ロンドン
(c) 調査員   海洋汚染防止研究部主任研究員 木畑幸延
b. 第28回MEPC
(a) 開催日   平成1年10月17日
(b) 開催場所  ロンドン
(c) 調査員   海洋汚染防止研究部主任研究員 名和純二郎
c. 第29回MEPC
(a) 開催日   平成2年3月12日〜16日
(b) 開催場所  ロンドン
(c) 調査員   海洋汚染防止研究部部長代理 池上武男
[3] 資料の収集、解析
 海洋汚染防止関係の国際会議等の資料を収集し、翻訳、及び解析を行い報告書に盛り込んだ。
[4] 報告書の作成
a. 部数   200部
b. 配布先  委員会及び関係官庁団体、図書館、教育機関等
(2) 海上流入物質の海洋生態系に及ぼす影響の調査研究
[1] 調査方法
a. 委員会を開催し、調査研究方針を決定し委託事項の中間検討、最終審議等を行い、報告書をとりまとめた。
b. 「船底塗料(有機スズ化合物を含む)の海洋環境に及ぼす影響に関する調査」に関し、千代田デイムス・アンド・ムーア(株)に研究業務を委託して実施した。
[2] 調査の概要
 TBTの海域における挙動、海域の汚染状況、及び生物に対する毒性影響等に関する文献・資料の収集整理を行った。
 船舶の船底塗料を負荷源とした場合の東京湾におけるTBT分布の予測を行い、これを昨年度の分布状況実測結果と対照することにより、船舶の船底塗料が東京湾内のTBT濃度に及ぼしている影響度の検討並びに評価を行った。
[3] 報告書の作成
a. 部数   200部
b. 配布先  委員会及び関係官庁、団体、図書館、教育機関等
(3) MARPOL73/78条約附属書<6>に関する調査研究
[1] 調査方法
a. 委員会を開催し、調査方針の検討、アンケート解析結果の審議、委託研究の結果の審議等を行い、報告書をとりまとめた。
b. 「MARPOL73/78条約附属書<6>に関する調査のばら積み固形物質の実態調査」に係る研究業務を千代田デイムス・アンド・ムーア(株)に委託して実施した。
c. アンケートによる実態調査
(a) アンケート調査対象(郵送)
内航船舶 1,000隻
外航船舶 1,000隻
(b) アンケート調査項目
イ. 船舶の一般的な事項について6項目
ロ. 最近の3航海毎のばら積み貨物について、19項目
[2] 調査の概要
 ばら積み有害固形物質により海洋汚染防止の規制に係る国際的動向に対応するため、わが国における当該物質の運送及び処分の実態調査を実施、結果をとりまとめ報告書にとりまとめた。
[3] 報告書の作成
a. 部数   50部(コピー製本)
b. 配布先  委員会、関係官庁等
(4) 浮体構造物に係る環境影響評価技術指針に関する調査研究
[1] 調査方法
a. 委員会を開催し、前年度の検討結果を踏まえ、大規模浮体構造物の環境影響評価手法について個別事項の検討を行い報告書をとりまとめた。
b. 「大規模浮体構造物の環境影響評価手法に関する個別事項の詳細な調査」に係る研究業務を新日本気象海洋(株)に委託して実施した。
[2] 調査の概要
a. 適用範囲の検討
 環境影響評価の適用範囲構造物の規模、工事中、存在、利用及び撤去の期間等の要素別に整理した。
b. 評価手法の指針策定のための整理
 浮体構造物の環境影響要素と環境構成因子の関連についてマトリックスを作成しその影響内容と予測手法の考え方について整理した。
 また、環境変化の予測手法として用いる流動・生態系予測モデルについて検討した。さらに、大規模浮体構造物のモデルと想定し、これに基づき、環境影響評価のケーススタディーについて検討した。
[3] 報告書の作成
a. 部数   50部(コピー製本)
b. 配布先  委員会、関係官庁等
(5) イベント船の生活排水等から生じる海洋汚染の防止対策に関する調査研究
[1] 調査方法
a. 関係官庁及び本研究に精通する学識経験者等により構成する委員会を年4回開催し、調査研究方針及び調査研究結果の検討を行った。
b. ヒアリング調査及びアンケート調査を行った。
c. 新日本気象海洋(株)に調査を委託した。
[2] 調査項目と内容
a. 既存の文献資料を収集整理するとともにイベント船、係留船及び港湾管理者等関連する船舶並びに専門家や団体に対するヒアリング調査及び電話によるアンケート調査を実施してイベント船の事例と計画の概要を整理し、その実態の把握に努めた。
b. 上記a.より得た結果等を基に、本委員会において汚染物質の質的、量的な問題の検討を重ねた。
[3] 調査結果の概要
a. イベント船自体の概念及び定義付けを行った。
b. イベント船の利用形態を取りまとめた。
c. イベント船の利用に伴う生活排水等の発生原単位を検討し、推定値を求めた。
d. 生活排水及び廃棄物の処理システムの実態を取りまとめた。
e. 関連する陸上イベント等の事例及び処理状況を取りまとめた。
f. 関係法令及び港湾施設を取りまとめた。
[4] 報告書の作成
a. 部数   50部
b. 配布先  委員、関係官庁等
■事業の成果

(1) 海洋汚染防止に関する国際対策の調査研究
 海洋環境保護委員会及びバルクケミカル小委員会の開催に合せて、委員会を開催し、国際会議に対するわが国の対処方針の策定ならびに条約の国内法への円滑かつ適正な導入につき、関係官庁及び関係業界の意見の統一、調整を行った。また、第19回バルクケミカル小委員会、第28回、29回海洋環境保護委員会へ代表を派遣し、政府代表を補佐するとともに作業部会に参画して、わが国の意見反映に努めた。
 また、特別に調査研究を要する問題として、総会決議A.393(X)(油水分離器及び油分濃度計の性能と試験仕様に関する勧告)の改正案のうち油水分離器の試験仕様に関する調査及びケミカルタンカーの予備洗浄方法の調査を作業部会を設置して検討し国際会議へ対応するための資料をまとめることができた。
(2) 海上流入物質の海洋生態系に及ぼす影響の調査研究
 船底塗料等に含まれる防汚剤(TBT)が、海洋環境に及ぼす影響については社会的な関心がますます高まり、汚染状況の調査から汚染防止対策の策定へと進む状況にある。このため、船舶の運航性能保持への影響を最小限に止める一方で、海洋環境の保全を図っていくことは緊急の課題となっている。
 本事業では、昨年度の事業の波果をフルに活用して、東京湾における船底塗料中のTBTが海域の環境に及ぼす影響度を評価するためのシミュレーションを開発した。このシミュレーションは、世界にさきがけて船舶の航行と環境中濃度の関連を定量的に調査したものであり、上記の汚染防止対策を策定する上で、極めて重要な手法となるであろう。
(3) MARPOL73/78条約附属書<6>に関する調査研究
 事業の目的である「ばら積み固形物質による海洋汚染」の問題を解決するためには、先づ実態を把握することが必要であり、このため、わが国における輸出入、移出入を含めた「ばら積み固形物質」を運送する内・外船舶2,000隻を対象にアンケート調査を行った。
 アンケートの調査結果を解析し、わが国船社が運航する船舶で海上輸送されているばら積み固形物質の荷役に伴って発生する荷粉(貨物残留物)を貨物種類別に、その量及び海中に処分される量を年間ベースの推測値として算出しばら積み固形物質の種類別海上処分量を把握した。このような調査は外に例がなく、今後ばら積み固形物質の運送に伴い海上で処分される荷粉が、海洋環境に及ぼす影響を検討し、MARPOL73/78条約新附属書<6>の策定に関する基礎的なデータを得ることができた。
(4) 浮体構造物に係る環境影響評価技術指針に関する調査研究
 本調査研究は、3カ年計画として、作業を進めているが、本年度はその第2年度として、浮体構造物の環境影響評価のための諸項目に対して、それぞれを個別課題として、より詳しく検討した。
 具体的には、浮体構造物の特殊性にともなって必要とする長期的評価についての確認、浮体構造物設置海面の流体的諸要件の変化に対して、流動モデル解析手法を導入しての検討、及び浮体構造物周辺の海域の生物系あるいは生態系の変化に関する予測等について、文献調査も含めて実施した。
 さらには大規模浮体構造物として、1,100m×1,000mの集合浮体構造物を想定して、これが特定海域に設置された場合について、ケーススタディーとして本件の環境影響評価を検討した。そのため当該海域の海水流動変化の試算方法あるいは生物に対する影響の解明手法の検討等を実施した。
 以上の諸検討内容は、今後の環境影響評価の一般的手法の確立に対して、有効な資料とすることができた。また同時にそれぞれ内蔵される問題点が、次年度への課題として指摘された。
(5) イベント船の生活排水等から生じる海洋汚染の防止対策に関する調査研究
 近年の海洋レジャーへの関心が高まる中で、イベント船開発計画が関係各方面で企画され、あるいは提示されている。こうしたイベント船は、イベント開催中に一度に不特定多数の人員が乗船し、それに伴う生活排水等が今後新たな汚染源となり海洋環境に悪影響を及ぼすことが予想され無視出来ない問題である。
 そこで本年度は、イベント船の一般的概念と類似の船舶を利用したレジャー、リクリエーション施設の事例及び陸上イベントの事例について文献、ヒアリング及びアンケートを行って調査し、イベント船の生活排水等から生じる海洋汚染の影響を検討するための排水及び汚濁負荷の発生原単位に関する調査を行いイベント船の利用形態と生活排水等の処理実態を含め一般的な特徴と概念を把握するための資料を得ることができた。
 また、汚染物質の質的、量的評価について汚濁負荷量算定のための基本的な検査を行い、イベント船の利用目的別の排水、汚濁発生原単位を得ることができた。
 これによって、イベント船の具体的な生活排水等の海洋への影響評価及び海洋汚染防止対策に関する貴重な基礎資料を得ることができた。





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