日本財団 図書館


■事業の内容

(1) 輸出船市場調査研究
 輸出船市場調査研究委員会を3回(7月13日、12月22日、2月23日)開催して、内外の資料をもとにオセアニアおよび中近東諸国の船舶事情等を審議し、報告書(エリア5,6,21各150部)を作成・頻布した。
[1] 調査対象国
エリア 5:太平洋諸島(含パプアニューギニア)
エリア 6:サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦、オマーン
エリア21:ニュージーランド、オーストラリア
[2] 調査研究項目
a. 一般事情
b. 船舶事情(保有状況、海運事情と保有船主の実態、需要状況、船腹拡充計画)
c. 港湾事情
d. 造船事情
e. 漁業事情(漁業の実態、漁業開発計画、漁船保有状況)
f. 船舶の輸入ルート
(ライセンス発給機関、輸入に対する機構その他輸入上の問題点、輸入資金の調達状況、契約条件、取引ルート)
g. 競争相手国との競争条件の比較
(延払い、船価、品質等条件の比較、輸出対策、歴史的経済的つながり)
h. 輸出実績
i. 評価
[3] 配布先
運輸省             12
日本造船工業会          1
日本船舶輸出組合         2
日本舶用工業会          1
日本舶用機械貿易振興会      7 
輸出船市場調査研究委員会委員
および設計資料作成委員会委員  21
会員              70
 事務局在庫           36  
計  150

(2) 海外市場調査
[1] 予備調査
 次の機関に対して予備調査を行った。
Ministryof Road and Transport,
The Government of the Islamic Republic of Iran
Ports and Shipping Organization
National Iranian Tanker Co.
Islamic Republic of Iran Shippong Lines
Irano-Hind Shipping Co., Ltd.
Noah Shipping Co.
[2] 調査員の募集および選考
 イラン市場調査員の募集を行い、輸出船部会(2月23日)において次の2名を選考し、会長の任命を受けた。
若松造船(株)  主事  渡辺  博
事務局         服部  要
[3] 調査打合せ(2月27日、3月2日)
 下記調査項日について打合せを行った。
a. 船腹拡充計画(経済協力船を主とする)
b. 輸送量実績と今後の見通し
c. 日本を除く外国からの船舶の供与状況
d. 現地道存船の選定
e. その他経済協力船の供与促進に関する事項
 調査訪問先および調査方法等について打合せを行った。
[4] 調査時期
 当初実施時期を9月に予定し国内で情報の収集分析を行っていたが、ホメイニ師の死去等により同国指導部内に変化が生じたため実施時期を第3/4半期に延期し、国内にて情報の収集を行った。その後引続き調査を行っていたところ、同国の国内事情(5ヶ年計画の発表、借款受入体制の決定等)が判明し調査の可能桂が確認できたので第4/4半期に実施することとし、3月5日〜12日に実施した。
[5] 調査員派遣、現地調査
 3月5日〜12日の間、前記調査員2名をイラン(テヘラン市)に派遣し、[3]の項目について現地調査を行った。
訪問先
Ministry of Road and Transport,
The Govemment of the Islamic Republic of Iran
Ports and Shipping Organization
National Iranian Tanker Co.
Islamic Republic of Iran Shipping Lines
Irano-Hind Shippng Co., Ltd.
Noah Shipping Co.
その他
[6] 報告書の作成・頒布
 調査報告書(150部)を作成し、関係者に配布した。
運輸省              12
日本造船工業会          1
日本船舶輸出組合         2
日本舶用工業会          1
日本舶用機械貿易振興会      7
輸出船市場調査研究委員会委員
および設計資料作成委員会委員   21
会員               70
 事務局在庫            36  
計  150

(3) 海外普及説明会
[1] 設計資料作成委員会を3回(7月13日、11月15日、2月23日)開催して、下記5船型の仕様概要および原価見積書について審議し、説明会用資料を作成した。
設計資料
32,000 DW BULK CARRIER
6,000 DW PHOSPHORIC ACID TANKER
6,000 DW PRODUCT CARRIER
340 GT FISHERY TRAINING VESSEL
1,500 DW L.P.G. TANKER
[2] 普及説明員の募集および選考
 普及説明員の募集を行い、輸出船部会(2月23日)において次の3名を選考し、会長の任命を受けた。
(株)三俣造船所  取締役東京事務所長  植田 敏文
神例造船(株)   取締役営業部長    根本 三郎
事務局                 坂本  一
[3] 普及説明員派遺時期
 派遣時期については、当初の予定(1月)を現地機関の都合により3月4日〜10日に繰延べた。
[4] 普及説明員派遣、説明会開催
 3月4日〜10日の間、前記普及説明員3名をモロッコ(カサブランカ市)に派遣し、前記5船型の設計資料および仏文パンフレットを用いてカサブランカ・ハイアット・リージェンシー・ホテルにおいて説明会(3月7日、8日)を開催した。
■事業の成果

(1) 輸出船市場調査研究
 今回の調査対象国はオセアニアおよび中近東の国々である。 
 まず太平洋島しょ国の多くは資源に乏しく、また主要産業も農業が主体であるため工業製品の多くを輸入に頼らざるを得ず、このため財政事情が悪く海外からの援助が不可欠となっている。これらの国々は四囲を海に囲まれ、船舶は極めて重要な輸送手段といえるが、船社の多くは小規模で資金面でも余裕が無く、また政府も財政難の状態にあることから海運に対しては十分な投資が行われていない模様である。従って、これらの国々においては必要とする船舶は中古船の輸入によってまかなうか、もしくは先進諸国からの経済協力船の供与により調達するのが一般的であるが、いずれの国も経済規模が小さいため、その絶対量は極めて少ないのが実情である。
 同じくオセアニアにあってニュージーランドは農業部門を経済発展の基盤として高い生産性をあげている。しかし、海運に関しては外国の海運会社に大きく依存しているため同国の船腹保有量も約34万GTと少なく船舶需要の活性化は当面見込めそうもない状況である。
 また、オーストラリアは豊富な資源に恵まれ、農業、鉱工業ともに順調な発展を遂げている。対外貿易量も年々増加しており、これに対応するため外航船舶の整備・拡充が必要とされているが船型が大型であり、かつ、韓国、中国が同国に対して輸出船実績を有するに至っていることなどからしてオーストラリアは中小型船の輸出市場としてはあまり期待できない状況である。
 次に中近東地域のサウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦およびオマーンは他の産油国と同様に石油精製、石油化学工業の開発に努め原油よりも精製品、石油化学製品として付加価値を高めた製品の輸出拡大を図っている。これらの国々に対するわが国からの船舶輸出は主として各種の港湾作業船であったが、最近は実績が少なく、また、引合もほとんど寄せられていない。これはイラン・イラク戦争の影響に加え、韓国の同地域への進出によるものと考えられる。これらの国々における石油化学工業の進展に伴い今後ケミカルタンカー等の需要が活発化することも予想されるので今後とも同地域の経済事情、海運事情等について調査研究を実施するとともに広報宣伝活動を通して斯業の優位性をPRする必要があろう。
 以上のように今回の調査研究により対象国の基礎資料を整備し今後の輸出対策樹立の指針とすることができた。
(2) 海外市場調査
 8年に及ぶイラン・イラク戦争も漸く停戦となり戦後復旧に向って始動しているイランの船舶需要の調査、現地道存船の把握、経済協力による船舶供与の実現促進を図るため本市場調査を計画した。
 9月実施を目標に国内において情報を収集していたが途中、ホメイニ師の死去に伴う国内指導部内に変化が生じたため調査時期を第3/4半期に延期し引続いて情報収集等調査を行っていたところ平成元年年末に至り漸く現地調査の可能性が確認でき、また同国政府の経済開発5ヵ年計画、借款受入れの承認発表等同国の国内情勢が明らかとなった。
 このため急速現地関係機関への予備調査(下記6カ所[1]〜[5])、調査員の募集・選考を行い3月5日から3月12日の間に市場調査を実施した。同国の市場調査に当り全般的に戦後復旧への力強い息吹きが感じられた。
 以下、訪問した個々の関係機関との面談結果は次の通りである。
[1] Ministry of Road and Transport(MORT)
Managing Director & Republic of Minister of MORT
 MORTの傘下にIRISL,PSOがあり、個々に独立して船舶の保有、運航を実施しており、海運についての情報は得られたかった。
[2] Ports and Ship Ping Organization(PSO)
Dirctor General (Equipment)Mr.Keyhan Kermani
Manager (Technical)Mr.Sajerib
Managing Director Mr.M.Madad
 MORTの傘下にあり主要6港を管轄しており、所有船舶は24隻(Tug Boat 16隻、Dredgre8隻)を所有しており、これらの中には日本から輸入の7隻が含まれている。この他Service Boat数隻を所有している。
 港湾整備、拡充工事に伴いTug Boat,Dredger 等10数隻の建造計画に従い既に実行に移っている。
[3] National Iranian Tanker Co.(NITC)
Technical Manager(Offshore) Mr.Shojaian
Commercial Director  Mr.J.Mosaddeghi
他3名
 石油省傘下にあるイラン最大の国営タンカー会社であり現在28隻(5,560,000DW)のタンカーを所有しイラン原油の40%を輸送している。VLCC 20隻の長期建造計画を有し、既に建造実行に入っており、うち5隻は韓国に決定している。この他、作業船を31隻保有しておりその大部分は日本からの輸入船である。今後、石油生産量の増加に伴いタンカー及びこれに付随する作業船等が増加すると思われる。同社では特に5ヵ年計画に拘らず必要に応じて船舶建造を進める方針をとっている。
[4] Islamic Republic of Iran Shipping Lines (IRISL)
Shipmanaging Direclor  Mr.Madimi
Technical Advisor    Mr.S.H. Tavalla
 運輸省傘下の同国最大の国有海運会社であり現在80隻(約1,300,000GT)の船舶を保有している。同社は従来中古船により船腹拡充を図ってきたが近年では新造にも力を注いでおり1984年〜85年には韓国から20隻のBulk Carrierを購入し1988年にはブルガリアに2隻を発注している。今後の計画としてはGeneral Cargo,Bulk Carrier,Cargo Passenger等40隻の建造計画を有しているが、予算配分等の関係で公式発表とたるのは早くとも1年後となる模様である。この他に小型船など20隻の購入計画を持っているが未だ具体化していない。
[5] Irano-Hind Shipping Co.Ltd.
Vice Chairman    Mr.M.H.Dajmar
Managing Director  Mr.A.MMakhmali
Noa Shipiing Co.
Managing Director  Mr.M.Nego
 前者はインド海運公社との合弁会社、後者はPrivate Co.であり、夫々隻、1隻の船腹を保有しているが、その規模も小さく拡充計画も持っていない。
[6] SYLAT(国営漁業公社)
Technical Deputy  Mr.H.Saadi  Mr.D.Dadoo
 30隻(10,449GT)の漁船を保有しており5カ年計画の中で漁船(100〜1,000GT)123隻の建造計画を持っている。同国の造船能力は弱小であるため、これら船舶の殆どは対外発注されることになろう。戦乱により同国の外貨事情は苦しい状況にあるため、これら計画が完全実施されることは考えられないが今後順次わが国へも引合が寄せられるものと思われる。但し小型船で国内建造可能なものについては国内造船所育成のためIMICO(Iran Marine Indusry Co.)等を優先させる方針をとっている。
 一方、借款については既にその受入承認を国会で表明しているが、イスラムの錠も絡み未だ釈然としないものがあり、その取扱いについては慎重を期す必要がある。特に船舶についてはGNP、停戦相手国への刺激問題点があり現状では困難な模様である。
 以上のようにイランにおける船舶需要、経済協力への対応策が明らかとなったので本調査結果を基に今後の輸出対策の樹立、輸出の促進が図られる。
(3) 海外普及説明会
 普及説明員(3名)は3月4日成田を出発し現地カサブランカには3月5日に到着した。翌6日説明会会場となるカサブランカ・ハイアット・リージェンシー・ホテルの会議室を点検し前もって送ってあった設計資料(下記5船型・各30部)及び仏文中造工パンフレット(50部)を準備した。3月7日、3月8日の2日間、同会場にCOMPAGNIE MAROCAINE DE NAVIGATION社のMr.A.ALAOUI(President)、Mr.OMAR BENNANI(Secretary General)Mr.A.ALLOUCH(Director)Mr.M.BENJELLOUN(同)Mr. FRATA(同)等、同国海運会社首脳約40名を招待し仏文中道エバンフレットを配布して斯業の優位性をPRするとともに設計資料5船型の現地道存性について説明、宣伝し需要の醸成を図った。2日間の説明会を終了し3月9日帰路についた。
 モロッコは地中海と大西洋を結ぶ海運上の要衝に位置し海運の重要性は古くから認識されており海運力の整備拡充が図られている。我が国からも同国に対し、リーファー、タンカー、バルクキァリア、漁船等、計18隻の船舶を輸出している。一方、同国は世界最大の埋蔵量を誇る燐鉱石(主として中国向け)、豊かな水産資源をテコに経済発展に努めており、我が国からも燐鉱工業、水産業等の振興のため経済協力、技術協力が実施されている。特に漁業振興について経済協力船として漁業訓練船が無償供与されている。このようにモロッコの保有船舶は徐々にではあるが着実に質、量ともに向上、増大してきている。
 当会ではかねがね同国の中小型船舶の市場性について調査研究してきたが今回局国に普及説明員(3名)を派遣し船舶関係者を一堂に招いて斯業の優位性を充分PRするとともに設計資料5船型の現地適存性について説明、宣伝を行ったので後日、必ずやその成果が上るものと確信する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION