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■事業の内容

(1) 輸出船市場調査研究
 輸出船市場調査研究委員会を3回(6月8日、12月23日、2月17日)開催して、内外の資料をもとに9か国の船舶事情等を審議し、報告書(エリア2、3、4、7、8各150部)を作成・頒布した。
[1] 調査対象国
エリア 2  ビルマ、マレーシア
エリア 3  インド、パキスタン、スリランカ
エリア 4  フィリピン
エリア 7  トルコ
エリア 8  チュニジア、モロッコ
[2] 調査研究項目
a. 一般事情(政治、経済、産業、貿易)
b. 海運事情(一般事情、船主の実態とその保有船舶、海外荷動需要の現状、海運政策)
c. 船舶事情(船舶保有量、船腹需要、船腹拡充計画)
d. 漁業事情(漁業の実態、漁船保有状況、漁業開発計画、漁船拡充計画)
e. 造船事情(造船所の実態、建造能力、造船政策)
f. 港湾事情(含、開発計画)
g. わが国からの輸出実績及び輸出対策
h. 評価
[3] 配布先
運輸省            11
日本造船工業会         1
日本船舶輸出組合        2
日本船用工業会         1
日本舶用機械貿易振興会     7
輸出船市場調査研究委員会委員
及び設計資料作成委員会委員  20
会員             71
 事務局在庫          37 
計        150
(2) 海外市場調査
[1] 調査員
寺岡造船(株) 代表取締役社長  寺岡 義一
金川造船(株) 技術担当部長   辛島 光二
事務局             白樫  薫
[2] 調査内容
 下記調査項目について打合せを行った。
a. 船腹拡充計画(経済協力船を主とする)
b. 輸送量実績と今後の見通し
c. 日本を除く外国からの船舶の供与状況
d. 現地適存船の選定
e. その他経済協力船の供与促進に関する事項
[3] 予備調査
 次の機関に対して予備調査を行った。
フィジー
・ Ministry of Communications, Transport and Works
・ South Pacific Bureau for Economic Co-operation
・ Fiji Marine Shipyard
西サモア
・ Ministry of Transport
・ Ministry of Finance
・ Western Samoa Shipping Corporation
[4] 調査員派遣、現地調査
 11月14日〜21日の間、前記調査員3名をフィジー及び西サモアに派遣した。
訪問先
フィジー
・ Marine Department, Ministry of Transport
・ Fiji Marine Shipyard
・ Inter-Ports Shipping Corporation Ltd.
・ Patterson Brothers Shipping Company Ltd.
・ School of Maritime Studies, Fiji Institute of Technology
・ 在フィジー日本大使館
西サモア
・ Prime Minister
・ Ministry of Finance
・ Ministry of Transport
・ Western Samoa Shipping Corporation
・ Samoa Shipping Service Ltd.
・ Pacific Forum Line
[5] 報告書の作成・頒布
 調査報告書(125部)を作成し、関係者に配布した。
運輸省            11
日本造船工業会         1
日本船舶輸出組合        2
日本舶用工業会         1
目本舶用機械貿易振興会     7
輸出船市場調査研究委員会委員
及び設計資料作成委員会委員20
会員             71
 事務局在庫          12 
計        125
(3) 海外普及説明会
[1] 下記5船型の仕様概要、原価見積書及び英文貨物船パンフレットについて審議し、説明会用資料を作成した。
(設計資料)
・ 500GT  漁業訓練船
・ 3,OOODW 貨物船
・ 2,500DW L.P.G.タンカー
・ 3,O00GT トレーニングボート
・ 3,000GT カーフェリー
(英文パンフレット)
・ 英文貨物船パンフレット
[2] 普及説明員
今治造船(株) 代表取締役副社長  檜垣 文昌
(株)新潟鉄工所 理事       斉藤 育夫
事務局     常務理事     岩下 卓二
[3] 普及説明員派遣、説明会開催
 3月5日〜11日の間、前記普及説明員3名をインドネシアに派遣し、前記5船型の設計資料及び英文貨物船パンフレットを用いて説明会(3月6日、7日、8日)を開催した。
■事業の成果

(1) 輸出船市場調査研究
 今回の調査対象国アジア及び北アフリカの9か国は3つのグループに大別できる。
 まず、第1のグループはビルマ、スリランカ、パキスタン、フィリピンの4か国である。主要産業は農業であり、これら1次産品価格の低迷と機械等の工業製品の輸入価格の上昇などにより貿易収支は常に赤字を計上しており、フィリピンを除き赤字は拡大傾向にある。従って、これら赤字を解消するために、海外からの援助や借款に依存せざるを得ないが、これにより新たに累積債務問題が発生し財政を圧迫するという状況にある。加えて特にビルマ、スリランカにおいては、反政府運動や民族抗争などにより政情不安に陥っており、経済発展を妨げる要因となっている。船舶については老朽船の代替等潜在需要はあるものの、財政難から船舶拡充計画はほとんど進展していない模様である。
 第2のグループはインド、トルコ、マレーシアの3か国である。これらの国々は海外からの投資や借款をてこに工業化を推進しており、造船業に関しても先進造船諸国からの技術協力等によりその能力を高めている。最大建造能力はインド86,000DWT、トルコ75,000DWT、マレーシア16,000DWTとなっており、特殊船を除き一般貨物船等については自国建造が可能となっている。
 第3のグループはチュニジア、モロッコの2か国である。両国とも国際収支の恒常的な赤字や対外累積債務などの発展途上国に共通の問題を抱えているが、政局は比較的安定しており、また、非同盟、現実穏健路線を堅持し、海外からの援助も積極的に受け入れるなど経済発展に努めている。船舶保有量はチュニジア約29万G/T、モロッコ約42万G/Tと小規模ながら、年々着実に増強されており、また、両国とも漁業振興を重要課題とし、遠洋漁船の増強につとめている。しかし、両国は経済的にも地理的にも旧宗主国のフランスをはじめとする欧州諸国との関係が深く、従って船舶の発注先もフランス、スペイン、西独等の欧州造船諸国が大半を占めている模様である。
 これらの調査結果から考えた場合、第1グループに対しては経済協力船案件の発掘及び供与促進に努めることが先決であり、これにより将来の商業ベースの船舶輸出の足掛かりとすべきである。第2のグループに対しては高度な建造技術を要する特殊船あるいは専用船に的をしぼった輸出対策の樹立が不可欠といえる。最後に第3のグループに対しては欧州造船諸国に対抗すべく従来以上の調査研究及び広報宣伝活動が重要となって来よう。
 以上のように今回の調査研究により対象国に関する基礎資料を整備し、今後の輸出対策樹立の指針とすることができた。
(2) 海外市場調査
 フィジー及び西サモアにおける現地調査の結果次のことが判明した。
 まず、フィジーの現地適存船としては同国の地理的条件、大宗貨物及び修繕能力などから1,000G/T以下のフェリー及び貨客船をあげることができる。フィジーは海上輸送の面では南太平洋の要衝となっており、多くの外国船が定期、不定期に就航しているが、域内船社は比較的規模が小さく、フェリーや貨客船等若干の代替需要はあるものの、必要とする船舶の調達は中古船の輸入によって行われるのが一般的であるため、商船ベースでの新造船需要は当面期待できない。一方、経済協力船案件としてはフィジー国立海事学校における訓練船調達計画がある。同案件は目下同国政府において検討中の模様であるが、フィジーにおける海運の重要性に鑑み、近い将来我が国をはじめとする先進諸国に協力要請がなされるものと予想される。今回の調査では同校関係者より同校の概要及び必要とする訓練船について直接話を聴くことができたので、我が国に要請がなされるならば、斯業としてもこれに積極的に協力し、供与促進を図ることができよう。
 次に、西サモアにおける現地適存船としては同国の主要な島々を連絡する700〜1,000G/T程度のフェリーボート及びコンテナや石油製品等が積載可能な中型クラスの多目的貨物船をあげることができるが、同国内には鋼船を建造する設備がなく、また、同国の経済事情も芳しくないため、船舶の調達も海外からの援助に頼らざるを得ない状況にある。同国運輸省関係者によると現在経済協力船の案件としては、タグボート及びフェリーボートの建造を計画しているとのことであるが、先般我が国の経済協力により無償供与されたフェリーボート(当会会員造船所建造)に対する現地の評価が高いことから、同関係者は今後とも日本の造船所での建造を強く希望している。従って斯業としてはこの実績を生かし、第2、第3の経済協力船の供与を促進することにより、同国海運の発展に貢献することができよう。
 以上のようにフィジー及び西サモアにおける経済協力船案件が明らかとなったので、本調査結果を基に供与実現を促進することにより、経済協力による船舶の輸出促進が図られる。
(3) 海外普及説明会
 インドネシアには古くは大量の賠償船の引渡しに始まり多くの船舶を輸出してきた。それらの船舶の多くは経済協力船(無償、有償)であって、比較的付加価値率の高い船舶が多かった。たとえばブイテンダーフェリーボート、ドレッジャー、漁業調査船等、当会会員造船所が建造するに相応しい船舶が多かった。
 一方、同国はアジア最大の石油産出国として、また、森林保有国として戦後オランダより独立してから急速に産業の興隆に努め、そのための協力を日本に全面的に依存してきた。特に海運造船産業の増強については強く協力を求めてきた。我が国もそれに答えて多数の海運造船関係留学生を受け入れ、また、海運造船専門家を国家ベースでインドネシアに常駐させる等、更には大量の船舶を供与する等、そのつながりを年々強めてきた。そのため同国も保有船舶の質、量が向上または増大してきた。当会ではかねがね同国の中型造船の市場性について調査研究してきたが、今回同国に普及説明員(3名)を派遣して船舶関係者を一堂に招いて斯業の優位性を充分説明したので、後日必ずその成果が上がるものと確信する。





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