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■事業の内容

(1) 海洋開発関連の国際会議・展示会への出席
[1] OTC'88調査について
a. 派遣した職員の氏名
企画室企画課  係長  山西 恒義
b. OTC'88の概要
(a) 期間     1988年5月2日(月)〜5月5日(木)
(b) 場所     ヒューストン(アストロホール)
(c) 論文発表会  46のセッション、約259件の論文が発表された。
そのうち日本からの論文発表は2論文あった。
(d) 展示     約1,300社
c. 海洋開発関連機関の調査内容
(a) 米国地質調査所、太平洋海洋地質調査所
 米国を代表する地質調査機関である。今回の訪問ではコバルト・リッチ・クラスト探査、開発有望海域、開発に必要な条件等について調査した。
(b) 内務省鉱物管理局国際戦略鉱物室
 主に石油・天然ガス開発を対象とした陸上・海洋の鉱区リース及び生産のための政策・法律等の立案に関する全権限を有するとともに、海洋及び陸上の鉱物・鉱区リース料の管理を行っており、また一貫した外縁大陸棚における資源開発の管理を行っている。
 今回の訪問では、最近の法制の整備作業状況、特に、コバルト・リッチ・クラストの開発に関する環境影響評価の作成状況について調査した。
(c) International Maritime Inc.及びPort of Los Angeles
 大規模な埋め立て式の人工島の造成を含む紀元2020年までの長期計画に基づき、ウォターフロントの再開発を行おうとしている。
 ここでは、この計画の概要を調査した。
(d) スクリップス海洋科学技術センター研究所
 カリフォルニア大学の海洋学部門として、海洋科学の調査研究を実施している。
 今回の訪問では、Deep Tow System及びSea Beam Systemの概要及びこれらのシステムによる調査結果、さらにRum<3>について調査した。
(e) ハワイ州立自然エネルギー研究所
 将来の食料生産、エネルギー生産等に対する長期的政策の一環として海洋深層水の富栄養・低水温特性を海洋生物資源生産、海洋温度差発電等に有効利用する技術の研究開発を実施している。
 今回の訪問では、深層水を利用したOTECシステムの概要及び実際のシステムを調査した。
(f) ハワイ海底研究所
 本研究所はNOAA(商務省海洋大気局)のNational Undersea Research Programに従って設立され、主に漁業資源調査、海洋汚染調査、海洋底の地質、海洋開発の技術開発等を実施している。営利を目的としない研究所として設立された。
 また、潜水艇PICES V(2,000m級)、Makali'i(366m級)及び潜水支援艇LRTを所有し、潜水活動を中心に活動している。
 今回の訪問では、Makali'i(366m級)及び潜水支援艇LRTを調査した。
(g) ハワイ州事業・経済開発局
 ハワイ州政府内の海洋資源開発の担当部局であり、ハワイ・ジョンストン海域におけるコバルト・リッチ・クラストの鉱区リースのための環境評価の作成を行っている。
 今回の訪問では、環境影響評価の作成作業状況及びコバルト・リッチクラストの開発に対するハワイ州の取り組み方針、開発の見通し等について調査した。
(h) 太平洋国際ハイテクノロジー研究センター
 本センターは、アジア及び環太平洋の人々の生活向上に役立つハイテクノロジーの研究、利用、教育及び国際交流を目的として設立された。
 主な研究内容としては、エネルギー資源工学(海洋温度差発電)、情報工学(ロボット・コンピュータ映像・人工知能)、バイオテクノロジー(バクテリア・遺伝制御)などがあげられる。
 今回の訪問では、施設の概要について調査した。
[2] ROV'88調査について
a. 派遣した職員の氏名
 深海開発技術部  研究副主幹 土屋 利雄
b. ROV'88の概要
(a) 期間     1988年4月18日〜4月28日
(b) 場所     ノルウェー、ベルゲン(グリーグホール)
(c) 共催     Undersea Vehicles/ROV Comittee of the Marine Technology Society, Underwater Technology Conference Bord
(d) 会議・展示会の参加者数  約3,000名
(e) 論文発表会  11セッション、40論文が発表された。そのうち日本からの発表が2論文あった。
海洋科学技術センター発表論文名
「SEA GOING TEST OF DEEP ROV,DOLPHIN-3K」
c. 海洋開発関連機関の調査内容
(a) Simrad Subsea社
 海洋音響機器の専門メーカーであり、世界的に見て最大手のグループに入る。
 担当者に、音響測位装置、音響測深機、ROV、計測設備(超音波水槽)について説明を受けた。
(b) British Telecom International Marine Service社
 ヨーロッパにおけるかなりの部分の海底ケーブルの敷設・補修等を行っている。
 ここではSubmesible Trenching System, Submesible Plough Systemと呼ばれるケーブル敷設装置及びROVの見学を行った。
(c) Osprey Electonic Ltd.
 主に水中テレビ関連機器のメーカーで、世界の水中テレビの市場占有率の70%以上を占めるにいたっている。
 ここで取り扱っている製品について説明を受けた。
[3] OCEANS'88調査について
a. 派遣した職員の氏名
 深海開発技術部  部長  時武 弘敏
b. OCEANS'88の概要
(a) 期間     1988年10月31日〜11月2日
(b) 場所     米国、ボルチモア(コンベンションセンター)
(c) 共催     Marine Technology Society, IEEE及びOceanic Engineering Society
(d) 会議・展示会の参加者数  約1,000名
(e) 論文発表会  12セッション、400以上論文が発表された。そのうち日本からの発表が5稿あった。
海洋科学技術センター発表論文名
「Wave Forcusing by a Submerged Plate」
「Acoustic Doppler Current Profiling」
 論文発表での特徴的な点は次の様であり、これらを中心に発表論文の検討等の調査を行った。
・ 水中音響技術についての論文は、応用技術を中心に22稿程あり最近の南ア機引き上げ等での応用技術動向が注目されていた。
・ 有人潜水船部門ではソ連がフィンランドで建造した潜水船MIR,<2>についての紹介があり、注目を集めていた。
・ SWATH船(“がいよう”型双胴船)についてのセッションが設けられ7稿余りの論文が発表されており、この種の調査観測船の開発意欲が伺えた。
(f) 展示会  約175社
c. 海洋開発関連機関の調査・視察
(a) Wood Hole Oceanographic Insutituion(ウッズホール海洋研究所)
 Alvinの改造方針及び今後の改造ニーズ、潜水船オペレーション部門の予算運用について、潜水船のメインテナンス検査体制、潜水船の故障等最近の問題点、今後の深海システム開発構想及び深海シミュレータ関連の調査をした。また近く大幅な改造が予定されている観測船KNORRを見学し、岸壁にて開発中の深海用ROV Jasonのプロトタイプ機及び潜水船整備工場を視察調査した。
(b) Scripps Institution of Oceanography, Benthic Laboratory
 (スクリップス海洋研究所、深海微生物研究所)
 ボトムクロウ型の調査観測無人機として運用実績をもつRUM<3>を管理するS・I・O海底微生物研究所を訪問し、有索で海底をベルトで走行し、主に物理・生産関連の調査観測を行うRUM<3>を詳細に見学し、その設計思想、今後の改造・運航計画等を調査した。
(c) Hawaii Underwater Research Laboratory(ハワイ水中調査研究所)
 本研究所は、1980年に米国商務省海洋大気局(NOAA)のプログラムの基にハワイ大学と共同で創設された。
 ハワイ大学内にあるHURLの研究室を訪問し、最近の調査活動状況やビデオを用いての設備運用状況の説明を受け、その後マカプー岬のHURL施設で、有人潜水船PISCES V, IRT発着装置等を視察調査した。翌日、運用に関係する技術及びエンジニアリングの分野で、海洋科学技術センターと共同研究など協力体制を希望するかどうかという検討依頼をうけた。これに対し検討の上後日連絡することとした。
(d) The Natural Energy Laboratory of Hwaii(ハワイ州立自然エネルギー研究所)
 本研究所は1974年に設立され、コナ空港から車で10分たらずの岬部に位置し、328エーカーを保有する。HNELでは海洋温度差発電及びその副産物でのある深層水及び清水利用の説明を受けた後、OTEC設備を中心に現場の見学を行った。
(e) D.G.O'Brien社(6.5K電線貫通コネクターメーカー)
 コネクター製造工場を見学し、コネクター設計思想及び品質管理状況について調査した。
(f) AMETEK STRAZA社(アメリックストラザ社、ROV・音響機器メーカー)
 スコルピオ等微塵潜水機のメーカー、また6.5K水中通話機の音響機器メーカーである。音響機器の開発状況及び無人機の推進システムについて打ち合わせ調査するとともに製造工場等を見学した。
(2) 海外の研究者・技術者の招へい
[1] 海洋観測技術に関する研究者の招へい
a. 招へい研究者氏名
ウッズホール海洋研究所 海洋工学部門 正研究員
Dr. James F. Lynch
b. 招へい中における検討結果
(a) 招へい期間中に、当センター本部において一般講演及び特別講演がそれぞれ1回づつ行われた。
 一般講演では、センター内外の研究者及び技術者等80余名が聴講し、米国を中心とする海洋音響トモグラフィー研究の現状及び将来動向に関する貴重な情報がもたらされた。この講演は我が国におけるトモグラフィー技術の啓蒙に大いに役立った。
 特別講演では、当センターの水中音響関係研究者8名が聴講し、低周波音響技術による海底探査法及び高周波音響技術による堆積物輸送の測定法について貴重な情報がもたらされた。
(b) 海洋科学技術センター・ウッズホール海洋研究所
 昭和63年10月に調印された海洋科学技術センター、ウッズホール海洋研究所間協定覚書に基づく「音響トモグラフィーに関する技術開発と研究における協力」の一環として、西太平洋トモグラフィー共同観測について意見交換を行い、1992年本観測実施を目標に海洋科学技術センター及びウッズホール海洋研究所はお互いに予算要求を行う旨合意した。
 第1回目の検討では、全体計画について意見交換を行い、年次計画の調整を行った。
 第2回目の検討では、観測項目及び観測機材、事前海域調査当について意見交換を行い、整備計画当の調整を行った。
 第3回目の検討では、意見交換内容の確認を行い、お互いの役割分担の調整を行った。
(3) 国際協力の推進
 ウッズホール海洋研究所を訪問し、海洋科学技術センターとウッズホール海洋研究所との協力協定の締結及び各協力課題の実施方法等の打ち合わせを行った。
 また、米国商務省海洋大気圏局を訪問し、UJNR(天然資源の開発に関する日米会議)/MRECC(海洋資源・工学調整委員会)/DP(潜水技術専門部会)の米国側議長であるBUSCH氏と日本側議長である間山理事との間で、潜水技術部会の憲章(チャーター)に調印を行った。
 さらに、関係諸機関を訪問し、技術動向・協力可能性の調査を行った。
a. 派遣した役員・職員の氏名
理事        間山   隆
企画室企画課課長  久保田  勉
b. 派遣期間  昭和63年10月18日〜昭和63年10月28日
c. 派遣先   米国ボストン(ウッズホール海洋研究所)
■事業の成果

[1]OTC'88会議・展示会及び米国の海洋開発関連機関、[2]ROV'88会議・展示会及び欧州の海洋開発関連機関、[3]OCEANS'88会議・展示会、米国の海洋開発関連機関の調査等を実施し、最新の技術動向を調査した。
 その結果、当初予期した以上の技術情報、資料の収集を行うことができ、特に、現在当センターが進めている、6,500m潜水調査船の研究開発等、先端的研究開発事業の推進にとって、極めて重要なデータや情報が得られた。
 また、海外からの研究者・技術者の招へいについては米国から、海洋観測技術部門の研究者を招き、わが国では経験の少ない広域海洋観測技術、音響トモグラフィー技術等の大規模な海洋観測技術を用いて海洋大循環の機構を解明するための評価手法等について、指導、助言を受けた。
 本年度から新たに、米国の主要な海洋研究所の1つであるWHOI(ウッズホール海洋研究所)と当センターの協力関係を確立するため、協力協定締結及び協力課題打ち合わせを行ったことは、我が国の海洋科学技術の進展に寄与するところ大なるものがある。





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