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■事業の内容

(1) 中小型船舶の代表形状に関する調査研究
 前年度の調査研究では、設計思想を異にする中型、小型及び軽量型の3船種に分け、流氷海域の気象、海象調査、港湾条件および運航実態の調査結果を参照して設計仕様を検討した。その成果を踏まえて、本年度は船型、一般配置、機関、諸性能等の検討を行い、代表2船型の形状を決定、線図を作成のうえ模型船(2隻)及び模型プロペラ(2組)を製作、平水中、規則波中及び氷中での試験に供した。
(2) 中小型砕氷船の砕氷性能に関する調査研究
 前項の模型船は木製とし、長さは2船型共、5mとした。また波浪中性能を調べる為脱着式船首楼甲板を設けた。付加物として固定式ビルジキール、ボッシングおよび脱着式のフォアフート、アイスシュー、曳航甲板、スターンスカート等を設け、各々の付加物の性能、効果を確かめられるようにした。
 模型プロペラはアルミ合金製とし、プロペラ単独試験を行って性能を確認した。
 模型船の塗装については、特に氷海用として必要な性能をもつ塗装をした。
 砕氷性能については、船舶技術研究所の氷海水槽において抵抗試験を実施した。試験条件は実船で10cm〜60cm相当厚の平担氷中とし、水中の砕氷抵抗および流れの状況について計測を実施した。(実施場所:船舶技術研究所)
(3) 中小型砕氷船の波浪中等における運動性能に関する調査研究
 平水中の抵抗、自航試験は船舶技術研究所の第2試験水槽において実施した。
 試験状態は満載状態にて平水中および波浪中において推進抵抗および船体運動について計測を実施した。(実施場所:船舶技術研究所)
(4) 中小型砕氷船の総合性能に関する調査研究
 以上実施した試験研究の結果を解析、評価を行い、成果を概念設計に反映し手直しを行った。
 即ち中小型船舶の船型を考える場合、水線下のみならず水線上の船型を考える必要も予想され、船首楼甲板(脱着式)を設け、水線下にもスケッグ等付加物の影響を注目した。又スターンノッチ等救難曳船の機構を設ける場合には、飛沫着水、海水打込等対策を考え、有効乾舷を慎重に設定する必要があることが認められた。スケッグに関する研究も今後の展開が望まれる。
 波浪中の推進性能、運動性能については特に問題とすることはなかったが、通常船型と異なるのは波浪中のスラスト増加が認められること、大量の海水打込みの危険は少ないが風の作用で着水の危険性があり、船首部フレア、ナックルライン等の設計はその点充分留意を要し、本格的なAbovc-Watex船型学の研究が期待される。
 氷中試験についてはフォアフートの効果が検討され、フォアフートなしでは氷丘脈突入時復原性の許容範囲を超えて乗りあげの懸念があり、フォアフートが船首で砕氷された氷片の円滑な運動を阻害する場合がある反面、大きなフォアフートは砕氷片の船底周り込みを軽減する効果のあることが認められた。
 氷中の試験資料については(歴史的にも日が浅いので)まだ資料不足であるが、従来資料を勘案して本船型で平担氷中航行に必要な最小出力を推定し、要求仕様を満足する設計が可能となった。
 最適設計にはなお研究の余地があるが、氷海域、荒天海域、平穏海域の混在する氷縁海域を航行する中小型砕氷船について、設計、建造に関する指針を得ることができた。
(5) 報告書の作成
[1] 作成部数  A4判 オフセット印刷 200部
[2] 配布先   会員・関係官庁他
■事業の成果

中小型砕氷船にあっては大型砕氷船とは本質的に異なる設計思想のうえに船型の検討、設計が行われなければならないが、この様な観点から中小型砕氷船の設計、建造技術を検討した事例は殆ど聞かない。
 このような中小型砕氷船の設計、建造技術を確立することを目的とし、前年度は予想される就役海域の気象、海象、氷況、港湾状況および運航状態の調査、対象船舶の仕様条件の検討等を行い、各種の基礎資料を得た。これらの成果を踏まえ、本年度は、対象船舶の船型の決定、機関、一般配置等の検討、プロペラ設計並びに模型船及び模型プロペラの製作、平水中の抵抗、自航試験、規則波中の自航試験、平担氷中の抵抗試験、流氷中の抵抗試験、平担氷及び流氷中の自航試験、中小型砕氷船の概念設計、を実施した。
 通常型船舶については、わが国でも多年の研究資料の蓄積があり、これらの情報が十分に活用可能であるが、中小型砕氷船あるいは砕氷型船舶についてはわが国には研究資料の蓄積が殆どなく、いづれの研究課題にしても系統的な模型試験等様々な観点からの広範囲な試験、研究が必要で、その為には長い期間と膨大な経費が必要である。
 そのため本研究計画では、外的条件として使用海域を極海とせず、わが国北辺の氷縁海域を主対象海域とし、比較的緩やかな氷況条件を設定した。又対象船舶を中小および軽量型(1,000、500、130総トン)と区分して概念設計を行い、問題点の検討を行った。
 本調査研究の成果は、わが国の乏しい氷海船舶の資料への貴重な蓄積であり、中小型砕氷船の設計、建造技術の発展に寄与するところ大なるものがある。





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