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■事業の内容

(1) 集積効果による危険性評価システムの国際機関への提案
 IMO第29回コンテナ貨物小委員会は、ロンドン本部において34カ国の参加の下、昭和63年5月9日から13日の5日間開催され、下記提案内容が審議された。
提案内容:イ 発熱の危険性を予測するための計算機シミュレーション
ロ ばら積み貨物(石炭)の自然発熱の危険性評価の方法
上記については、コンテナ貨物小委員会の「固体ばら積み貨物に関する安全実施基準」に関する討議の中で、“化学的危険性を有する物質、隔離及び分類”の検討課題として北海道大学資源開発工学科、樋口教授から提案趣旨等の説明が行われた。各国代表団のメンバーが主管庁/運送専門家から構成されているところから、十分な検討ができないとして、それぞれ持ち帰って検討の上、我が国提案を基に、当該安全実施基準の最新化のための資料作りを図ることとなった。
(2) 危険物の安全運送に関する講習会
 現行の危険物船舶運送及び貯蔵規則等の概要を紹介したテキストと危険物運送の実態に関するパンフレットを改訂・増刷し、これらを基に海上運送に携わる関係者を対象とした講習会を北海道・近畿・関東・中国各運輸局の海技試験場等で下記のとおり開催した。特に中国運輸局においては、危険物の取扱量が少ないにもかかわらず、活発な質疑応答があった。
[1] 講習会の開催
a. 講習内容
(a) 講師:
◇ 運輸省・危険物担当官
昭和63年に改正された危険物船舶運送及び貯蔵規則で関係者の順守すべき事項と未知物質の判定基準について
◇ 日本化学工業協会・内野 篤氏
危険物の船舶運送に関し、荷送人となる製造事業者等の順守すべき規定と果たすべき役割並びにタンカーなどへのばら積みについて
◇ 日本船主協会・古城 達也氏
危険物の船舶運送に関し、運送人の果たすべき役割と主だった外国規則の概要について
◇ 日本海事検定協会・八十川 欣勇氏
国連勧告、IMDG CODE(IMO)等の国際基準並びに主要国規則と日本規則との関係について
(b) 開催場所:
北海道(小樽)講習会
日時  :昭和63年10月7日(金)
場所  :小樽港湾合同庁舎六階会議室
受講者数:51名(申込者数51名)
大阪講習会
日時  :昭和63年11月18日(金)
場所  :大阪港湾合同庁舎七階海技試験室
受講者数:165名(申込者数219名)
東京講習会
日時  :平成元年1月30日(月)
場所  :大手町合同庁舎三号館第一講堂
受講者数:202名(申込者数257名)
広島講習会
日時  :平成元年2月17日(金)
場所  :広島合同庁舎四号館二階第11共用会議室
受講者数:71名(申込者数86名)
[2] パンフレットの改訂・増刷
a. 規格  A4版
b. 部数  1,500部
c. 内容
 危険物船舶運送及び貯蔵規則と国際基準等との関係をフロー図で示すと共に、危険物の製造から船舶への積載まで順を追って紹介し、危険物を収納する容器の要件、船舶による運送の実態と義務付けられた検査及び未知物質の判定基準策定経緯とその内容などについて理解し易いように写真主体のパンフレットを作成した。
d. 配布先  関係官庁、関係団体等
[3] テキストの改訂・増刷
各講師の修正原稿を基に旧テキストの改訂・増刷を行った。
a. 規格  B5版
b. 部数  1,500部
c. 内容
第1章 危険物船舶運送及び貯蔵規則について
規則の概要と改正規定の要約(容器検査等)
第2章 危険物の船舶運送に関し、荷送人の果たすべき役割について
規則に品名の明示の無い物質を運送しようとする際に採るべき手順等、ポータブルタンクとタンカーの構造要件
第3章 危険物の船舶運送に関し、運送人の果たすべき役割について
船舶への積付方法と注意義務、考慮すべき諸外国の規制等
第4章 IMDGコード等危険物運送に関する国際規則について
危険物の要件を規定した国連勧告、英国規則の運用規定に取り入れられているIMDG Code、米国規則(CFR)等、運送関係者が知っておくべき各々の概要
d. 配布先  受講者等
■事業の成果

IMOへの提案及び学識経験者の派遣によって、我が国における石炭のばら積運送に関する研究が国際的に認識され、今後の同貨物に関する各国レベルでの調査研究及びIMOでの審議に役立てられることとなった。
 一方、昭和62年に引き続いて、危険物に関する基礎的・体系的な講習会を開催し、昭和63年9月の規則改正に伴う周知を図る必要性と関係者からの講習会開催要請を受けて、運輸省の指導の下に海運会社、化学品製造業者、商社、港湾荷役業者、倉庫業者、海貨業者等の関係者を集め、現行規則及び国際基準について当局、荷送人、運送人友び専門家の立場から具体的解説を行った。二年度にわたる講習会開催の結果、危険物運送関係者が安全規制等の概要を理解し、危険物の安全な海上運送が図られるようになった。





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